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プロローグ 春の日の朝


春。柔らかな風が、通学路にしては少し細い路地をふわりと吹き抜ける…。


恋物語の始まりをも予感させそうな爽やかな朝の風景だが

十色葉(といろば)町の朝は、こんな感じに平和に始まることはまあ、ない。


朝ご飯の塩むすびを口いっぱいに含んで、畑中万穂子(はたなか まほこ)はその路地を走っていた。

2つに結った…と言うより縛ったようなばさばさの髪に、そこかしこ土や藁にまみれた制服。

新入生とはとても思えない出で立ちだ。


新築の一軒家の角をくるりと曲がり広い道へ出た彼女は、

とある背中めがけてさらにスピードを上げた。


「ユリカ!」


自転車を止めて振り返った少女・鈴之宮(すずのみや)ユリカは、万穂子を見てニコッと笑んだ。


いたって普通で微笑ましい光景である。……ユリカの横にいる恭しい態度の男子生徒と数十台の見張り用高級車とヘリがなければの話だが。


「今日も凄いねー」

「うん…私はいいって言ったのに、パパが連れていけって聞かなくて」


苦笑する彼女。ネクタイの結び方が明らかに間違っているが、別に万穂子は気にしない。


「そっちも大変だね」

「万穂子は? 今日かなり遅かったけど」

「うん、代掻きの下準備に手間取っちゃって」

「大変ねー」



大手旅行会社社長の一人娘でありながら『お嬢様』扱いを嫌うユリカは、出来るだけの事は自分で頑張りながら過ごしている。

そんな彼女の専属執事――隣にいた男子生徒・恐山怜汰(おそれやま れいた)の扱いは、…必然的にわりと酷いものになる。


「ユリカ様!!慣れぬ通学で喉が渇かれたでしょう、お飲み物を「ああ、いらないわ」……(´・ω・`)」



物心ついたころからユリカを慕い焦がれている彼にとっては、やはり辛い仕打ちである。

肩を落とす怜汰を慰めてくれる者は、誰も居なかった……。



―――・Δ・―――


グシャッ。

持っていた地図をズボンのポケットにねじ込むと、少年は古びた校門をくぐった。


見慣れない顔に興味を持つ者、警戒する者。

生徒たちの「声」が彼の脳内で反響し、彼…小鳥遊雷たかなし らい)の気分をさらに不愉快にさせる。


(やっぱ高校生活も、面倒くさいことになりそうやな……)


校舎へ向かいながら、雷はひとり嘆息した。




―――二千某年4月。この十色葉高等学校で、新たな物語が始まろうとしていた。―――


これからよろしくお願いしますo(^-^)o

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