フレームの中で。
伊東 陽太。
部活も入ってなければ、頭が良いわけでもない普通の高校2年生だ。
家族は、父と母と僕の3人。流行の核家族ってやつだね。
そんな両親は明日行われる我が校の文化祭を楽しみにしている。
僕が文化祭実行委員だからだろうが、完全に裏方仕事だから見ることはほとんどないんだけどな・・・
まあ、いいか。
今年の長い梅雨もそろそろ終わる頃、僕は校内を当てもなく歩いていた。
文化祭準備も大詰めだからか、校内には多くの生徒が残っていて、いつもと違う雰囲気に調子に乗った生徒を見回るためだ。
実行委員会も前日は忙しいはずなんだが、委員会内でも下っ端な僕は雑用が相応しいってことなのか。
でも当日はきっと文化祭を楽しむことも出来ないし、これでちょうどいい。
ふらふらと、いつもは行かないような場所も見ていく。
「ん?」
教室の電気は煌々としているけど、とても静かな教室があった。
まだ準備に追われているところも多い中、準備はほとんど終わっているようだった。
「写真部かあ・・・」
校内の写真など、パネルにたくさんの写真がかけられていた。
教室の真ん中には大きなフレームがあって、見に来てくれた人が記念撮影できるようになっている。
見回りもしないといけないけど、少しならと自分に言い訳をして写真部の作品を見ていた。
「あの。」
そこには1年生のとき同じクラスだった奈々がいた。そういえば、奈々は写真部だった。
カーテンに隠れてわからなかったけど、どうやら窓を開けて外を見ていたらしい。
「あ、勝手に入ってごめん。まだ準備中だった?」
「準備はもう終わったんだー。陽太くんは実行委員のお仕事?」
「うん、校内の見回り。」
奈々とは同じクラスだったけど、別段仲が良いわけではない。
物静かなタイプで、不思議な雰囲気がある子だ。
でも時折見せる笑顔が、きゅんとするような・・・
わー!!!今のなし!今のなし!
「じゃあ、今は少しサボり中だね。」
「そうなっちゃうな・・・」
当然のことを奈々に指摘されて、照れるように頭をかくが、頷くしかない。
もう仕事に戻るしかないか。
「陽太くん、私も一緒に校内の見回りしてもいい?」
「え、どうして?」
「写真、撮りたいんだ。」
そう言って、奈々はカメラを持ち上げた。
「なるほどね、いいよ。行こう。」
学校の半分くらいは既に見ていたので、残りの半分を一緒に歩いていく。
奈々が真剣に写真を撮ったり、僕もはしゃぎ過ぎた生徒を注意したりしていくうちに大体は見回った。
最後に、僕のクラスにも顔を出すことにした。
僕のクラスの出し物は”そばやき”
要するに焼きそばなんだけど。
「あ、陽太!」
「おー、準備どう?」
「大半は終わったよ。」
クラスも準備は順調に終わったらしく、実行委員でほとんど手伝えなかった僕も少し安心する。
友達の翔がいて、みんなで焼きそばを食べていた。
「お前も一緒に食おうぜ!」
「おー、いいな。でも今、実行委員で見回りしてんだ。」
「あ~、大変だな。まあ、焼きそば持っていけよ。」
「さんきゅ。みんなも程々にして、明日に備えて帰れよ~」
翔が焼きそばを手荒くパックに入れてくれた。
こんなところで性格が出るな、と思うが、ありがたく受け取っておく。
教室を出ると、奈々はまた写真を撮っていた。
「こんな時間まで普段学校に残れないから、色々撮ってみたくなるの。」
「そっか。でもそろそろ腹減っただろ?焼きそばもらったから、一緒に食べようぜ。」
少し照れるように奈々は言った。
もう9時も近く、お互いお腹も空いたので、焼きそばを食べるために手頃な場所に移動する。
グラウンドの電灯を頼りに、近くの階段に腰を下ろした。
「陽太くんのクラスは、焼きそばやるんだね。」
「僕は全然参加できないんだけどね。焼きそばじゃなくて、そばやきなんだって。」
苦笑しながら、焼きそばのパックを開ける。
「そばやき?」
奈々が僕の肩に頭を乗せながら、聞く。
「(!!!)」
瞬間、どきどきした。
女の子の香りもする。
顔もきっと赤い。
「そばやきだよ。そこがこだわりみたい。」
内心は悟られないように、平然とした振りをする。
今が夜でよかったと心底思う。
「そうなんだ。写真に夢中でお腹空いてなかったけど、こうやって目の前にするとお腹空いちゃった。ありがとう!」
僕は奈々に焼きそばを渡した。
お腹が空いていたはずなのに、胸がいっぱいで僕は結局食べられなかった。




