序
その昔、クムサの地には大きな河があった。
まるで龍が横たわっているかのように見えるその河は、度々氾濫を起こし、田畑を荒らし、人家を流し、人々を苦しめていた。
ある時、年若い巫女が河の主の声を聞いて、人々に告げた。
――河の主を『河伯』として崇め、貢ぎ物をしなさい。貢ぎ物は金、銀、玉。そして、娘。
生け贄を差し出せと言われた人々は色めき立った。
だが、巫女は静かに口を開く。
――生け贄には妾がなりましょう。
かくして、巫女は他の貢ぎ物と共に河底に沈められた。
すると、たちまち大地に溢れていた水が引き、河は一匹の大きな龍に姿を変えた。
龍は天高く舞い昇り、泳ぐようにクムサの昊を移動すると、やがて人里離れたオクチョンという地を住み処とした。
人々は龍に感謝し、巫女の言葉に従い、『河伯』として崇めた。
しばらく経って、人々の暮らしが豊かになったので、貢ぎ物の金銀玉を持ってオクチョンに出向くと、水が湧き出でるところに赤子が横たわっていた。
赤子が河伯と巫女の息子であると知ると、皆で敬うようにして育てることにした。
さらに歳月が過ぎて、ある年、クムサの地は大変な旱魃に見舞われた。
井戸が涸れ、人々が絶望した時、青年に成長していた河伯と巫女の子が、憎らしいほど澄んだ昊に向かって両腕を掲げた。
すると、雨雲が空を覆い、雨が降り始めた。
人々は喜び、その青年をクムサの王に据えたという。