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『でも、向こうがソフィアを指名してきたのよ。だからどうしようもないのよ』
「どうしてです!?わたくし達のほうが遥かに美しいですのに!」
「そうですわ!!もしかして皇太子は醜女好きですの!?」
「姉上達の言う通りですわ!!それに私のほうが殿方を閨で喜ばせるテクニックを持っていてよ!!」
頬に手をあて困ったように答える母に、すかさず言い返す姉たち(順番は一、二、三の姫の順だ)。
こっちが黙って聞いていれば散々な事言いやがって・・・って三の姫!!あんた爆弾発言したよね!?閨で喜ばせるテクニックを持っているって実際に使ったことがあるみたいに言っているし!!
さすがに三の姫の発言を疑問に思ったのか、一、二の姫は目を丸くして三の姫に振り返った(彼女たちも知らなかったようだ)それに母は・・・なんというか鬼のように顔が変化していて、背後にはなんだか黒い気配が漂っている。周りの大臣たちはすっかり青ざめてしまった・・・まだいたのか。てっきり帰ったかと思っていた。ついでに私も母の顔を見て、少し怖くなった。
三の姫は「え・・・あ・・・えーと・・おホホ」などといい、誤魔化そうとしている。顔は蒼白だ。
それから少ししてから、母はとても艶やかに・・・それでいて見たものの背筋が凍るような笑顔を浮かべた。
「もう正妃候補はソフィアと決まっているの。これは覆せない事実よ。さぁ、話は終りね。わたくしは下がるわ・・・三の姫はこちらにいらっしゃい」
そう言うと、母は三の姫をズルズルと引きずりながら去っていった。母の去った方から“いや〜”、“助けて〜”などと三の姫の悲鳴が聞こえてきた。
一、二の姫、大臣そして私を含めた全員はしばらくの間、その場を動くことができなかった。