王国の最期
この通り姿は変わってしまいましたが、私もこの国の役に立ちたいのです
姫は真剣な眼差しで王を見つめながら答えました。
その姿には王の言葉にも屈しない強い意志が感じられました。
王が長年探していた王子は彼の望まない姿になって現れました。
跡継ぎを求めていた王はすっかり落胆してしまいました。
そして魔女の娘がいる事を知られてはならないと思うのでした。
王は側近に何か指示を出すと姫に力の提示を求めます。
姫は得意の魔法で簡単に兵士をねじ伏せ自分の力を示しました。
その力に審査に立ち会っていた周りの貴族たちからは拍手喝采が起きました。
お前の実力は分かった…審査の結果は後で知らせる
審査は終わり姫が部屋を出ようとした瞬間の事です。
部屋のドアは閉じられ鍵がかけられました。
そして姫の背後から突然武器を持った何人もの兵士が現れ、一瞬の内に姫は幾つもの鋭い刃に貫かれてしまいました。
悪く思うな!王家から不浄の者が出てはいかんのだ!
お前が魔女の姿でなければまだ許したものを!
倒れて動かなくなった姫に王はそう言い放ちました。
あなたのその言葉が聞きたかったのです
王の宣言を聞いて動かなくなったはずの姫はそう言って立ち上がりました。
動揺する王や側近や兵士を尻目に姫は続けました。
あなたは母も、そして私も見ていなかった
ただ、跡継ぎが欲しかっただけ
王家の存続の事しか頭になかった
そこに愛などなかった…
最後にポツリと淋しそうにそう呟いた後、一瞬の内に姫は姿を消してしまいました。
実は王宮に現れたのは姫の分身だったのです。
最初から姫は城には行っていませんでした。
企みの失敗した王はしばらく呆然としてしまいました。
その後はもう何も手につかずにその日の審査は終了となりました。
それからしばらくして王国は戦火に襲われました。
長い歴史を誇った王国はあっけないくらいに簡単に滅びてしまいました。
姫は逃げる民衆を密かに救い出して王国の被害を最小限に抑えました。
しかし決して戦いに参加する事はありませんでした。
森の魔女の親子はその後も貧困や戦争に苦しむ人を助け続けました。
彼女たちはいつしか偉大な森の魔女と呼ばれ、人々に希望の象徴として
ずっと語り継がれるようになったと言う事です。
(おしまい)
魔女モノを書きたくてつれづれなるままに妄想を膨らませました。
かなり変則的な話になりましたけど書きながら話が膨らんだ結果で
実はいきあたりばったりです(汗)。
でもこう言う書き方は書きながら自分でもわくわくするので楽しいですね。