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始まりはドクダミの香り ③

遅くなって本当にすみません!

アイディア協力:アセロラちゃん

「連れてきたわよーー!!」

緊迫した雰囲気は、突如開いたドアによってしばし途切れた。


「あぁ今のお嬢様マジ可愛……ってお前ら何やってんの!?」

「例の説明だよー。…あっそうだ!ジェームズが来たんだから、あたしより2人のをを見てもらった方が分かりやすいよね!ユリカ今あれ出来る?」

「ばっちりよ、任せて!」


三人の会話がさくさくと進んでいく間、雷は全く別のところに意識を持って行かれていた。

ドアから飛び込んできた人影のうち、明らかに変なのがいるのだ。一人目の少女と二人目の少年はまあわかる、問題は最後のやつである。何だあれは。

ダチョウのような大きな図体のそれ(走鳥)は、しかし普通見るような愛らしく円らな瞳とは それこそ怒りでオーバーヒート状態な母親が電話口で見せる驚異のボイス転調ほどかけ離れたガチムチ系イイ男の瞳で、彼のことをじっと見つめながら悠然とそこに佇んでいたのである。


「……おーーい、小鳥遊くんー?大丈夫ー?」

「あ…うん、えっ?」

訳の分からない珍生物に吹っ飛ばされていた雷の意識が、万穂子の声で引き戻される。心底不思議そうな顔で手をふる彼女に、この驚きの意味は分かりかねるようだった。

言葉にならない言葉を発したことをYesの代わりと受け取ったらしく、万穂子は扉側を指し示しすらすらと説明を続けた。


「あの子もあたし達みたいな《特技》の持ち主。どんな《特技》なのかは、多分見たらすぐ分かると思うよ」


もう一度3人…もとい2人と1匹のほうを振り返ると、何やら先程とは様子が違っていた。始めに入ってきた巻き髪の美少女が、例の鳥に触れながらリレーのクラウチングスタートの体制をとっている。鳥は全てを理解した顔で、離れていなさいと言わんばかりに隣の少年を首でいなした。


「……………」

「始まるよ。頑張って見てて」

(…頑張って?)


雷が聞き返そうとした瞬間、既視感のあるどす黒いオーラが少女を包む。ふっ、と閉ざした大きな瞳が再び見開かれたとき、そこに彼女の原形はなかった。

「えっ」

例の鳥の目が移っている!きめ細やかな白い肌に超絶ミスマッチな歴戦の(おとこ)の目。眉毛も太くなっている気がする、というか確実になっている。

変わったのは目ばかりではない。眉毛と同調して首筋、制服で覆われていない両手両脚、全身の体毛が心なしか濃ゆくなっていく。さらにさらに、細く綺麗だった脚が、みるみるうちに一般的な制服スカートに不似合いなムキムキマッチョのそれへと進化してゆき……

「うっおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


彼女は20メートルはある屋上の端から端、扉の前から雷たちがいる突き当たりまで、目にもとまらぬ速さですっ飛んできた。



「ね、分かったでしょ?ユリカの《特技》は速く走ることなんだよー!」

「……ああ、うん…」


もう何を聞いても無駄な気がして、とりあえず頷いておく。というかこの人、第3話始まってから放心しっぱなしである。


何時の間にか下半身ムキムキから元に戻った少女が閃き顏で微笑んだ。

「自己紹介、まだだったものね。混乱させちゃったかしら?わたしは…」

「ユリカ様!あの「必 要 な い わ 。今話の途中でしょう?」」

例の鳥を連れてやっとこちらに追いついた少年が、意図せず話の腰を折る形で口を挟んでしまう。少女は真っ青になった少年を機嫌悪そうに思いきり睨みつけた後、雷へと向き直った。

「わたしは鈴之宮ユリカ。小鳥遊くん…よね?遠くからお引越し、お疲れさま。万穂子とは幼馴染でこの地域には結構詳しいつもりだから、分からないことは何でも聞いてちょうだいね!」


「…ああ。よろしくな……」

一応答えはしたものの、こんな色々と謎すぎるし怖すぎるお嬢さんにあれこれ聞いて墓穴を掘る程雷は馬鹿ではない。隣で「キョヒられた…またお嬢様にキョヒられた……」と、膝を抱えて座り込んでいる少年に声をかけてみた。


「あー……自分、大丈夫か?」

「くすん、本日3回目だぜ…ん、おお。ありがとよ転校生」

「うん…あの早速で悪いねんけどさ、」


あの鳥は何なのか。あのムキムキマッチョは何なのか。この少年とさっきの少女の関係は何なのか……どう聞けばよいのか分からなかったので、1番シンプルに質問する。


「あそこのさ、鈴之宮さんやったか?

あの娘は何なん?」


すると少年はパッと顔を上げて、「よくぞ聞いてくれました」と元気よく立ち上がった。

「彼女は俺の仕えるご主人様にしてアイドルさ!その昔旦那様に執事としてユリカお嬢様の身の周りを任せられてからというもの、俺は彼女のごふぉあっ」

2人の話を聞きつけた例のお嬢様が、執事と名乗る少年の腹部に強烈な蹴りを入れる。その時の彼女の脚はやはりムキムキに見えた。

「ちょっと怜汰くん!そういう話は他の子にはしないでって言ったのに!!」

「…………スミマセン…」

腹部を押さえて痙攣しだした彼のもとへ慌てて駆け寄った。


「…我が人生に一片の悔い……な…し………」

「諦めんなしっかりせえ!!」

「多分大丈夫…いつものことだし」

「…いつものことなん?」

「お嬢様のことは悪く思わないでくれ……ちょっと過去のトラウマのせいで目立つことが嫌いなだけなんだ…」

(…それって執事(じぶんら)の存在全否定ちゃうか?)と思ったがさすがに言えないので、黙って肩を貸しておく。

「おおっ…見かけによらず優しいな転校生!

えーと小鳥遊だったか?俺は恐山怜汰、苗字長いから怜汰でいいぜ」

「ああ。俺のことも雷でええわ」


ぎこちなく微笑み返しながら、雷は未だ怒りの治まらない下半身ムキムキのお嬢様とそれを必死で止めようとする漢方薬の少女を、日常的にお嬢様にボコボコにされている執事の肩ごしにぼんやりと眺めていた。


誰かiPhoneでのダッシュの記号の出し方を教えてください。

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