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過去1

過去編です

ソフィア、5歳のとき。


「ソフィアさまは本当におかわいらしいですね。それにこの髪もすごくきれいですわ」


 そう言いながらソフィアの髪をきれいに梳いてくれた侍女。ソフィアは彼女が大好きだった。


 あの時までは。


 夜遅く。なかなか寝付けなくて寝台から起き上がり、外に行こうとした。そして扉を開けようとしたとき、大好きな侍女の声が聞こえたのだ。どうやら共にいるのは護衛の騎士と、数人の侍女仲間。


 ソフィアはこっそり彼女を後ろから脅かそうと、足音を立てないようにした。


 すると、彼女たちの声が聞こえてきた。


「今日のソフィア姫はどうだった?」


「今日も相変わらず、私にくっついてばっかり。邪魔ったらありやしないわよ」


「あら。かわいいじゃない」


「そうかしら?しょせん四の姫だし、私はできれば一の姫か二の姫付きが良かったわ。変わって頂戴よ」


「いーや。四の姫以外の姫にはたくさんいるからもう無理よ。あぁ、でも今日も姫様は可愛かったわ。あの王妃様譲りの可愛い容姿。将来は絶対に美人になるわよ」


「羨ましいわ。それに比べて四の姫は全く王妃に似てないわよね?あの髪の色も誰にも似ていないじゃない」


「そう言えば、そうね。もしかして王妃の子供じゃないんじゃない?それか不義の子だったりして」


「はは、そうかもな。俺もたまに思うよ。本当にあの髪は誰にも似ていない」


「きっと不義の子なのよ。毎回あの髪をすくたびにゾッとするわ。あの色・・・気持ち悪い」




 ソフィアはひたすらドアの内側で息を殺していた。まだ不義などの難しい言葉は理解できなかったが、最後の言葉はわかった。



―――――気持ち悪い



 ソフィアは瞳から溢れる涙を止めることができなかった。ゆっくりと力なく立ち上がり、寝台に戻った。そしてシーツに包まり、静かに泣き続けた。


―――――――――――――――――――――――――


「あら、ソフィア様。目が腫れていますわ。一体どうしたのです?」


侍女は昨日のことなどこれっぽっちも漏らさず、いつもの笑顔でソフィアの心配をした。


―――本当はそんなこと思ってないくせに。


―――気持ち悪いって思っているくせに。


 ソフィアは侍女を睨むとドアから一気に飛び出していった。


 ソフィアはこの頃から足が異様に速かった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――



 その日以来、ソフィアは少しだけ周囲と距離を置くようになった。


 すると、よく自分のことを耳にするようになった。


「姉姫たちは美しいのに、四の姫はいたって普通」、「ありえない髪の色」、「不義の子」や「誰もあんなやつ好きになるわけがない」など。


 また、姉姫たちの取り巻きの中には「一、二、三の姫は美しく〜、みんなが前に膝まずく〜、でも四の姫はまるで召使のよう〜」などと、作詞力皆無の曲を歌う者もいたし、「なぜ、王の子でない貧民のお前がここで暮らしているのだ?」と面と向かって言ってくる者もいた。


 そのときはまだ、今みたいに力もなくて何もできなかった。


 ただ、ただ嗚咽を噛み殺し、部屋の隅または書庫で一人縮こまっていた。




 そんなある日のこと。


 いつものように一人で、難しい本を書庫で読んでいると、目の前に影がさした。目の前にいたのは、祖父と前宰相。


 2人はソフィアが顔を上げると唐突に言った。


「旅に出ないか?」と。


 そしてソフィアが頷く前に体を抱え上げ、簀巻きにして王城を後にした。


――――――――――――――――


 夜、ソフィアが居なくなったことに気付いた王城の者たちは大騒ぎになった。


 そしてソフィアの周りの者たちの態度が王に知られることとなった。


 しかし、数日がたった、ある日のこと。王の下に一羽のハトが手紙を持ってきた。


 それは一言、「祖父と旅に出る、心配しないで」と拙い文字で書かれたソフィアからの手紙だった。


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