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どこか壊れた世界の中で〜異世界復興日記譚〜  作者: 座敷アラシ
プロローグ
2/7

【プロローグ】女神と少女と異時空転移

最初に投稿した内容から大幅に加筆、修正をさせていただきました。

後、タイトルと粗筋を変更しました。

黒夢 桜(くろむさくら)』それが少女の名前であった。


他人より少しズレている一人称と若干ひねくれたような性格を持つ彼女であったが…


それはあくまで『個性』の範囲であり、大雑把に言えば平均的な少女だった。



いい所もダメな所も人並みにはある人並みの少女。



友達はそこそこ居て(とは言っても男友達はあまり居ない)そこそこに楽しい日々を送っていた少女。



強いて言えば、長い黒髪と整った顔立ちが学校の男子達に人気で、彼女にしたい女子ランキングで毎回上位(5~8位くらい)を取る…


そのぐらいしか優れた部分の無い平凡な少女だった。



なので、そんな彼女が死んでしまったのはどちらかと言えば異常な事ではあった。



日本という基本的には治安のいい国で他人に殺される人数は年間およそ300人程度である。



…しかし、平凡な彼女は不幸にもその1人に選ばれてしまったのであった。



桜が毎月楽しみしている四コマ雑誌、それを買いに行っている道中…




急に、ナイフを持った男が彼女を襲ったのである。




いつの間にか接近された人影…それに驚く暇もなく切りつけられたのである。



男がナイフで切りつけた場所は動脈と脳幹、気管のある首……そう、即死だった。



死んだ瞬間の事はよく覚えていないが…


あれは確実に即死だったと桜は思っている…の…だが…。



───────────



「ボクは…何故…生きてるんだ…?」



声が出た。喉は切られたはずなのに。



自身が生きてる事は桜にとってはとても信じられない事であった。



考えれば考えるほど混乱と動揺が桜を包み込む。






……しかし、その混乱は突如掻き消されることとなる。



寝起きでボヤけていた視界は徐々に元の視力を取り戻す。



そして、完全に視力が戻った時桜はひとつの事に気がついてしまった。



「はいぃ?!」



彼女がいる場所は遥か下に地図で見たような日本列島が見える。


日本の横にはユーラシア大陸、しばらく探すとオーストラリア大陸も見つけることができた。




そう、桜がいる場所は『空中』。





要するに彼女は絶賛地球の上を超高度飛行中なのである。






「ま、マジですかい…」





高さに当てられまた気絶しそうになる意識…


それをなんとか理性で抑える。



ここでまた気絶している訳にはいかないのだ。


まだ何もわかっていないのだ。


もうすこし自身の状況を把握しなければ…



桜はそう考え、取り敢えず切られたはずの自身の首を触った…


が、切られた痕跡等は感じることができなかった。



それは本来は…ありえない事のはずであった。



仮に助かったとしても…跡が残らず助かるなんてありえない…



…いや、絶賛地球の上を飛行中というありえない状態でこういう事を言及するのもアレだが。



「これは本当に…どういうマジックなんだ…?」


困惑した声が出る。


あまりにも訳の分からない事が重なりすぎて気がおかしくなりそうになる。



そうした時、



「…知りたい?」




突如、桜の背後から聞いたことの無い声が響いてきた。



「わひっ?!」



突如声をかけられた事で桜は飛び退く…事はできなかった。




…突如背後から伸びてきた腕に抱きつかれたのである




「あっ……」





反射的に変な声が出てしまう。



抱きつかれている事実を自覚し顔が紅くなる。



「ちょ…いきなりなんだ!だれだ!というかここどこなんだー!!!」



頭がパニックになって、頭の中に入っていた疑問をすべて口に出してしまう。



まあ、今まで訳の分からない事が起こりまくっていたストレスを発散する意味もあるが…




とはいえ、その言葉の焦り具合が相手に伝わったのか抱きつかれていた手が解ける。



「あー…ごめんごめん、久々に人が来たものだからつい興奮しちゃって…えへへ♪」



「どこの変態ですか!子供ですか!あなた…は…」



変態っぽいような…子供っぽいような…そんな発言に思わずツッコミを入れながら振り返った桜…


だが、声の主の少女、その容姿を見てツッコミが尻すぼみになってしまう。





瞬時に目を…奪われる





他に何も…言えなくなる





彼女を見た瞬間、ほかの全ての物が脇役に落ちてしまう…





それほど…彼女は…




「綺麗…だ」





───綺麗だったのである。





瑠璃色の長髪、翡翠色の瞳、整った顔立ち、魅惑的な体のライン…


彼女を構成する全ての要素が彼女の容姿を神格化させていた。


装飾の少ないシンプルな服装も彼女の素材を引き立てる要因となっていた。




「うふふ…♪」



桜が目を奪われている事に気がついた少女はおもむろに微笑んで見せた。



ただそれだけの動作でもとても美しく…全身に電撃が走るような…そんな感覚を覚える



桜は…完全に彼女の虜になってしまったのである。


……………女なのに。



…とはいえ、いつまでも彼女に見とれている訳にもいかない。



誰かに出会う事が出来たが…

何も…わかって居ないのだ



何故桜は生きているのか


どういう経緯でここに居るのか


ここはどこなのか


何故飛んでいるのか


彼女が何者なのか



それらを聞かなければならない。



そう考えながら桜は口を開いた。



「一体…何がなんなんだ?これは?」







………桜は一々質問する事を放棄した。



「…随分大雑把な質問だねー…」



…少女も呆れ顔をしていた。



とはいえ、それは仕方の無い事であった。


桜の頭の中ではあまりにも聞きたいことが多すぎて収集がつかなくなっているのだ。


なら、全部知っていそうな彼女に全部任せるべきだ、と桜は考えたのである。



「まあいいか!どうせ全部教えるつもりだったし!」



少女は、面倒臭そうに頭を掻いた。


…ただそれだけの動作なのに妙に絵になった。




「端的に言うと、キミは前の世界で死にました。」



あまりにも唐突な死亡宣言であった…が



「うむ?あまり驚いていないみたいだね…?」


桜は冷静に話を聞き続けていた。


「いや、まあ、殺された瞬間の事、鮮明に覚えてるし…」



むしろ死んでいないと言われた方が若干動揺する、そう桜は考えた。



「話が早くて助かるよ。まあ、そんな貴女の魂を私、時空管理者……まあ女神様な私が拾ったわけですよ。」



魂とか、時空とか…普段聞かないような単語が並べられている。


…が、一応桜は理解することができたらしい。



「ふむふむ…なるほど。…つまりボク生き返ったわけでは無いわけか。そして、今ボクの命は貴女に握られていると。」


「まあ、そういう事になるね。」



命を他人に握られている…それはとても恐ろしい感覚のはずなのだが…桜はその辺りの事はスルーするらしい。



そして、女神的な人は話す





「まあ、生き返らせるつもりで拾ったわけなんだけどね。」





わりと重大な事をサラッと言われた。



生き返る、ということを。



「……え?」



今まで話が一応は理解出来ていた桜であったが、突然の事に言葉が出なくなる。



「生き返るのか?天国とかに行くとか、生まれ変わるとかでは無くて?」



1泊置いてようやく話を飲み込めた桜は続ける。



桜は、てっきり自分は天国的な所に行くとか、別人として来世を過ごすとか、そういう事を妄想していた。



しかし、生き返れるのは完全に予想外であった。



「あー…天国とか来世とかは無いよ。私に拾われずに死んだらそのまま消えるだけ。」


「マジですかい。」



…何気に…宗教的な物を全否定するような発言であったが…


桜は一応、それらに疎いため、すこし驚くだけで済んだ。



「この事実を聞くと発狂する人とか結構居るんですけどね…」



そう言いながら女神的な人を名乗る少女は乾いた笑みを見せる。


…お疲れ様です。桜は心の中でそう呟いた。



「あ、肝心の生き返りについての説明をするね。」



女神的な人は表情を元に戻すと生き返りについて説明を始めた。



「桜さん、今から貴女には異時空に『転移蘇生』してもらうよ」


「ん?」


なんか急にうん臭くなった話に桜は思わず眉を潜める。


───というか、ボクの名前をどこで知ったんだ…


「異時空に…転移?それって一体…」



「まあ、細かいことは色々と違いますけど要するに異世界転生です。」



「なるほどわからん。」



現代日本では割とメジャーな小説のジャンルに異世界転生モノという物があるが…

桜はそれらの知識をあまり持っていなかった。



そのため、異世界転生と言われても桜はイマイチピンと来なかったのである。



「うー…説明が長くなりそう…めんどい…」



そう言ってまた、女神的な人は乾いた笑みを浮かべる。


なんかすいません…。(by,桜)



「いいですか?私の異時空転移というのは…」



そして、女神的な人は異時空への転移について詳しく教えてくれたのである。



────────────



「………はい!これで終わり!わかった?」



そして、30分程に渡る女神の異時空転移講座が終わった。



要約すると


・地球で死んだ魂の中にはかなりの潜在能力を持つ魂が稀に存在するらしい。


・それを時空管理者である彼女が拾い上げ、その潜在能力を覚醒させる。


・そしてその能力が役立つ時空で魂に肉体を受肉させ、新しい人生を歩ませるのが彼女の仕事らしい。


・ちなみに、元の時空では倫理的な理由で受肉ができないらしい。


というのが、異世界転移の概要であった。




「一応…断ることもできるけど…

基本的に私が拾った殆どの人がこの転移を受け入れているね。

いや、まあ断ったら消えるだけだから当然といえば当然だけど。」



それはそうであろう。


自我が消えて無くなる…そうなるくらいであったら、たとえ危険でも転移する道をえらぶ。



「なるほど…大まかには理解出来た…たぶん…」


ちなみに、上に簡単に纏めたが実際にはもっと色々なことについて説明されており、桜が話を理解出来たのかは少し怪しいところである。



桜は、物わかりはいいが、細かい話になると少し覚えるのが苦手なのである。


とはいえ、大体の概要は理解出来ていたので問題は無いだろう。



そういえば…と、桜は先程の話で気になった所を聞く。


「ボクってもう潜在能力の覚醒ってしてるのか?」



潜在能力の覚醒。話を聞く限りでは所謂現実世界で、超能力とか魔法とか、そう言われている類のものであるらしい。



そういった物を使えるようになるというのは…

普通の人でもかなり気になるものであるだろう。


「はい。もうしてありますよ。」


女神的な人はそう言って続ける。


「貴女の潜在能力は


創造クリエイト】です。」




創造クリエイト】。



なんだか文字だけを見ると壮大だな…


と桜は一瞬考えるが、そもそも場所も会話も現実離れしているこの状況では壮大も何も無い事に気づく。



「【創造クリエイト】…つまり自由に物を作り出せるような能力…という事でいいのか?」


「端的に言うとそうだね。」



まあ、名前負けしない能力である事は間違いないらしい。


とはいえ、期待しすぎるのもちょっとアレだな、と考えた桜は、実際はもう少し制限とかがある能力だと思う事にした。




──その考えは後に大きく覆されることとなるのだったが…それはまた別のお話。




──────────




「さてと、説明はだいたい終わったかな?」



その後も暫く質疑応答を繰り返し、そろそろ聞くこともなくなってきた頃合を見計らってか、女神がそう聞いてきた。



「うん、だいたいわかった。」



ちなみに、会話の中、桜はさり気なくこの場所の事や目前の少女の事について聞いていたのだが…


案の定上手くはぐらかされてしまっていた。


桜は話術が上手いわけではないため、その辺を聞き出すのは無駄だと辞める事にした。



「そう!それなら良かった!」



女神様は桜の答えを聞くと満面の笑顔を作った。



……ちなみに、この笑顔が桜の理性メーターを吹き飛ばしそうになったのは桜本人だけの秘密である。



「さて、じゃあ貴女は…異時空転移…してくれますか?」




少し間を置いて…





「はい、勿論。」


桜はそう返事をした。




………本当は少し迷っていたのだが、断ったら消えてしまうので拒否権は無かった。



女神本人に自覚はなさそうだが、これは1種の脅迫であった。



「そう…良かった♪


…それでは、転移を始めさせてもらうね♪」




…そして場に神聖な空気が流れる。



一言も発してはいけないような…そんな荘厳な雰囲気になる。


そんな空気の中…女神は指から出る光で魔法陣を描きながら呪文を唱えた。


「【魂召喚コールオブソウル時空移転スライド】!」




瞬間、

桜は、自分という存在がこの世界から引き剥がされるような感覚を覚える…



多分、もうすぐこの女神ともお別れなのだろう。



……



桜は、急に名残惜しくなり、先程聞けなかった1つの質問をした。



「あ、あなたの名前はなんですか…?」


場違いな質問であったのは理解している。


術式が完成に近づき、意識が持っていかれそうになる。


それでも、桜は必死でその質問をした。



何故か、聞かなくてはいけないような…そんな気がしたのだ。



そして、女神は…何故か悲しそうに微笑みながら…その質問に答えたのである。




「アルミニア……

アルミニア・クローバーです!」




そう言ってアルミニアが魔法陣を完成させた瞬間…



桜の意識が途絶えた。



正直、女神の名前考えるのに苦労しました…

プロローグも終わり、次回からはいよいよ本編!異世界復興物語スタートです!

粗筋に出てくる「あの人」も登場予定です!

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