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短いです。また水曜日頃に続きを載せます。
「行かないのですか?」
ずっとくっつかれていると、腕が疲れてくるのだ。なにより邪魔。まだ、食べたい物があるのに。
だから、遠まわしに離れろという意味も込め、リティオラに言う。
しかし、リティオラは行く気はないようで、むしろ余計にくっついてきた。そして、信じられない、といった顔でこちらを見てきた。
『まぁ、わたくしにあの中に行けとおっしゃるの?あんな恐ろしい中に!?』
あんな中・・というのは皇帝たちを囲んでいる、姫たちのことだ。
姫たちは、格好の獲物を手に入れた獣のごとく、目をギラギラさせながら皇太子に群がっている。
まぁ、たしかにあの中に行く勇気はないな。私も嫌だし。
よく皇太子も堪えているな。すこし同情する。本当に少しだけれど。
「そうですね、確かに恐ろしいですね、あれは。でも、そろそろ腕を放していただけませんか?」
正直に離れろと言ったからか、リティオラは放してくれた。すこし名残惜しそうなのが気になるが。
ソフィアは新たな料理を見つけるために、移動する。そのたびにリティオラも付いてくる。
・・・・・・・・・。
いつまで付いて来るのだろうか?どうにかして気を他にそらさせないと・・・。
そんな事を思っていると、ふと、どこからかこちらを見ている視線に気付く。
・・・・・・・。
見つけた。相手は帝国騎士の一人だった。視線の向く先はソフィア・・・ではなくリティオラ。
ふ〜ん。
彼は、リティオラに見とれているようだった。リティオラは可愛いし、群がっている姫たちより、落ち付いているようにみえるのだろう。騎士なら皇帝を見てろよ、と思うが、今は好都合だ。それに皇帝の周りには、何気に薄い結界が張ってある。おそらく姫よけだろう。だから一人くらいいなくても大丈夫だろう。室内にも彼のほかにあと20人ほどの騎士がいるし、料理を運んでいる者たちも、服の下にナイフなどを隠し持っているみたいだから。
そしてなにより、彼はかっこいい。別にソフィアの趣味ではないが。ソフィアの好みは30代後半から50代前半の男性だ。落ち着きがある人の方が好きだから。