25
「なんか変だ」
モグモグと手の中にある皿に盛った料理を咀嚼しながら、ソフィアは言った。
今いるのは、延期されていた姫たちの歓迎会の会場。
立食形式なので、ソフィアは適当に料理を選ぶと、早々に壁の方へ引っ込んだ。
本当は座ってのはずだったが、どこかの姫が座ったと同時に椅子を粉砕したので急遽、立食になったらしい。ソフィアはその現場を見てはいない。始まる時間のギリギリに来たからだ。
――――いったい、どんな姫なのだろう。
普通なら、椅子を粉砕する姫など居ないはずだ。いや、いてほしくない。そんな重量オーバーな姫は。どうやら本当に化け物じみた姫がいるらしい。
魔法で粉砕ならわかるけれどね…
『あら、何が変なんですの?』
ソフィアが考え込んでいると、横から声がした。
そうだ、一番変なのは彼女だ。
横を見る。正確には自分と腕を組んでいる相手―――――リティオラ姫を。
「あなたです」
そうだ、どんな化け物姫よりも、彼女が一番変だ。なぜ彼女は自分と腕を組んでいるのだ!?
『あら?』
「なぜ腕を組んでいるのですか?しかもいつのまに・・・」
言っておくが、ソフィアは今はドレスを着ている。どこからどう見ても?女だ。少々胸が足りないが…
『ふふふ』
リティオラ姫はソフィアの質問には答えず、ますますくっ付いてきた。
「そろそろ、皇太子がきますよ。行かなくてよいのですか?」
もう性格がバレているので、淡々と話す。
ソフィアのいる場所は、皇太子の現れる予定の場所より大分離れている。
『別にいいですわ。もう興味はありませんもの』
リティオラもあっさりとした口調で返事をする。
この前・・というか今朝までは興味があったでしょう!?と思いながらリティシアを見る。
するとリティオラが袖を引っ張った。彼女は正面を向いていた。
『来られたようですわ』
そう言った直後、会場がざわめいた。皇太子が来たのだ。
会場内にいた者たちは、礼儀に習い、頭を下げる。
皇太子は会場の中央を通り、数段高い場所に設置された皇太子用の座席に腰をかけた。
そして、それと同時に黒い幕が皇太子と会場の姫たちの間に掛かった。
皇太子の顔はよく見えない。皇太子側からは見えているのだろうが。
幕が降りた直後、顔を上げるように言われ、みんな顔をあげた。そして皇太子の挨拶した直後、姫が殺到した。
すごい速さで。
日頃はおっとりしているのが嘘のような早さだ。それを見た、会場内の帝国騎士たちも度肝を抜かれている。
ソフィアはもちろん加わらず、なぜかリティオラ姫とともに未だに壁にへばり付くようにしていた。