王子の決意
言われて王子は鏡でよく顔を見てみました。
目の前の母とそっくりな顔がそこにありました。
それに気付いた時、王子の疑問はすっかり消えていました。
こんな事になってごめんなさい
私と王は愛し合っていたわ…それは真実
そこまで話すと母は辛そうな顔になりました。
声のトーンも下がったようでした。
でも私は自分が魔法使いという事を隠していたの
それで子供が産まれた時に王はその子供が女の子と聞いて失望してしまった
それで思わず魔法を使ってしまったの…
男の子の姿になったあなたをあの人はとても喜んでいたわ
ただ、魔女を王家に置いておく事はしきたりが許さなかった
魔女に対する偏見はこの国にとってとても根深いものよ…
正体を知られた私は城から追放されてしまったの
それでもあなたが心配で毎日鳥の姿になってあなたを見ていたの
王子は母の話をただ聞くばかりでした。
聞きながら確かに王国での魔法使いの扱いはひどいものだった事を思い出していました。
そして母の苦悩も分かるような気がしてきました。
本当はずっと小鳥の姿のままあなたを見守るだけにしたかった
でもあの人があなたをあなたの望まない生活に押し込めて
あなたが苦しんでいるのを見て
どうしても見ていられなくなってしまったの
母のその言葉に王子は心が暖かくなるのを感じていました。
母親がいないと孤独に思っていたけれど本当はいつも見守ってくれていたんだ!
王子はそれまでのあの穏やかでやさしい日々を思い出して涙をこらえていました。
その王子をやさしく見つめながら母は彼にある提案をしました。
あなたが望むなら元の姿に戻すけどどうする?
母の言葉に王子は素直にうなずきました。
あまりの即決ぶりに母はその意見をもう一度確かめました。
いいのね?もう元の生活に戻れなくても…
元の生活なんていらない!このまま戻って人殺しなんてしたくない!
母はやさしくうなずくと王子にかけられた魔法を解きました。
あっけないくらいに簡単に王子は元の姿に戻りました。
やさしい王子はやさしい姫になりました。
僕…いや、私、魔法使いになりたい!この森で暮らしたい!
姫はそう力強く答えました。
その熱意には母は強い決意を感じました。
その熱意を受け、姫を立派な魔女にしようと母は心に誓いました。
あなたがそう願うなら…いいわ!しっかり仕込んであげる!
こうして深い森の奥でかわいい魔女見習いが生まれました。