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最強ドラゴンだけどビビりなので勇者に倒してもらいます  作者: マコPON


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9/40

第9話 決意

第9話です。


勇者との関係が少し変わり、物語も一歩進みます。

北へ進み、やがて村が見えてきた。小さな集落。木造の家が並び、煙がゆらゆらと上がっている。


(……普通だな)


 戦場でもなく、魔物の気配も薄い。ただの“人の暮らし”。


「少し寄るぞ」


 勇者が言う。


(寄る?)


 目的地じゃないはずだ。


「困ってる人がいるかもしれない」


 当然のように言う。


(……マジか)


 魔王を倒す旅。その途中で、わざわざ足を止める。


 勇者は迷いなく村人へ声をかける。「何か困っていることはありませんか?」自然すぎる動きだった。


 話はすぐに始まる。壊れた柵、足りない物資。大きな問題ではない。


(……後回しでよくないか?)


 そう思う自分がいる。だが。


「分かりました。手伝います」


 即答だった。


 作業が始まり、仲間たちも動く。気づけば自分も手を動かしていた。


(なんでやってんだ俺)


 柵を直し、資材を運ぶ。力は抑えているが、それでも十分すぎる。


「助かるよ」


 村人が笑う。


(……こんなことで?)


 だが、その笑顔は本物だった。


 ふと勇者を見る。誰よりも楽しそうに笑っている。


(……ゲームと同じだ)


 前世でやっていたRPG。理想の勇者。そのままだった。


(……めっちゃ面白そうじゃん)


 怖さはある。でも、それ以上に。


(ワクワクしてきた)


 作業が終わる頃には日が傾いていた。


「ありがとう!」


 村人たちが頭を下げる。勇者は軽く手を振るだけだった。


 夜、少し離れた場所。


「なあ」


 勇者が声をかけてくる。


「お前、名前は?」


(……ないな)


「……ない」


 正直に答えると、勇者は少し笑った。


「じゃあ、俺がつけてもいいか?」


「……任せる」


 少し考えて、勇者が言う。


「――アルク」


(……アルク)


「なんか、お前に合ってる気がする」


(適当だろ)


 なのに、しっくりくる。


「これからはそう呼ぶ」


「……分かった」


 名前ができた。それだけなのに、少しだけ何かが変わる。


 勇者が空を見上げる。


「俺は魔王を倒す。でも、それだけじゃない」


 視線が戻る。


「目の前の人も救えない奴が、世界なんて救えるわけないだろ」


(……ああ)


 胸の奥が少し熱くなる。


(これだ)


 ゲームで見た“勇者”。それが目の前にいる。


(……最高じゃねぇか)


「……手伝う」


 勇者が少し驚く。


「魔王を倒す為の補助をする」


 言い切る。


 怖さはある。それでも。


(やってみたい)


 その気持ちの方が強かった。


「助かる」


 勇者は笑った。


 その夜、静かに決めた。


 自分はこの流れに乗る。


 勇者の側で、世界を見る。


 そして――


 少し離れて、巣へ戻る。


靄の中に戻ると、すぐに気配があった。


(……来てるな)


 岩陰から現れる影。見慣れた魔王軍の手下だ。


「偉大なる存在よ」


(その呼び方やめろ)


 だが今回は様子が違った。


「……はぁ」


(ため息?)


 明らかに疲れている。


「どうした」


 低く聞く。


「……現場は厳しいのです」


 ぽつりと漏れる言葉。


 そこから止まらなかった。


「勇者側との衝突回避命令、観測対象の増加、上層部の曖昧な指示……」


(あー……)


 完全に仕事の愚痴だった。


「我々は板挟みです」


(魔王軍も大変だな)


 ルミナが小声で言う。「かわいそうなのー」


 ノクスは冷静に分析する。「精神負荷増大」


(そのまま言うな)


 少しだけ考えて。


「……よくやっている」


 短く言う。


 一瞬、空気が止まる。


「……え?」


「任務を遂行している。それで十分だ」


 それだけ。


 だが。


 手下の表情が変わる。


「……ありがとうございます」


(そんな効く?)


 思った以上に刺さったらしい。


 少しだけ空気が柔らぐ。


「ところで」


 手下が言う。


「上層より、貴方に“謁見”の話が出ています」


(え)


「魔王様が、直接会いたいと」


(無理)


 即答レベルで無理。


(いや怖い怖い怖い)


 だが表には出さない。


「……時期ではない」


 低く返す。


「現状、観測を優先する」


(行きたくないだけ)


 手下は頷く。


「承知しました。無理にとは申しません」


(助かった)


 内心めちゃくちゃ安心する。


 少し沈黙。


 だが空気は悪くない。


 むしろ――


(仲良くなってきたな)


 敵でも味方でもない。


 でも、話せる相手。


 それだけで十分だった。


読んでいただきありがとうございます。


前編は勇者側、後編は魔王軍側と対比になる構成です。


引き続きよろしくお願いします。

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