魔人レステ -4.「もう一つの影」
魔導器を盗み出した犯人の一人、パシェードを取り逃がしたか、彼女は呪われた剣を使って逃げたらしいから仕方が無いといえば仕方が無いが……。
シェルセザは玉座を背凭れにして胡坐を掻いているサナミリアを見た。
「なぜ今回に限ってお前がホックの傍にいなかった? お前がいれば何とかできただろうに」
「タイミングが悪かったんだな、仕方ない」
サナミリアは悪びれることもなく言う。
シェルセザは視線を正面に戻し、眼下のホックを見据えた。犯人とつながっている訳では無さそうだけれども……さて、
「ホック、パシェードが事件と関係している事は知っていたのですか?」
ホックは頭を下げたまま「はい」とだけ答えた。
「なぜ我々に伝えずに一人で近づいたのです?」
「彼女の身を心配したからです」
……まあ、間違ってはいませんね。
「まず自分の身を心配しなさい。知人だからといって相手が貴方に危害を加えないとは限りません」
ホックは何も応えなかった。
その後、ホックに対して質問を繰り返したが彼の返答は曖昧で真偽も怪しかった。なにより日が落ちて随分と経っている。彼もおそらくは疲れていることだろう。
……なぜこうも彼は事件に関わってくるのでしょうか? 本来ならば何の関係も無い少年の筈なのに。
図ったかのような静寂を挟み、広間の中央の扉が勢よく開け放たれた。
現れたのはスロンファン=ミジョウ。右腕が無く、体のあちこちに空洞が空いたひどい姿だった。脚にも幾つもの亀裂が目立つ、一度砕かれ応急処置としての外骨格だけ作ればあんな状態になる。MPでの再生が追いつかないほどのダメージを受けた結果だろう。
慌てて駆け寄るホックと対照的にシェルセザは座ったまま声をかけた。
「どうされたのです? まさかとは思いますが――」
シェルセザの声にスロンファンはひどく顔を歪ませ「申し訳ございません」と絞り出すと、床に崩れ落ちた。
「あ〜あ。言わなかったか? やつらレステを使うだろうって」
サナミリアの文句を振り払うように、反対からはセロの弁解が飛ぶ。
「申し訳ございません。シェルセザ様、私が勝手に『それは無い』と判断いたしまして――」
「そんな事は今更興味ありません。それでセロ? 貴方なのですか?」
「……あ、いえ決してそのようなことは」
当然。
そんなことは分かっている。セロは裏切ったりしない。この3人で裏切る者なんて居るはずが無い。
しかしそれだと矛盾する。この3人以外から情報が漏れる筈など無い。『レステを狙う理由は生まれない』はず……。
「おかしいよなシェルセザ。あんたが『レステを保護する』であろうことも、筒抜けらしい。いくらなんでも異常だ、裏切り者がいてもおかしくは無いと俺も思う」
サナミリアの何か知っていそうな言い振りには慣れていた。
「それで、貴方はどう考えるのです?」
「そういえば、俺たちには有能な諜報員がいたな」
「……まさか『黒煙』が裏切ったと?」
「ああ、あのクソ鳥がとうとうやりやがったのさ」
たしかに……。黒煙は昔から協力をしていた仲ですが、そこに己の利が有れば平気で裏切るでしょう。
魂の奥に秘めた信念の為だけに生きる、古い時代の魔族。MPの扱いに長けていて、ネズミ程の大きさまで体躯を抑えることが出来る。10年近く姿を見せないと思ったら私達の気づかない間に何度もこの広間に潜んでいたといったところでしょうか?
「一番可能性がある話だと俺は思う」
「一ついいですか? 先程、レステの事『も』と言いましたよね? つまり……?」
「ああ、あの魔導器を俺達が持っていることを奴等は知っている。黒煙が相手側なら当然の話だ。つまりそこの少年を口封じする必要は初めから無かった訳だな」
サナミリアの推測にセロも無言で納得しているようだった。
「黒煙の狙いをどう考えます?」
「結局の狙いは同じだろう。しかし犯人と手を組んでいる訳では無く、利用しているだけだな」
狙いはやはり『死界の種』でしょうか?
「あんな物一体何に使おうというのでしょうかね……」
「知らんな、俺は」
サナミリアはククッと笑いながら私の正面へと視線を向けた。気が付けばスロンファンがホックの肩を借りて眼下まで近づいていた。
「酷く傷を負ったようですねスロンファン=ミジョウ。貴女ほどの魔人がそうもやられるとは、相手は黒煙でしたか?」
「……すみません黒煙さんとは面識が無いので、ただ今回の相手はハーンという同僚の魔法使い
でしたので黒煙さんではないです」
スロンファンの傍らにいたホックがピクリと反応した。同僚……ホックの教師ということか。それにしても彼女が魔法使いにやられるなんて。これもまた盗まれた魔導器の力でしょうかね?
「あなたに苦労をかけてしまいましたね、スロンファン=ミジョウ。あなたが敵わない相手ならば仕方ありません犯人追跡はセロとサナミリアにやらせます」
「しかしシェルセザ様、それでは――」
「例の魔導器なら『私達』で守りますから大丈夫ですよ。心配ですか?」
一度は食いかかったセロもその言葉を聞いては引くしかなかった。
「それで? 相手は黒煙なんて強敵な訳だけど……レステはどうするんだい?」
「救出最優先に決まっています。ニューエさんの息子ですよ? 当然じゃないですか」
「当然ですか、ねぇ……」
サナミリアは面倒そうに呟いた。
(つД⊂)ああああああ……。
黒煙もハーンも今まで一回しか出してねえよ。全然絡んでねえよ、誰だよそいつらって話だよ……。
名前がお初の「黒煙」なんて意味不だよ全く。
あとストーリー進行してんのかよコレ(・Д・)




