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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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92.孤高の冒険者(1)

「どど、どうしてそんな話になるの!?」

「どうしてって……リオはもう立派に冒険者としてやっていける。だから、私は必要ない」


 慌てて聞き出すと、はっきりと言われた。


「えっ、じゃあ……初めからシグナさんは私を冒険者にしたら、別れようと思っていたってこと?」

「……そう」


 そうって……そう簡単に言ってくれちゃって。こっちはそれを聞かされて驚いているっていうのに。


「これで、リオは自由にダンジョンを動き回ると良い」

「良いって……まだまだ教えて欲しいところはあるよ?」

「それを、自分で見つけていくのが楽しいと思う。好きに冒険すればいい……」

「えっ、ちょっ! 私はシグナさんと冒険したいんだよ!」


 思わずその手を掴んで訴えた。一人で自由に冒険をするのもいい。けど、シグナさんと一緒に冒険するのが今となっては楽しみの一つになっていた。


 シグナさんはこちらを見下ろす。無表情で何を考えているか分からない。


「……私は私の冒険をする。だから、リオは必要ない」

「えっ……」

「今まで一人でやってきた。だから、これからも一人でやっていく。リオにはきっと相応しいパーティーメンバーがいると思う。そっちで、楽しくやって」


 シグナさんは手を振りほどくと、背を向けて去って行ってしまった。まさか、ここで別れることになるなんて思わなかった。


 私はただ呆然とシグナさんの背を見送ってしまった。


 ◇


「うーっ、どうしてこんな事に!?」


 家に帰ってベッドの上で転げまわる。良い感じに仲も深まったし、これから一緒にダンジョンの中を冒険すると思ったのに!


 ベッドの上で枕を抱きしめながら、私は足をばたばたさせた。


「うぅぅぅぅ……!」


 思い出すだけで、胸の奥がぐしゃぐしゃになる。頭の中に、さっきのシグナさんの顔が何度も浮かんできた。


『私は私の冒険をする。だから、リオは必要ない』


「必要ないって何それぇぇぇ……!」


 ごろごろと転がりながら、布団に顔を押し付ける。だって、あんな言い方ってある!?


 私、ちゃんと頑張ってたよね? 訓練だって、身体強化だって覚えたし! それなのに!


『今まで一人でやってきた。だから、これからも一人でやっていく』


「ぐぬぬぬぬ……!」


 悔しくて、枕をぎゅうっと握る。


 確かに、最初はそうだった。シグナさんはずっと一人で冒険していた。私は途中からついて行っただけだ。


 でも――。


「でもさぁ……!」


 私はベッドの上で起き上がった。


「一緒に冒険してたじゃん!」


 思わず声が出る。ダンジョンで訓練をして、採取をして、休憩して、身体強化の練習をして。全部、一緒にやってきたのに。


 それをいきなり、『リオは必要ない』なんて。


「ひどくない!?」


 またベッドに倒れ込んだ。ばたばたばたばた。足を振り回しながら悶える。


「うぅぅぅ……!」


 悔しい。すごく悔しい。だって、私は――。


「シグナさんと冒険するの、楽しかったのに……」


 ぽつりと呟く。


 ダンジョンで横に並んで歩く感じとか。訓練の時に真剣に話し合って、良く出来た時には褒めてくれる瞬間とか。ちょっとした休憩で、無言で水を飲む時間とか。


 そういうのが、なんだか好きだった。なのに。


『リオにはきっと相応しいパーティーメンバーがいると思う』


「いらないよそんなのぉ……!」


 枕に顔を押し付けて叫ぶ。誰かとパーティーを組むとか、そういう問題じゃない。私は――。


「シグナさんと冒険したいのに……!」


 思い出すのは、最後に見た背中。振り返りもしないで、そのまま去っていった後ろ姿。


「くぅぅぅぅ……!」


 ベッドの上で丸くなった。悔しい。悔しいけど、それ以上に。


「……あんな簡単に終わりって言われるの、納得いかない」


 むくっと起き上がる。胸の奥で、じわじわと何かが燃えていた。


「必要ないって……何それ」


 ぎゅっと拳を握る。


「そんなの、私が決めることじゃないの?」


 シグナさんは一方的に終わらせた。でも、私は――。


「まだ終わらせるつもりないんだけど」


 ◇


 その二日後。私は部屋の机に肘をつきながら、マップ機能を開いていた。光る点を探して、ゆっくりと画面を動かす。


「……あ」


 見つけた。シグナさんの位置は、いつもいるはずの冒険者ギルドには表示されていない。


「ということは……」


 私はマップを少し引いて、町の外へと視点を移す。そして、ダンジョンの場所を確認した。


「やっぱり」


 そこに、小さな光点があった。シグナさんだ。


「ダンジョンにいるんだ」


 思わず小さく呟く。あの人らしいと言えば、あの人らしい。二日前にあんな別れ方をしたのに、きっと何も気にせず、いつも通り魔物を倒しているんだろう。


 そう思うと、胸の奥が少しだけむずむずした。


「……絶対に」


 私はぎゅっと拳を握った。


「シグナさんに分からせてやるんだから」


 ぽつりと口に出す。


「私は、シグナさんと冒険がしたいって」


 ただのわがままかもしれない。でも。私は、諦めるつもりなんてない。だって――。


「まだ、全然認めてもらえてない気がするんだよね」


 小さく息を吐く。確かに、冒険者にはなれた。身体強化だって使えるようになった。ダンジョンでも戦った。


 でも。シグナさんの中では、私はまだ弟子みたいなものなんじゃないだろうか。


 守られる側。教えられる側。一緒に戦う存在じゃなくて、連れていってもらっているだけの存在。


「……それが悔しいんだよ」


 ぽつりと呟く。シグナさんが強いのは知っている。経験だって、実力だって、私よりずっと上だ。


 でも。だからって。


「最初から必要ないって決められるのは嫌」


 胸の奥が、じんわりと熱くなる。


「私は……」


 マップに映る光点をじっと見つめた。


「シグナさんに、ちゃんと認めてもらいたい」


 弟子でも、足手まといでもなくて。ちゃんと――。


「一緒に冒険する仲間だって、思ってほしい」


 そう思った瞬間、胸の奥の迷いがすっと消えた。もう決めた。


「よし」


 私は立ち上がる。


「ダンジョン行こう」


 逃げられたまま終わるなんて、絶対に嫌だ。シグナさんが一人で冒険するつもりでも――。


「追いついてみせるから」


 私は装備を手に取りながら、小さく笑った。

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