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 放心状態の父は放って、母の方へ体を向ける。


 母は紅茶の入ったカップを手にしながら、父の方を見てニコニコしていた。


  その笑顔はとても5人もの子供を産んだ人には見えないほどに可愛らしいものだった・・・もう40近いのに。


  そんなふうに母の事を考えていたら、すごい目つきで母に睨まれた。母は年齢のことを言われるのがひどく嫌いなのだ・・・って別に私、口に出して言ってなかったよね、エスパーなのか!?


  母の態度に少しビクビクしながらも、姉たちについて言わないといけないことがあったため口を開いた。


 「お母様、どうかお姉様たちのドレスのことお願いいたしますね。多分、お父様は役に立たないでしょうから」


  さっき軽く(?)脅しといてけれど、父はきっと姉たちに折れる。父は子供にはすごく甘いから、上目づかいで“お父様、買って?”と言われたらきっと買ってしまう。それどこらか他の物も買ってしまうだろう。

 

  でも姉たちは母には勝てない。だから母にたのむのだ。


『わかりました。確かにあの子たちは無駄にお金を使いすぎていますしね。今朝もレイスティアの第一王女様が夜会で美しい紅玉の首飾りを身につけていたから対抗して、あの人に強請っていましたし』


  なに!?ドレスだけでなく宝石まで!?もう十分な数の宝石類を持っているというのに。レイスティアの王女もまったく余計なことを増やして・・・そんなにほしいんなら自分で鉱山にでも行って掘り当ててこいよ!!


『まあ、それは止めさせましたけれど』


よかった。宝石を買わせるくらいならドレスのほうがまだましだ。


「それよりも、お母様。お姉様たちの教育係はどのような事を教えているのですか?お姉さまたちは私たちが使うお金がどのように賄われているのかも知らなかったのですよ?もういい年だというのに・・・」


  王族にも関わらず、あそこまで無知とは思わなかった。いくら小さい時からちやほや甘やかされていたといっても限度があるだろう。私は彼女たちとはだいぶ違う幼少期を過ごしたのでよく知らないが・・・。


『普通に王族にふさわしい教育係を付けたつもりよ。でもね・・あの子たちは自分のことにしか興味がないから。でも私はあのままでもいいと思うわ。それに今更変えようもないでしょう』


 あくまで表情を崩さずに母は言った。


「しかし、あのまま嫁ぐのでは国の恥となるのではないでしょうか・・?」


『あの子たちは自分の贅沢が保証されるのなら、きっと妃になるための勉強だけはするわ。それにあの子たちは無知のままのほうがいいと思うの』


いまいち、母の言うことが理解できなかった。無知のままでいいなんて。


『だってそうでしょう。もし、あの子たちのように無駄に自尊心が高くてその上、知恵もあったらきっとこの国の玉座をも望むでしょうね。あなたと違って・・・。大国の妃の座だけでなくね。だからあのままこの国の玉座など全く眼中にない方がいいのよ。それにあの子たちは愚かだからこそかわいいのよ』


  なんかひどい事をいっているような。自分の娘にむかって愚かって・・しかも笑顔で。

でも、あの頭でこの国の玉座を望んだらこの国は滅ぶだろうな。それにもう王太子のアレックスもいるし。それに頭がよくてその上、ヒステリックなんて最悪だ。まぁ、今のままでいいのかな?

母はそんなことまで考えていたのか・・・さすがこの国の外交を任されているだけあるな。母はこの国の外交を任されている。父や姉は役に立たないし、私が出て行ってなめられるより遥かに効果的だからだ。


  しかし、この頭も容姿も最高に良い母がよく頼りないさえない父に嫁いだものだ。政略か・・・?でも夫婦仲はすごく良いのだ・・・。このことは王国七不思議のひとつに数えられている。


  若干引っかかる感じむしないでもないが、姉たちの話はとりあえずここまでにしよう。そろそろお腹も減ってきたし。


「わかりました・・。では私もそろそろ昼食を取りたいので失礼させていただきます。くれぐれもお父様には注意してくださいね」


『わかったわ。まだあの人は放心中だけれど何とかしておくわね。任せなさい』

 

  すっかり父に興味を失いボーっと指をしゃぶっていたアレックスを母に返し、退場の挨拶をした私は、そのまま中庭をでて自分の部屋に戻っていった。


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