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第2章 VSメガネとデブとギタリスト 決着

「………!!」


「イヤッハアアァ!ようやく気付いたか、今この空間には俺と君しかいない。つまり、大将である君の首を獲ればゲームセット、俺の勝ちだ。」


「負けられないのはあんたも同じなのに、何故そこまで楽観的にいられる?」


「決まっている。俺が君程度のディリュージョニストに負けるはずがないからさ。知識、経験、純粋なイメージ力、全てにおいて俺は君を遥かに凌駕する。」


「………」


「どうした?怖じ気づいたか。降参(calendar)してもいいんだぜ。」


「……考えていたのさ。」


「何をだ?楽に逝ける方法か?」


「あんたを黙らせる方法をな……!」


と言ってみたはいいものの、現状榊を倒す手段が存在しない。この特殊な空間のおかげで榊は実力の3割ほどしか出せないが、それは櫻井とて同じこと。delusionにおいて基本的に自分だけが有利になるチートなどない。相手を陥れたら自分も被害を被る。世界広しといえどここまで公平(fair)な競技などそうあるものではない。


硬直状態からは何も生まれない。最初に動いたのは榊だった。


榊はギターを振り回しながら櫻井に迫った。いくら弱体化しているとは言え、ギターが櫻井に触れた瞬間櫻井は為す術なく敗北を屈する。


「………ッッ!!!」


間一髪で櫻井は回避に成功する。しかしその表情には焦りの色が伺える。まずこの大熊状態で榊と渡り合えている事自体奇跡のようなものだ。


(何故だ…?ギターはもう機能しないはず。音を封じたこの世界でなぜあれほどの性能を発揮できる……)


「分からねぇって顔してるな。簡単だ。俺と君との間の実力差は音を封じた程度じゃ埋まらねぇってことだ。」


「……………」


「どうした、絶望で声も出ねえか?そうだよな、俺と戦った奴はみんなそう……待て、一体何をしやがった?」


その瞬間、漆黒に染まっていた空は光を取り戻し、不気味な石像はいつの間にか姿を消していた。


「敗色濃厚で自棄になったか。俺を抑える為の空間を自ら解除するとは、とんだ間抜けがいたものだ。」


「どうやらあんたは俺の全力を出さなければ勝てないようだ。」


「なら見せて貰おうじゃないか。その全力ってやつを。」


櫻井は第二形態、テディベアと化し、ふ菓子を召喚した。テディベアと化した櫻井の移動速度は新幹線にも匹敵する。駆け出した櫻井はもう止まらない。


「これが君の言う全力なのか?だとしたら、拍子抜けだな。」






しかし、次の瞬間櫻井は地に伏していた。櫻井の攻撃は無情にも防がれた。それどころか、音が使える榊によって動きを封じられてしまった。


「その程度の実力ならこの街では通用しない。くにへ かえるんだな。おまえにも かぞくが いるだろう。」


「ウルァァァ!!!」


櫻井は持っていたふ菓子を榊に投げつけた。しかし、いや、当然というべきか、ふ菓子は榊の目前で粉々に砕け散った。


「もうこれで分かっただろう。お前は俺には勝てない。せめて安らかに眠れ、鎮魂歌(セレナーデ)!」


榊はギターをかき鳴らし、止めを刺そうとした。しかし、そこである違和感に気づく。ギターの弦がふ菓子でベトベトしていたのだ。それが何だというのか、普通なら構わず攻撃に移る。実際100人いれば99人は構わず攻撃するだろう。しかし、榊 清十郎は違った。


「危なかったよ。君を過小評価していたようだ。だが、もう俺は油断しない。これでもう本当に君に勝ち目はなくなった。」


もしもの話をしよう。もしも、榊が違和感に気づかず、もしくは気にせずギターをかき鳴らしていたとしよう。その場合、ふ菓子でベトベトになったギターは本来の音を奏でることはなく、ギターの使用者はその違和感に耐えきれず、内部から崩壊していた。分かりやすく言うと、櫻井が勝っていた。逆に言うと、櫻井には最早この手しか残されていなかった。


榊は一瞬で間合いを詰め、櫻井の土手腹にギターを突き刺した。体の傷は想像すれば治せる。しかし、腹の傷を治した所で、もはや櫻井にできることは何もない。勝機があるから痛みにも飛び込んでいける。逆に言ってしまえば、圧倒的な力の差を前にしたとき、心が折れたときにはもうどうすることもできない。


「………降参(サレンダー)だ。」


ここに、一つの戦いが終わった。





榊に櫻井が勝つ方法を3カ月以上考えていましたが、やっぱり無理でした。無双系の主人公が多いなろう作品で、こんなに負け続けている主人公他にいるんでしょうか。

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