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 部屋に着いた私たちを出迎えたのは、可愛らしい侍女だった。


私より少し高い身長に真っ白な肌。大きく緑色の瞳に、うっすらと染まる頬。鼻筋もちゃんと通っていて、唇は艶やかな赤い色をしている。蜂蜜色の髪は頭の上で複雑(ソフィアが単にそう思っているだけ)に結われているが、とても綺麗だ。侍女ようの黒と白のお仕着せに包まれた身体は、出るところはしっかりと出ていて、引込むべきところはちゃんと引込んでいる。すべてが引込んでいる?私とは大違い。互いにドレスを着てどちらが姫だ?と聞いたら万人が自分でなく彼女の方を姫だと思うだろう。


なんだ、この侍女は。完璧でないか。もしかして帝国はとっとと弱小国の姫の戦意?をなくさせたいのか!?私は別に皇太子など興味はないけれど、この攻撃はさすがに辛い。女としての尊厳を粉々に打ち砕かられたような気がする。


―――ソフィアは体型には若干のコンプレックスを持っている。顔はもう諦めたが。ソフィアは身長があまり高くない・・というか152cmくらいしかない。いつもは特製のシークレットシューズを履いているのだが、ドレスには似合わないので履けないのだ。しかも、同じような食べ物を食べ共に育ってきたレティとクレアはしっかりと成長しているのにソフィアは未だに、どこもかしこもツルペタだ。この体型は父方の祖母より来ている。ソフィアにとっては全く嬉しくない遺伝だった―――


少し侍女を恨めしげに見ながら、案内してくれたイザークを見るソフィア。


「もしかして帝国は精神攻撃でもしているのですか?これぐらいで負ける姫は去れ!!みたいに」


『は?』


イザークは何を言われたのか理解できないようだった―――そもそもソフィアの勝手な思い込みなのだから当たり前だが。


『あのっ?私に何か問題でもあるのでしょうかっ?』


ジトっとソフィアに恨めしそうに見られていた侍女は少し泣きそうな顔で言ってきた。その姿もやはり可憐だとソフィアは思ったがすぐに見るのをやめた。


やばい、見過ぎた。別に彼女が悪いわけじゃないんだし、気にしないでおこう。泣かれると罪悪感が出てくるし。でもすぐに泣くのは嫌いだな。


「あ・・ごめんなさいね。はじめまして、私はソフィアよ。これから一月よろしくね」


本来なら彼女から名のらないといけないんだけれど、仕方がないよね。悪いのは私の方だし。


ソフィアの自己紹介を聞いた侍女はハッとしてすぐに腰を折った。


『た・大変申し訳ありませんっ。はじめまして、ソフィア王女。私はミリティアーナと申します。これより一月の間、ソフィア様の侍女を務めさせて頂きます。何かありましたら何なりとお申し付けくださいませ』


うっ!声まで奇麗。本当に完璧。それより、私のしゃべり方変じゃないかな。こんなに長く話すのは嫌いだ。


「わかりました。あと私の横にいるのがレティシアとクレアモンド。私の侍女よ」


そう言うと、レティとクレアが挨拶をした。


私達の自己紹介を終わったのを確認したからか、これからの事はミリティアーナに聞くようイザークは言い、部屋を出て言った。



それを見届けてから、元の話し方に戻した。


「あー、疲れた、疲れた。尻が痛いよ。しかも、もう姫同士の争いが開始しているみたいじゃん」


『本当。しかも隣の姫たちって、ソフィアの姉姫のライバルじゃん』


『余計なことにならないといいわね』


行儀が悪いとは知っているが、余りに疲れたので寝台に倒れこんだ。そもそも、ひと月の間あんな話し方で過ごすつもりなど毛頭ない。


三人のやり取りを見ていたミリティアーナは目を見開いている。


『あ、あの・・ソフィア王女?』


「ごめんね。こっちが本来の私なんだ。普段はこんなドレスも着ないしね。ミリティアーナも気軽にしていいよ。一月も一緒なんだしね。私はソフィアって呼んでくれていいから。ああ、ちゃんとシェルフィーダの四の姫だからね」


 誤解しないように言っておく。ちゃんとした姫だが、窮屈なのは苦手なのだ。


『そ、そんなふうには呼べませんよ』


とまどっているミリティアーナ。そんな彼女を見てニヤニヤするレティ。


『ソフィア。ミリティアーナちゃん困ってるよ。・・・ミリティアーナちゃんも固くならないでよ。私の事はレティって呼んでね、ミリティアーナのことはアーナって呼ぶから』


『私のことはクレアと呼んでね、ミリティアーナちゃん。あとソフィアが無理ならソフィアちゃんとかでいいのではないかしら』


2人に言われたからか、ミリティアーナは緊張をといた。


『わかりました・・。でもソフィアちゃんなどは無理なので、ソフィア様とさせていただきます』


そういい、ふんわりと笑った彼女は本当に可愛かった。


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