序章
1
集団的自衛権が適応されはや数十年、日本は「同盟国を守る」といった名義を使い、戦争に明け暮れていた。そして周辺の国々も反撃を開始。それにより、第三次世界大戦が繰り広げられていたのだった。
「しゃらっぷ!!」
画面に向かい、そう吐き捨てた少女の顔はひどくやつれ、目の下にひどいくまができていた。
もとは整っていたであろう黒髪も今はボサボサで19歳女子としてはどうかと思う。
旧式のマウスを使い、敵の部隊を無傷で倒していく様は少し異様であった。
「よっしゃ」
画面には「youwin!!」の文字。それを見つめ、小さくガッツポーズを取る。
勝利の歓喜にひたっていると、ピンポ-ンとインターホンがなる。面倒だ、と思いつつ、玄関に足を運ぶ。
するとそこには緊張した面持ちでピザの箱を持つ17、8歳の少年が立っていた。
「ご、ご注文の品を!!・・・じゃなかった、ドリームピザでございましゅ・・あああ!!失礼しましたああああああああああああ!!」
そう言うと代金も受け取らず、一目散に走っていった。
(あー、お金・・・)
(にしても、お金も受け取らずになんであんなに急いで・・・)
玄関でうんうんうなっていると、道を行きかう人々がこちらをじろじろと見ていく。
ふと自分のかっこうを見つめて思った。
(あ、なっとく・・)
数日間着替えていないし、風呂にもつかっていない。しかも連日の徹夜のせいでひどいくまもできている。
自分のせいで叱責されであろう哀れな少年の対応を思いだし1人でにやにやしてしまう。
(だって、あんなマンガみたいな噛み方といい、ドジっぷりって・・・ま、あたしも人の事言えないくらいコミュ障だけど・・・)
腕の中にすっぽりとおさまったピザが冷めないように手早く切り分ける。
その時この少女はあの少年との出会いが自分の人生をあんなに変えるとは想像していなかった。