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17

 半分にかけた月が浮かび星が煌々と輝く夜空の下・・・二つの影が寄り添っていた。


「もう、来週にはあいつらが集めた者たちが来るんだ・・・・」


「ヴィルガートさま・・・・」


「ヴィルだ」


「ヴィル・・・」


 ヴィルと呼ばれた男は端正な顔を苦痛に歪めている。今にも泣き出しそうな顔だ。また、彼に寄り添うメイドの姿をした、まだ十代後半であろう美しい女も同じような顔をしていた。


2人は恋人同士だった。しかし、身分は雲泥の差。この恋は叶うわけがなかったのだ。


「もっと、私に力があればよかったのだが・・・すまない・・・。でも忘れないでくれ。私が真に愛するのはお前だけだ」


「はい」


「でも、どうか私から離れないでくれ。ずっと・・ずっと側に・・・」


「はい、ヴィル。私はずっと貴方の側に・・」


そう女が言い終わると同時に、影が重なる。


女は目から一筋の涙を流した。


側になど居たくなかった。愛する者が他の者を娶るのを側で見ているなんて、本当は耐えられない。初めから、叶わぬ恋だとは思っていた・・・でも少しだけ期待していた。彼が自分の手を取ってくれるかも・・・と。


唇を離し、彼を見つめる。漆黒の髪に、綺麗な少し切れ長の金色をした瞳。そして幾度となく重ねた薄い唇。


もうこんな距離で見ることもあるまい。だから、最後に自分の中に忘れぬように焼き付ける。最愛の人の愛しい顔を。


「愛しています、ヴィル・・・私にはあなただけ・・・」


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恋人たちがそんな事をしている、星空の下。ソフィアも別のことだが非常に苦しんでいた。


「おえっ、ぐうっ・・・ぎ・・もぢ・・わる・いっ・・・・」


ここは、帝国に向かう船の上だった。


『相変わらずだね、それ』


『今、薬持ってくるわね』


外でバケツを抱えゲーゲーしているソフィア。


ソフィアは弱点の一つ、船酔いで苦しんでいた。


海に囲まれた国の者として致命的な弱点である。


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