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過去5

やっと家にたどり着いた。


明かりがついているから、祖父たちが帰っているようだ。ソフィアは勢いよくドアを開けた。


「おお、ソフィア良く帰ったな・・・後ろの2人はなんだい?」


いたのは宰相だけだった。祖父はまた女の所か酒場なのだろう。でも彼も、年寄りのくせにかなり強い。たまに本当に宰相だったのか?と思うこともある。


「ごろつきに追われた。多分まだ追ってきてるから、この2人をお願い」


「わかった・・・お前だけで大丈夫なんだな」


「・・平気」


ソフィアと宰相のやり取りを聞いていた2人の少女は目を丸くした。てっきりこの老人(宰相)が倒すと思っていたらしい。


ソフィアは家に置いておいた自分用の剣を持つと外に出ていった。


そんなソフィアを見て未だに呆然としている2人に宰相は話しかけた。


「心配はいらんよ。あの子は結構強い。そこらへんのごろつきには負けんさ。それよりお前たちの名前は?」


2人は、宰相の問いに少しかたまっていたが、オズオズと小さな声で答えた。


「レティシア」


「クレアモンド」


それきりまた黙ってしまう。


「そうか。じゃあ、レティそれにクレア。家はどこだい?ソフィアが帰ってきたら送ってあげよう」


宰相がそう言った途端、レティが泣き出した。クレアも泣きそうである。


宰相がその反応にオロオロとしていると、すごい勢いでドアが開いた(ドアの開き方は姉たちとそっくり)。


入ってきたのはソフィアではなく、彼女の祖父だった。


祖父は宰相と泣いている2人を見て言った。


「おい、お前はいつからそんなお嬢ちゃんを泣かせるような趣味を持つようになったんだ?」


「違う。家のことを聞いたら泣き出したんだ!!」


「へ〜。本当か?」


「本当だ!!」


そんなやり取りをしていると、今度こそソフィアが帰ってきた。


「おお、追い払えたか?」


少し息の上がっているソフィアを見ながら宰相は話し始めた。


「うん、弱かったから平気だった。警邏の人もきたし。急所をなんども蹴ったから気絶しちゃったけれど」


息が上がりながらも、笑いながら言うソフィア。宰相と祖父は無意識に股に手をやった。


「ところでどうして2人は泣いてるんだ?泣かせる趣味があったのですか?汚らわしいですね」


宰相に向かって軽蔑したような視線を投げかけるソフィア。祖父と同じことを考えるあたり、やはり血はつながっているのだろう。最も、ソフィアは真剣な顔で言っているが。


「違う。彼女たちはどうやら家がないみたいだ」


宰相の言葉を聞き、ソフィアたちは黙った。


「本当に・・・家がないのか・・・?」


ソフィアはオズオズと聞いた。


「無い。親もいない。裏では当たりまえ」


クレアが淡々と答えた。


またソフィアたちは何も言えず黙った。



ソフィアは考えていた。彼女たちは親がいない。それにこのまま帰すのもなんだか危険だ。あの男たちはいずれ釈放されまた裏町に戻る。そうしたら彼女たちが標的にされかねない。だからこのままここに居て貰ってはどうかと。安易な考えだとも思うが、二人増えればだいぶソフィアの負担も減る。基本的に宰相と祖父は怠け者で家事など何もしない・・・ソフィアを旅に連れ出したのも、もちろん立派に育てるためもあったのだが、家事をやってもらうという目的も含まれていたらしい。


それから、今日ソフィアは酒場であることを聞いた。意味はよく解らなかったが。とりあえず言ってみよう。


ソフィアは笑顔で祖父と宰相の方へ向いた。そして懐から、分厚い財布を取り出す。


「今日は給料日でした。これがその給料です」


「おお、たっぷりあるではないか。いやぁ、実はさっき酒場で残金を使い切ってしまってのう。助かったぞ」


ニコニコと思わずソフィアの顔に青筋が浮かぶような事を言いながら、給料の入った財布を手にしようとする。


しかし祖父の手を避け、ソフィアは言葉を発した。

「このお金は、私が稼いだお金です。あなたが使う権利はない。今日酒場で聞きました。誰かのお金に縋り、自分はだらけている人のことを俗に何というかと」


祖父は外れた手を中にさまよわせながらも、ソフィアの話を聞いている。宰相も同じだ。


「ヒモというらしいですね。まさにお爺さま達のことです。さぁ、ヒモは主人には逆らえませんね」


ソフィアの口から若干間違っているような感じもするが、そんな言葉が出てきたのは予想外・・しかも事実にちかいので祖父と宰相は何も言い返せず下を向いた。


 「私は、彼女たちを旅の仲間に加えることを提案します。彼女たちが望んだらの話ですが。いいですよね?」


何か反論しようとしたが、ソフィアに押し切られてしまいしぶしぶ彼らは承諾した。それに、ソフィアと同い年の子供を加えるのはいいことかもと考えたらしい。


「ということなのですが、どうしますか?2人とも私たちと暮らしますか?ちゃんと働いては貰いますが」


ソフィアは彼女たちに尋ねた。すると彼女たちは少し考え、そしてゆっくりと首を縦に振った。


2人の答えに満足したソフィアは2人に聞いた。


「じゃあ、改めて。はじめまして、私はソフィア。2人の名前は?」


ソフィアはまだ彼女たちの名前を知らなかった。



――――――――――――――――――――――――――――――――




「ソフィアよ、実は・・さっきな、賭けごとで負けてのぅ・・・少し金が必要なんじゃが・・・」


「消えてください」


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