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あした、ひとが死ぬらしい  作者: 文月 茉
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<プロローグ> 雨の日 

 はじめまして、文月茉です。初投稿の作品となります。柏木佳恵乃(かしわぎかえの)という女の子がの日常から始まっていくお話です。趣味で書いたので至らない点はあると思いますが暇潰し程度に読んでいただけると嬉しいです!薄ーくBL要素が入る作品ですが腐でもそうでない方でも普通に読めるんじゃないかなと思います。現段階ではそういった要素はありません。

 酷く五月蝿い雨音が、無遠慮に鼓膜を揺らす。

 目を開けた。但しゆっくり、完全に目が覚めてしまわないよう、うっすらと、瞼を開く。

(なんだ、まだ夜じゃん・・・)

 眠気がまだ体中に纏わり付いている間に、もう一度眠りに着こうと目を閉じたところで、コンコン、とドアをノックするような音が聞こえた。

 雨の音だろう。「ん・・・」と声を漏らし、寝返りを打つ。

 コンコン、ともう一度。私はもう、夢の中に入り込んでしまったのだろうか。でなければ、何故こんな夜中にノック音などが聞こえるのだろう。「まさか幽霊!?」なんて考えが頭を過ぎり、ふっと笑いを漏らしてしまう。

「・・・ぇの」

 ・・・ちょっと待て、今声が聞こえなかったか?夢?夢だよね?夢のはずだ。まだ朝じゃあないのだから。

「・・・ぇの、佳恵乃!」

 私の名前を呼ぶ声・・・。聞き慣れた、母の声だ。

「起きなさいって!」

「ぁ~・・・」

「・・・あんた、赤ちゃんだっけ?」

 続けざまに、ドアの開く音がした。

「ねぇ」

「んー・・・」

 母の呼びかけに対抗するようにして、また寝返りを打つ。

「・・・また、新田さんの家に行かなきゃなんないのよねぇ」

 母がぼやくようにして言った。

「またぁ?先週も行ったよ?」

 声を出したことによって、すっと眠気が覚めて来る。いや、目が覚めたのは何もそのせいだけではないのだけれど。

「まぁ、雨も酷いし、仕方ないんだけどねぇ・・・でも、あんたにとっては好都合なんじゃないの?学校も休みだって、メールも来たよ?」

「よっしゃ、行こう。」

「切り替え早いなぁ・・・とりあえず、リュックと最低限必要な物だけ持って来てくれる?さっさと行こう。友達と話したりしたいんでしょ?」

「わかったって。」

 言いながら、私は体を起こし、伸びをした。うーん、本当に気持ちの良い朝だ。さっきまで、夢と現実の間をふわふわとしていたことはなかったことにしよう。

「そんなあからさまに嬉しそうな顔しない!・・・まぁ良いけどさ。じゃあお父さん起こして来るから、早く準備済ませてね。」

「はいはい」

 無意識のうちに、口角を上げてしまっていたらしい。でも、学校が休みになるなんて、学生にとってはこの上ない喜びだろう。これくらいは許してほしい。

 「もう・・・とっとと起きてくんないかなぁ。」などとぼやきながら(父に対してだろう)私の部屋を後にしようとする母に、「あ、忘れてた」と声をかける。

「何?」

「おはよう」

 一瞬きょとんとしたように見えた母だったが、すぐにその顔には優しい笑みが浮かぶ。

「・・・あぁ、おはよ。」



 ひとしきり準備を終え、階段を下りてリビングに足を踏み入れた頃には、さすがの父も、まだ眠そうな目を擦りながらだが、リュックを背負い外出の準備を整えていた。

「おう、佳恵乃、おはよう」

「おはよー」

 父に軽く受け答えしつつ、私はそのまま玄関へと向かう。

 靴を履き終わっても、父と母はまだ来ない。

「早くー」

「ああもう、先行ってていいよ!傘持ってね!」

「わかってるって」

 母の言葉に従い、傘を持って家を出る。ドアを開けた瞬間、家の中からでもはっきりと聞き取れた激しい雨音が、大音量となって私の体を包み込んだ。

「うわぁ・・・靴濡れそう・・・」

 雨の日特有の臭いが鼻を突く。暗い。目を覚ました時、夜だと勘違いしてしまったのにも頷ける。厚い雲に遮断された陽光はここまで下りてきてはいなかった。大粒の雨が次から次へと地面を強く叩き、弾けている。

(これはきっと、道ぐっちゃぐちゃになってるな・・・)

 案の定、家の前の道に出てくると、そこらじゅうに大きな水溜まりができているのが見て取れた。いや、水溜まりというより、川といった方が良いのかも知れない。雨水によってつくられた、広く浅い川が、道路全体を支配しているようだった。

 それでも行くしかないのだから、仕方なく傘を開いて足を踏み出す。五歩目くらいで、靴の中に水が染み込んで来た。

「うへぇ・・・」

 新田さんの家に着く頃には、どちらの足も雨水に沈没していることだろう。すこしでも気持ち悪さを紛らすため、速足で歩き始める。スボンも濡れてきたけれど、気にしない。

 空を見上げる。相変わらず、黒い雲は強い存在感を放ったままそこに居座っていた。

 私は雨の日が嫌いじゃない。特に理由はないけれど。でも、雨の日は私にとって良い日になることが少なくないのだ。

 


 この冷たく湿った感覚に、今日も『良い日』を予感してしまったのは、多分私が馬鹿だから。


 最後まで読んで下さった方、ありがとうございます!今回はプロローグということで余り話は進みませんでしたが、次回からしっかり進みます!また読んで下さると幸いです。では、また。

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