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朝、起きたら縄文時代になっていた!?

※挿絵は生成AI画像です。

 ああ、よく寝た。……って、ここどこ? なんか、俺、穴倉みたいなとこで寝てた?あ、父さんに母さん。なに、ここ?


「おう、起きたか、ヨシ」

「おはよう、ヨシ」


 両親は俺を見てほほ笑んだが、俺はふたりの服装に目が行った。ふたりとも、ポンチョを腰で縛ったような服を着ていた。


「なんなの、その恰好? 縄文時代みたいじゃん」

「何時代だって?」父が言った。


 よく見ると、俺も同じ服装していた。家の中をよく見渡した。


 木で組んだ柱や梁、草ぶきの屋根、壁は土、というか地面。床にはむしろが敷いてあって、中央には囲炉裏? 焚火が燃えている。


「これって……」

 教科書で見た、『竪穴式住居』そのものじゃないか。どうなってんの?

 あ、あれ縄文土器じゃね? やっぱ縄文時代?


 ……考えるのやめた。こりゃ夢だ。きっと夢だ。どうせ夢だ。いいから、とりあえずこのまま生活しよう。


「さあ、行くか」父が背伸びをしながら言った。

「どこへ?」

「何言ってんだ、狩りに決まってるだろ。さ、用意して行くぞ」


 朝メシとかないの? いつもなら、トーストとコーヒーなのに……。 


 ──用意といっても、ふたりともただ槍をつかむだけだった。穂先が黒い石の槍だ。俺たちは外に出た。


 風が吹いている。

 

 さ、寒っ! なんだこの寒さは!? こんなポンチョで、この寒さに耐えられるか! 

せめてダウンジャケットでも欲しいぞ。


 外には、近所の人たちが迎えに来ていた。


「じゃ、行きますか」

 集団のなかで、一番有力者っぽい男がそう言うと、みんなで歩き出した。総勢、といっても、10人ほどだ。


 村を出て歩くと、すぐに山に入った。そこから、1時間、山中を歩き続けた。

「ちょ、ちょっと……、まっ……て」俺は肩で息をしていた。

「どうした? 体でも悪いのか?」父が不思議そうに言った。


 おかしい。これ、夢だろ。夢にしてはきついぞ。もしかして、現実? 俺、朝起きたら縄文人になったのか?


 そうこうしているうちに、皆が足を止めた。父に聞くと、狩場についたらしい。森の中に開けた場所があって、真ん中あたりに沼? いや湖かな。とにかく水場みたいなのがある。


 有力者風の男が何かジェスチャーをすると、他の男たちは林沿いに動いて、水場を三方から囲んだ。そしてそのまま息をひそめた。


 ………………


 待つこと30分ほど、獲物が現れた。ああ、そうか。水場に来るのを待ち伏せするのか。……て、あれ、なんだ?


 巨大なマンモスだった。ゆっくりと水場に近づくと、鼻で水を吸い、口に噴射した。その動作を繰り返している。


 ち、ちょ、ちょっとちょっと! まさかあれを狩るの? うそだろ? デカすぎだろ! モ〇ハンじゃあるまいし。それに、縄文時代の日本に、マンモスっているのか?


「行くぞ!」

 合図で、全員が一斉に飛び出した。俺を除いて。


 俺も、ワンテンポ遅れて飛び出した。行きたくなかったが、なんか、このまま狩りに参加しなかったら、村八分にされそうな気がしたからだ。


 人間たちとマンモスの格闘が、始まった。人間たちは槍を突き立て、マンモスの攻撃をかわす。マンモスは、踏みつけ、長い牙と鼻で人間たちを攻撃した。

 

 俺も、見よう見まねで戦ったが、ダメージをあたえられない。というか、当たらない。

なんで、こんなデカくて素早いんだ? ようやく、前足に槍が刺さると、マンモスの鼻が飛んできた。


 5~6メートルはふっ飛んだだろうか。痛い、というよりも、体がしびれて動けなかった。声も出ない。かろうじて呼吸ができた。

小学生の頃、チャリで自動車と接触事故をしたことがあったが、この衝撃はその時以来だ。


 俺が倒れている間にも、しばらく格闘がつづき、結局、マンモスは逃げた。


 誰かが軽くため息をついたが、皆、それほど気を落とすでもないようだ。太陽の位置から、もう正午を過ぎている。

 

 ──全員、帰路についた。俺は、父に肩を借りてなんとか歩いた。


 日が傾き始めていた。村に帰ったのは、夕方に近かった。父が他の者に挨拶し、ふたりとも『家』に帰った。


「おかえりなさい。どうでした?」母親は夕食の用意をしているようだ。

 父に、今日の一部始終を聞いたが、とくに俺の心配をする様子もなかった。


「さ、食事にしましょう」


 体は痛いが、腹がぺこぺこだった。みんなで火を囲むと、母が食事を置いてくれた。

 メニューは、魚、木の実、キノコ、野草、何かの肉だった。思ったよりは豪華だが、ああ、米が食べたい……。


「いただきまーす」言うなり、勢いよく食べ物を口に運んだ。


 ま、不味い。味がしない。こ、これが母さんの料理か?

 やばい、飲みこめない。せめて、醤油かマヨネーズがあれば……。でも、食べないと。

 無理やり飲みこんで、水で流し込んだ。これって、生水?

 

 ん? これ、なんだ? げ、何かの幼虫?


「ちょ、父さん、これ」幼虫を父に向けて突き出した。

「どうした? 貴重なタンパク源だぞ」

 そう言って幼虫をつまむと、ぽいと口に放り込み、くちゃくちゃと食した。おおおい、お前はベ〇・グ〇ルスか!


「さあ、寝るか」食事が終わってしばらくすると、父が言った。


 もう寝るの? って、漫画もなけりゃ、もちろんスマホもないし。寝る以外に()()ことないわな。それに、俺は疲れ切っていた。……グゥ。


◆◆◆


 翌朝、目が覚めると、全身に激痛が走った。思わず声を上げると、父が近づいてきた。心配するような様子もなく、呑気なものだった。


「か、体が、昨日の、あれで……」それだけ言うのがやっとだった。

「あーなるほど」あくまで呑気だった。


「その体じゃ、今日の狩りは無理だな」

 俺は心底ほっとした。誰があんなバケモノと戦えるか。ゲームの中だけで十分だ。


「じゃ、今日は女たちと一緒に、木の実でも取りに行ってこい」


 鬼か? 親父は。いや、縄文人は鬼か? 体中が痛くてたまらんのに!


 

 父親が出かけて行ったあとも、仰向けに寝そべっていると、入り口に誰かが来たようだ。

「ヨシくん、行くよ~?」女の子の声だ。


「ほら、迎えに来てくれたよ」母が言った。

 うう、行くしかないのか。痛みに耐えながら体を起こし、出ようとすると、母親が木の実を入れる袋を渡した。


 のろのろと出口に行くと、ドア……いや、筵をあげて外へ出た。そこには知っている女の子がいた。


「あ、愛子ちゃん?」

 彼女は、愛子……のはず。近所の子で、昔はよく一緒に遊んだもんだ。


「え、あたし、アイだよ? ヨシくん」

 やっぱり彼女だ。むむ、アイ、ヨシと呼ぶ仲なのか? 俺の名は芳樹よしきだが、ヨシと呼ぶのは両親くらいだ。彼女と木の実集めに行くのかな?


 ……と思ったが、外に出ると、5人の女がいた。そのうちひとりは知っている。愛子の母親だ。他の女たちは、赤ん坊がいるので、家に残っているそうだ。


「じゃあ、行こうか。ヨシくん、体、大丈夫だった?」

 愛子の母が言うと、他の女がクスクスと笑った。どうも、昨日のことは集落じゅうに広まっているらしい。縄文時代おそるべし。

あ、それは現代でもそうか。


「行くよ?」7人で出発した。俺は、最後尾だ。愛子、いやアイの後ろについて歩きだした。歩いているうちに、ようやく体が動くようになってきた。


 山の中を歩きながら、みんなで木の実や野草の採集を始めた。山歩きはきついが、狩りに比べれば、よっぽど楽だった。


 しばらく女たちと一緒に木の実を集め、それなりの量が集まると、昼食になった。彼女らは、めいめいに座り、木の実を詰めた袋と竹筒の水筒を出し、おしゃべりを始めた。


 俺も近くの岩に腰掛ると、アイが隣に座った。母親たちの会話のほとんどは、家庭のことだった。木の実は……不味い。スゲー苦い。俺は顔をしかめたが、みんな平気でポリポリ食べていた。


「ねえ、ヨシくん。あっちに木の実があるかもしれないの。でもちょっと高い樹だからさ、ヨシくん一緒に来てよ?」

「え? ああ、うん」

 俺が生返事をすると、アイは母親のほうに行って何か言っていた。母親はチラっと俺を見ると、うなずいた。


「じゃ、行こ」アイが俺の手を引っ張った。



 ──山中では、数十メートルも行くと、もう母親たちの姿は全く見えない。


「ここね」アイが樹を見上げた。たしかに高い樹だ。しかし。実はなっていないようだ。

「ああ、でも実がないね。たぶん猿かなんかが取ったんだろうね」


「知ってたよ」

「え? じゃあ、なんで……」


「ヨシくんとふたりっきりになるためだよ」


挿絵(By みてみん)


 お、俺と!? 実をいうと、俺は前からこの子にほのかな思いを寄せていた。小さい頃は仲良しだったが、最近は疎遠になっていた。そのくせ、近所なのでたまに見かけても、なんとなく口を利くのが嫌で、避けていた。


 どぎまぎしている俺をよそに、アイは目の前まで近づいて、まっすぐに俺をみつめた。

頬に三日月形の模様がある。刺青だろうか。

 アイの首飾りに目が行った。緑色の石と、削った動物の骨か貝を交互につなぎ合わせたものだ。


「そ、その首飾り、奇麗だね。どうしたの?」俺は、緊張に耐えられず、話題をそらしたつもりだったが、アイの表情が変わった。


「これ、ヨシくんにもらったんだよ。忘れたの?」

「え、あ、あの……」


 返事をするかしないかのうちに、彼女のビンタが飛んできた。


 俺は、2~3メートルはふっ飛び、地面に倒れた。な、なんだこの馬鹿力は? 


「だ、大丈夫?」自分で殴っておいて、アイが叫び、あわてて駆け寄った。

「ご、ごめん。まさか、そんなに……」俺を助け起こしながら、言った。どうも、彼女にとっては、軽く叩いただけのつもりらしい。

なんというパワー。縄文人おそるべし。


 俺は立ち上がると、咳払いして埃をはたいた。気を取り直して? 俺たちは再び向かいあった。さっきの続きだ。アイが顔を近づける……目の前まで来ると、目を閉じた。俺は、アイの両肩をつかんで顔を近づける。ふたりのくちびるが接近して、あと数センチでくっつく……。


 うっ!? く、く……、なんだこの臭いは? そういえば、みんな、なんか臭うな~とは思っていたが、間近まで来るとはっきり臭いがわかった。というか、俺自身もなんか臭う。

 し、しかし、ここでひるんでは男がすたる。



 ……………………



 母親たちの所へ帰ると、みんな意味ありげな微笑を浮かべていた。アイは、俺に寄り添って頬を赤らめた。


 休憩は終り、皆で村へ帰った。


 夕方、男たちは、カモシカを捕ってきたようだ。男たちの晴れやかで自慢げな表情に、女たちも声をあげて喜んだ。

 数人がかりでカモシカを解体していた。俺は、そばでその作業を眺めていた。なんという手際のよさ。さすが縄文人。


 その晩の食事は、村の中央でキャンプファイヤーみたいに火を焚いて、皆でカモシカの肉を焼いて食べた。肉を全員で分けたが、俺は、何もしてないから、と遠慮した。


「食料は村人全員で分け合うんだ。誰が捕ってもだ」父が言った。


 皆が満腹になると、火を囲んで、誰からともなく歌いだした。聞いたこともないようなメロディーとリズムだった。


 うたげが終ると、みんなそれぞれの家に帰った。去り際に、アイが手を振った。俺も振り返した。帰ると、やはりすることは寝るだけだ。


 暗闇のなかで母の寝息と父のいびきが聞こえた。俺は、今日も疲れていたが、いろいろあって、なかなか寝付けない。

 目をつむって考えていた。このまま、この縄文時代で生活できるのだろうか。

 


 ふと、ひらめいた。なぜ今まで気づかなかったのか。俺には、現代の知識があるじゃないか。その知識を使えば、皆の暮らしをもっとよくできる。

 なんせ彼らは、はっきり言って原始人だ。現代の知識をもっているのはチートそのものじゃないか。

 俺は妄想した。皆の生活を豊かにし、神のようにあがめられる姿を。


 よし、とりあえず『縄文時代 生活』でググれば……、って、スマホないんだっけ。……スマホってどうやって作るんだろ? いや、俺、100円ライターの作り方も知らないわ。



 ────数か月後。



 彼は、ヨシは、すっかり縄文の生活になじんでいた。体力もつき、さらに、わずかだが現代の知識を活かして、けっこう村の有力者になれた。

 ただ、彼の現代での生活の記憶は、徐々に薄まりつつあった。


 しかし、彼のほんとうの苦難は、まだこれからだった。


※この作品はフィクションです。縄文時代の日本にマンモスはいません。

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― 新着の感想 ―
えらく縄文人は流暢な現代語をしゃべるんだな――というお約束のツッコミをしておいてやろう。 どうせなら、はじめ縄文人らは「×★◇??@%♡*・゜•*¨*•.¸¸」みたいな描写があってもよかった? 縄文人…
マンモスがいたり、『たんぱく源』という言葉があったり、人々の言葉遣いや現代人と変わらないらしい顔つきからしても、異世界の縄文時代という感じですね! アリだな(๑•̀ㅂ•́)و✧ 現代人の知識があると…
 目指せDr.STONE!
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