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「じゃあ、災害のひどかった領地は、税の1/3カットと医療団の派遣でいいね」
この前の議会から約一週間がたった。しかし、なぜか今日も王の代わりに出ている(一応横にチョコンと王が座っている)。まぁ、別に今日は特に予定はなかったからいいけど。
「では、ほかに意見のあ「「「ちょっとっソフィア、顔かしなさいっ!!!」」」
宰相であるワットがその他の意見をきこうとしたところを、バーンとドアを押しあけ入ってきた三つの声が遮った。
名指しで呼ばれソフィアはうっとうしそうにそちらを向いた。
「お久しぶりです。姉上さま方。どうしたのでしょうか?」
「「「あんたっ、お父様に頼んでわたくしたちのドレスの注文を取り下げたでしょう???」」」
キンキンと三人の声がそろって頭に響く。うっとうしい。
とりあえず王になんとかしてもらおう横を向いた・・・王がいたはずの椅子にはチョコンとクマの人形がのっているだけだった。
・・・・あの野郎、逃げやがったな。
おそらく、姉たちを相手にするのが怖かったのだろう。美人がおこるととてつもなく迫力があるから。まぁ、美人が三人すごい形相でおこっていると、なんか珍獣をみているようで自分的には笑いを堪えるのが大変なのだが。
「ええ、確かにお父様に議会に出るのと交換条件で頼みました。お父様も快く承諾してくださいましたよ」
実際は脅したのだが。でも、姉たちを抑えられなかったから、後でお菓子を全部目の前で食べてやろう。
「「「お父様を脅したのねっ???どうするのよ!着る物が無くなってしまったじゃない???」」」
無くなるって、今まで何十着も買ってきたじゃないか。しかも一人ずつ。というかどうして三人とも息がぴったりなのだろう??
「ですが、姉上様。ドレス一着作るのにも手間やお金がかかるのですよ?それに今までに着たのをまた着ればいいではないですか?」
本当にお金がかかるのだ。下手すると一着で城下の人が二月ほど食べられるほどだ。そんなのをホイホイとしかも三人分なんてやってられるか。
姉たちの顔を見ながら言うと、彼女たちはさっと扇で顔を隠し、世にも恐ろしいものを見たと言わんばかりの顔で、こちらを見てくる。
「なんですって・・・恐ろしい。わたくしたちに同じ物をまた着ろですって・・・?」
「この美しいわたくしたちに・・・?」
「まさか、わたくしたちの美貌に嫉妬してドレスを着させないんじゃ・・・?」
一、二、三の順に、よろよろとしながら口々に言ってくる。
・・・自分で美しいとか言ってるよ。あと嫉妬なんてしていない。
たしかに、姉たちは自分と違い母である王妃に似ている。
銀色の髪に、白磁のようなすべらかな肌。顔は小顔で鼻筋が通り、薄紫色の目はぱっちりとし、口がキュッとしまっていて大変美しい。まとっているドレスもとても丁寧に仕上げられたものだ。ちゃんとくびれも有り、色気が出ている。
一方自分はというと、海のような青い瞳に、少し瞳の色を薄めたような髪。その髪は無造作に頭の上で一つに結わえられている。顔立ちはまあ鼻は低くもなく、高くもない。目も少しつり気味で小顔ではあるが、姉たちと比べると劣る。着ているものは、ドレスでなく、良家の子息が着るような少し地味で、でも動きやすい物だ。一見すると男のように見えるだろう、残念ながら、胸がないから。
私が黙っているからか、姉たちはまだブツブツとしゃべっている。邪魔ったらありゃしない。
「姉上たちのドレスは、非常にお金がかかるのです。そのお金はどこから出ているかおわかりでしょう?」
そう尋ねてみた。もちろん解るだろう。民から集めた税金だ。無駄に使うなんて言語道断だ。
しかし、姉たちは沈黙した。なんかゴモゴモと小さな声で「ポケットマネー」やら「お金がわいた」やら「私たちの信者」などと言っている。
・・・・・どうやら、姉たちは思っていたよりもはるかに馬鹿だったようだ。