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港の町で二日過ごし、ソフィアたちはゆっくりと帝国へ向かい、二日後の昼過ぎにソフィアたちは帝国の皇族たちが住む宮殿についた。
しかし、ソフィアの顔はすぐれなかった。
・・尻が痛いし疲れた。ここに来るまで、馬車に乗ってきた。馬車にはレティとクレアと共に乗った。馬車の中はクッションなどが置いてあり、座席はフカフカだった――――しかし、生憎馬車よりも直接馬に乗るほうが慣れているのだ。馬車に乗ったことなど数えるほどしかなかったので、かえって疲れてしまった。しかも中でレティ達に無理矢理ドレスへと着替えさせられてしまい、さらに疲労がたまった。
もう二度と馬車になんか乗るものか!!と1人心の中で宣言した。
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ソフィアたちシェルフィーダ王国一行を出迎えたのは、王宮の近衛騎士だった。
騎士はソフィアたちを認めると、すぐに召使いたちに指示を出し、ソフィアたちの荷物を持っていかせた。
『よく遠路はるばるお越しくださいました、ソフィア姫、そして御供の方々。しかし大変申し訳ありません。本来ならば宰相が迎えに来られる筈だったのですが、他国の姫様たちが問題を起こしてそちらのほうに行かなくてはならなくなってしまったのです』
困ったように頭を下げる騎士。服に色々な紋章が付いていることから、だいぶ上の階級のようだ・・・たぶん。
供の者たちは、自国の姫がないがしろにされたと思ったのか、少し険しい顔をしている。ソフィアが何も言わないので黙っているが。
・・もう姫同士が争っているのか。なんか面倒くさいな。よし私は目立たないように過ごそう。
この宮殿は広いし、大陸一の国だ。きっと興味深い書物がたくさんあるに違いない。巻き込まれる前にとっとと書庫に避難しよう。
―――――ソフィアは着いた早々に妃選びを放棄した。
「お気になさらないでください。姫同士の争いは後々問題になるかもしれませんから仕方がありません。どうか頭をあげてください」
ソフィアがそう言うと、安心したように頭を上げる。
『あ、申し遅れました。私は近衛騎士隊二番隊隊長のイザークと申します。それではさっそくですがソフィア姫、まずは滞在していただくお部屋にご案内させて頂きます』
・・・本当にいきなりだな。まあいいか、早く休みたいし。できれば一階とかで厄介な姫のいない部屋がいいな。
『ソフィア姫のお部屋は姫君達の滞在されている、西の宮の二階になります。隣りのお部屋にはトリアラーナ公国のリアリーナ様と西ラインダール王国のイザベラ様が滞在なされています』
最悪だ!!ふざけるなよ!!わざと!?トリアラーナのリアリーナ姫とラインダールのイザベラ姫。両方ともソフィアの姉姫たちとすごく仲が悪い。まぁ彼女たちと仲の良い姫なんて存在しないが。ともかく、姉姫たちの不満をぶつけられたらたまったもんじゃない。やはり早々にどこかに隠れ場所を発見しなくては。
『各部屋にはこちらの用意した侍女が一人ずつ必ず付きます。ですからなにかしら用がおありなら、彼女たちを通してなんなりとお申し付けください。でも皇太子の部屋などは絶対にお教えできませんので』
イザークはにこやかに言った。皇太子のことも含めて。別に興味なんて微塵もないから意味ないが、ソフィアはとりあえず彼の言葉にうなずいた・・・本当は部屋を変えてもらいたいが、さすがにそれは無理だろう。
『では参りましょう。侍女の方以外の方は東の宮にご案内させて頂きます。お合いになるのは自由ですので。一応警備の者はいますが。ソフィア姫には先ほども申しましたが西の宮殿に滞在していただきます。こちらは基本的に男子禁制ですので』
そいい終わるとイザークは歩きだした。いまいち、姫の扱いがなっていないようだが、ソフィアはたいして頓着しないので素直にレティたちと共に後ろをついていった。
向かうは魑魅魍魎―――もとい各国の姫君たちの住まう西の宮へ。