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誰もいない家

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/09

先月、事故で両親を亡くした。

静まり返った家で、愛猫のぽけと二人きりの生活。

はずだった。

真夜中のキッチン。足元で威嚇するぽけと、暗闇の廊下から忍び寄る「何か」の気配。

わたしが息を潜めて恐れていたのは、一体誰だったのか——。

日常が怪異へと変貌する、短編ホラーをお楽しみください

 夜中に小腹が空いて、起きてしまった。時刻は午前3時だ。寝室は暗く、照明を点けるまでは何もさ見えなかった。

 わたしご起きた気配を感じたのか、突然、飼い猫のぽけ君が、足にまとわりついてきた。

 父と母を起こさないよう、静かにキッチンに向かった。冷蔵庫からペットボトル入りのミネラルウォーターをボトルに直接口をつけて飲んだ。小腹が空いていた。

 冷蔵庫の中には ベーコンと鶏卵しかなかった。

━━これでスクランブルドエッグでも作ろうかしら。

 そんなことを考えた直後にぽけがにゃーにゃーと鳴いて騒ぎ始めた。どうやら、ベーコンの匂いを嗅ぎつけたようだった。

 このままでは父や、母を起こしてしまう。

「シーッ! 静かに、ぽけ!」

あわててぽけの口を塞ごうと手を伸ばした。けれど、足元に視線を落とした瞬間、わたしの全身の血が凍りついた。

そこにいたのは、毛を逆立て、怒りと恐怖で威嚇するように喉を鳴らすぽけだった。彼の視線はベーコンではなく、わたしの背後――誰もいないはずの暗闇の廊下を鋭く見つめている。

「にゃあぁぁ……」

それはおねだりの鳴き声などではない。明らかな警戒の唸り声だった。

そのとき、ふと違和感が頭をよぎる。……父と母を起こさないように静かにキッチンへ向かった?

――待って。父と母は、先月事故で亡くなったはずだ。

じゃあ、わたしは今まで「誰」を起こさないように息を潜めていたのだろう。そして、暗闇の廊下からゆっくりと近づいてくる、足音のない気配の正体は――。

日常が一瞬で崩れ去る静かな絶望と、最後に明かされる狂気。短編ならではの切れ味を楽しんでいただけていたら幸いです。

最愛の家族を失った悲しみが生み出したのは、怪異そのものなのか、それとも主人公の壊れた心なのか……。読者の皆様の解釈で、この物語の「本当の恐怖」を補完していただければと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました

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