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魔人レステ    -6.「夜の終わり」

 ホックは咄嗟に目を閉じてしまったが、刹那に捉えた迫り来る巨獣の姿が瞼の裏でもホックを襲った。


 終わりを覚悟したホックだったが、その時はなかなか訪れない。


 ゆっくりと目を開けた。


 魔獣はホックを無視し、何故かレステを摘み上げていた。


「なんだ? お前魔族じゃねえか、あんまり旨そうじゃねえがな…」


 じゃべった!?


「これはまた薄っすい体してるねぇ。まあ、少しくらいはMPの足しになるさな…」


 裂けた口が大きく開く。


 その絶望的な光景の片隅に、ホックはもう一つの人影を見た。


 そこに居た長身の男は持っていた弓から既に矢を放ったところで、その矢は光を帯びてレステを掴んでいた腕を射抜いた。


 弾ける魔獣の腕。切断部のMPが粉中になってキラキラと輝き散った。


「何しやがるセロ」


 痛みを感じないのだろう、魔獣は落ちた腕にもレステにも特に興味が無さそうにただ文句を言った。


「止めろサナミリア。その子はレステです、殺す事は許しません」


「レステ? ああ、居たな、このガキか……」


 二人の会話の間に、気がつけばサナミリアと呼ばれる魔獣の腕は既に再生していた。


「だけどよ、あの部屋からこのローブ盗み取ってんだぜ? 盗賊は食っていいって約束だしよぉ…」


「そんな子供の悪戯を犯罪にしていたら、我々の仕事が増える一方じゃないですか。勘弁して欲しいですね」


「まあ、レステは仕方ねえか、シェルセザが怒りそうだしな……。でもあいつなら別にいいんじゃねえの?」


「あいつ?」


 不意に向けられたサナミリアの眼に冗談の色は含まれて居なかった。


 眼が合うことで、再び恐怖が膨れ上がったホックはその場を逃げ出す。走りながらレステの事も気に掛かったが、先の会話の内容から大丈夫だろう。


 そう思うと、なんだか不思議な虚しさが湧いてきた。


 「レステはとにかく特別で国からも大切にされている」何故かそんなフレーズを思い出して、いつかと同じように鼻で笑った。


 なに頑張ってたんだろ俺? 最初から……あいつに命の危険なんて無かったんだ。「守らなきゃ」なんて…馬鹿かよ。


 「最初から」「生まれた時から」そういった言葉をホックは時折頭の中で繰り返す。ホックが国無しなのは最初から、フォードの血が薄く魔法の扱いが下手なのも生まれつき、何もかもに一線が引かれていて、きっとどうでもいい神様のサジ加減でホックは「クラン側」に産み落とされたのだと……。


 その結果自由に踏み入る事は出来るのに、決して無視できない国境の壁を妬むように見上げるのだ。


 サナミリアがホックの前に回り込むが、既にホックに恐怖は無い。「自分は要らない側」なんだと、頭に在るのはそれだけだった。


 後は最後の一撃を待つのみだ。


 サナミリアも容赦をするつもりは無い様子で、ホックはゆっくりと眼を閉じた。


 大きな衝撃を受けてホックの体は横に倒れる。しかしそれは強い衝撃ではあったがサナミリアの繰り出す殺意の込めたものとは異質のものだった。


 驚いて開かれたホックの眼に映ったのは、輝き舞うMPと半身を失って倒れこむレステの姿だった。


 レステは右半身を完全に削り取られ意識も無い、ホックを押しのけてサナミリアの一撃を受け持ったのだ。


 …なんで? 


 真っ白になる頭にその言葉だけが浮かび上がる。レステは俺とは違うだろ? 「内側」の存在なのに……?


 どうして俺を?


 駆け寄ったホックは無残なレステの姿にどうしていいか判らずただ叫んだ。


「おい! お前!」


「あん?」


「こんくらい、魔族なら大丈夫なんだろ? 問題無いよなぁ?」


 泣きそうな声で医者に訊くような言葉を吐いた。目の前のレステは失った体の断面部分から侵食するようにゆっくりとMPが溶けているように見える。


「あ〜ダメだなそいつ、再生させる技術もMPももってねぇ」


 サナミリアは興味無さそうに言った。


「危険ですね……」


 いつの間にか隣に居たセロも似たような言葉を呟いた。


「てめぇが居ながら何でレステがこんな事になってんだよ!」


 噛み付くホックにセロは目を細めた。


「返す言葉もありません」


 触れる事すら抵抗のある痛々しいレステの体をセロは抱え上げた。


「意図的にMP濃度を高くしている部屋があります。そこに運ぶことが今出来る最大の事でしょう。」


 セロはサナミリアを睨んだ。


「あと……サナミリアあなた、してやられた様ですよ。こんな子供を追い回す時間が在るなら仕事に戻ったらどうです?」


 サナミリアは「どういうことだ?」と返したが、セロは答えずにレステを運ぶ事を優先した。


「おいおい……まさか」


 サナミリアはまた凄まじいスピードで魔道器の倉庫の方に走った。


 ぽつんと取り残されたホックは一人、レステの安否を祈った。


 ……神様、どうかレステを…。


 俺なんか……俺なんかのために死んでいいヤツじゃ無い筈です……。


これで3話終了です。

ここまで読んで頂いて有難う御座います。

なんか、グダグダで終わってしまった気がしてなりません。

よければこれまでの感想などお願いします。

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