18
出発してから十日がたった。そして船に乗って約一週間がたった・・・しかし、いまだにソフィアの船酔いは快方に向かわなかった。
「もう・・・ムリ・・じぬ・・・」
『船酔いくらいで死なないよ』
ソフィアははじめの頃より少しやつれていた。ソフィアの密かに自慢だった髪もすっかり艶を無くしてしまった。
『もうすぐミーグの港に着くわ。そこから馬車でゆっくり行っても二日よ。だから港で少し休めるわ。そこまでは頑張って』
「あ゛・・・い゛・・・」
いつもは滅多に負けた姿を見せないソフィアも、船にだけは敵わなかった。
-----------------------------------------------------------------
「ついたーーー!!」
船を下り、はしゃぐソフィア。先ほどまでの船酔いを感じさせぬほど元気だ。
レティやクレア、そしてその他の日頃のソフィアの姿を知っている者は、思わず顔をほころばせた。
彼女はまだ本当は15歳。もしかしたら今の姿の彼女が、本来の彼女なのかもしれない・・・姿はまるでどこかの貴族の子息といった感じだが。
相変わらず、ソフィアは男の恰好をしている。しかも今回は目立つ髪の色を隠すため、金色の鬘を被っている。しかも短い毛の奴を。
凹凸の乏しい体に、短い毛。そしてソフィアの中性的な容姿も相まって、本当に品の良い少年に見える。
「ねぇ、まだ時間もあるし、二日ほどここに泊まろう!?」
ソフィアはウキウキしたようにみんなを振り返った。
振り返った先には、ニコニコと笑っている皆がいたからだ。
「っ――――――!!」
ソフィアは恥ずかしくなり、顔を赤く染めた。
『それはいい案ですな。この港には各国から様々な物が集まります。きっと姫の好きな甘味もあるでしょう』
共にきた、少し年配の男性ワークがいった。
ソフィアは甘味と聞いたところでピクッと肩を揺らした。
ソフィアは甘い物が実は大好きだった。
・・・・・・甘いものは食べたい。でも、みんなのニコニコ顔をどうにかしなきゃ。
ゴホンと取り付くろうように咳をする。
「じゃぁ、余裕があるからここに滞在する。宿は適当に取っておいてくれ。あまり高くし過ぎるな」
そう言いきるや否や、ソフィアは脱兎の如く駈け出した。恐ろしく早い速度で。
『あぁ・・照れてるね。あれは』
『本当ね…フフフ。では、皆さん宿の方はよろしくお願いいたします。私たちはソフィア姫を探しますので。今からやく4時間後再びここで落ちあいましょう』
そういうとレティとクレアも走り出した。
残された者たちは未だ笑顔で、彼女たちを見送っていた。