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始まりはドクダミの香り ①


卒業式のあの感動にひきかえ、入学式とは実につまらないものだと思う。

小さな町だからか見知った顔ばかりが並んだ体育館には、最早「中学4年生の始業式」のようなゆっる〜い空気が漂っている。


そうなるとやはり皆

「退屈だ」という思いが強くなるわけで。

それが、小鳥遊雷には不都合極まりなかった。


退屈な話の途中誰が何を考えているかなど只の1学生には関係ないはずなのだが――彼に…否、彼のような人間にとっては違う。


生まれ持った彼の《特技》――言わば、思考透視能力。

今まではそれなりにうまく隠せてきたはずなのに、最近どうも調子が悪いのだ。

能力のON/OFFが利かないこの状況の中、彼は1人でノイズの嵐に耐え忍んでいるのだった。


(コレやから学校行くんは嫌やっつったのに……)


次の自己紹介の時間が終わったらもう当分授業はサボろう、彼はそう思った。


―^ω^―



「皆さんご入学おめでとうございます。私が1年C組の担任になったァ田中と言いまァす。いいですかァ、ターナーカですよー。よくある名前なので皆さん覚えやすいと思うんですけどもー。はーい」

(うぜぇ…)

(うぜぇ…)

(うぜぇ…)

(中年のくせに何若い子ぶってんだよ気色悪い…)

(気持ちは分かるがほんま止めてくれお前ら…)


それぞれの同じような思いが飛び交う1年C組、教室内。ちなみに分かると思うが最後のが雷である。


「それでですねェ気付いた生徒もいると思うのでっすっがァー、この町に今年から引っ越してきた生徒が1人いるんですねェー。はーい」


(あぁ、あいつか)

(え、そんな人いたっけな?)

(どこの子なんだろー)

(うっわぁ……)


ちなみに最後のが雷である。

彼はターナーカ先生に目配せをされて立ち上がっ…うわぁ目配せの仕方気持ちわりぃ!


「……小鳥遊雷。色々あってココに引っ越してきた。宜しく」

それだけ言うと、倒れ込むように再び椅子に座る。端から見ればかなり態度が悪く見えただろうが、今 彼はそれどころではないのだ。


(何あれ、感じ悪ーい)

(アイツには絶対関わりたくねーな)

(ふーん、結構イケメンじゃん!)

(面倒くさそ…多分問題児だなありゃ)

「えェー、それだけですかァー?まあいいです。皆さん仲良くしてあげましょうねー。はーい」

(あ〜でもやっぱこの先公のが関わりたくねぇ)

(うぜぇ…)

(マジうぜぇ…)

(何なんだよあの動きは…糞うぜぇ…)


頭が痛い……思わず額を抑える。



「……ん」


がふぁっ

がざざざざざ。

かん、かんっ


つんつん



つんつんつんつん



「…」



べしこーん!!!

「ぷげぁっ!?」


なんか思わず変な声が出た。あれは痛い。雷が一瞬頭痛も忘れて横を向くと


「これ、あげる」


そこには、何やら怪しげな緑色の粉末がたんまり入った袋を雷に向かって突きつける少女がいた。


「…何、これ」

「漢方薬」

「は?」

「朝晩、食後に大さじ一杯ずつね。あたまいたに効くから」

「…お、おぉ……」

「大丈夫だってー。ひいおばあちゃんに直接教えてもらって作ったんだから、効果は折り紙つきだよ!」

彼女はそう言って妙に誇らしげにウインクした。

特に他意はなく、単純に心配してくれただけらしい。

ここはありがたく頂戴することにする。


「……さんきゅ」

「うん」


まあ彼の頭痛は普通のものではないので、一般の薬では治らないのだろうが……。


(この感じ、ユリカの時と一緒だ…。

もしかして彼も《特技持ち》なのかな?)


突如、彼の脳内に少女の“声”が響き渡った。


(!?)

驚いて隣を見ると、さっきの少女が漢方薬(?)の袋をリュックに仕舞うところだった。


――女子にしてはがっしりした肩越しに見た彼女の顔は、薄く笑っているように見えた。






(面白くなりそうだね、あんちゃん)


すみません。調子に乗りました。

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