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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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91.意外と簡単?

「リオ……」


 低い声で名前を呼ばれた。振り向くと、シグナさんがこちらを睨みつけている。……うん、でも全然怖くない。


 いつもなら、あの鋭い目つきと威圧感でこっちが縮み上がりそうになるのに、今は違う。顔は真っ赤だし、耳はぴくぴく動いてるし、尻尾も落ち着かない様子で揺れている。


 どちらかと言えば、可愛い。


「へへっ、驚いた?」


 私が笑うと、シグナさんはぎゅっと眉を寄せた。


「……こういうのは気軽にやるものじゃない」

「えー、そうなの?」


 私は首を傾げる。


「シグナさんと私の仲だったら、別にいいと思うんだけどなぁ……」

「なっ……!」


 意味深っぽく言ってみると、シグナさんの耳がぴんっと立った。さっきまでの睨みもどこへやら、明らかに動揺している。


「そ、それは……その……」


 視線が泳いでいる。尻尾も落ち着きなくぶんぶん揺れている。うわぁ、凄い態度の変わりよう。


 さっきまで冷静に身体強化の説明をしていた人と同じとは思えない。これは見ていて楽しい。私はくすっと笑った。


「と、とにかく!」


 シグナさんが慌てたように話を切り替えた。


「これで身体強化は使えるようになった」

「あ、そうだ。身体強化!」


 完全に忘れてた。


「じゃあ、もう魔物と戦っても大丈夫だってこと?」

「そう」


 短く頷く。


「身体強化が使えれば、攻撃も防御も格段に上がる。今までより動きやすくなるはずだ」

「やったぁ!」


 私は思わずその場でぴょんと跳ねた。身体強化。これが出来るだけで戦い方の幅が一気に広がる。


「これでまた一段と冒険者っぽくなった!」


 拳を握って気合いを入れる。身体強化の感覚を思い出して、もう一度腕に魔力を流してみる。胸から肩へ、肩から腕へ、すっと流すイメージ。


 すると腕の中に、さっきと同じ力の感覚が広がった。


「おぉ……!」


 軽く拳を振ると、空気がビュッと鳴る。これは楽しい。


「リオ」

「ん?」


 シグナさんが少し真面目な顔で言った。


「身体強化が使えるようになったからといって、油断するな」

「えー?」

「魔物は甘くない」


 真剣な目だった。


「力が上がった分、気の緩みが出る。そこを突かれる時があるから」

「うっ……」


 それは確かに。


「だから、ちゃんと気を引き締める」


 そう言って、シグナさんは前を向いた。


「今日は実戦だ」

「実戦!」


 胸がわくわくしてくる。身体強化を覚えたばかりで、いきなり魔物と戦うなんて。ゲームみたいでちょっと楽しい。


 ……まあ、本当にゲームみたいなものなんだけど。私はすぐにシグナさんの後ろへ並んだ。


 そのまま草原を歩いて行き、森に向かう。


「ここにはゴブリンがいる。ゴブリンを倒すことが出来れば、冒険者の仲間入り」

「そうなの? じゃあ、絶対に倒す!」

「……その意気」


 ゴブリンを倒せば、冒険者の仲間入りかぁ。凄く、やる気が出てきた。


 森の中を進んでいくと、やがて奥の方から甲高い声が聞こえてきた。


「ギギッ……ギャッ……」


 独特の、耳に引っかかるような声。私は思わず足を止めた。


「あれって……」

「ゴブリンだ」


 シグナさんが短く答える。


「声の方向に一体いる。まずはあいつを相手にしてみろ」


 私はごくりと喉を鳴らした。ついに来た。初めての実戦だ。


 声のする方へ静かに進んでいくと、木の陰に小さな影が見えた。緑色の肌。背は低く、手には粗末な棍棒。間違いなく――ゴブリン。


「リオ、いける?」


 シグナさんが小声で聞く。


「うん、任せて!」


 私は剣を握り直した。心臓が少し早く打っている。でも、不思議と怖くはない。むしろ、胸の奥がわくわくしている。


 私はそのまま地面を蹴った。草を踏み分けて、ゴブリンへと飛び出す。


「ギッ!?」


 物音に気付いたゴブリンが振り向いた。小さな目がぎょろりとこちらを見て、すぐに棍棒を構える。


 私も剣を構えた。お互いに臨戦態勢。その瞬間――。


「身体強化!」


 胸の奥から魔力を流す。肩へ、腕へ、足へ。体中に魔力が広がっていく。体が一気に軽くなる。


 次の瞬間、ゴブリンが叫びながら突っ込んできた。


「ギャッ!」


 棍棒が振り上げられる。だけど――。


「遅い!」


 私は横にひらりと体を動かした。ブンッ、と空を切る棍棒。もう一度振り回してくる。


 でもそれも、少し体をずらすだけで簡単に避けられた。身体強化、凄い! 動きがはっきり見えるし、体も軽い。


 その隙を見て、私は剣を振った。


 シュッ。


 刃がゴブリンの体をかすめる。


「ギッ!?」


 だけど――。浅い。


「浅い。ちゃんと踏み込む」


 後ろからシグナさんの声が飛んできた。


「分かった!」


 私はもう一度構え直す。ゴブリンが怒ったように棍棒を振り上げてくる。それを横に避けて――今度は足を強く踏み込んだ。地面を蹴り、体ごと前に出る。


「はっ!」


 剣を大きく振り抜く。


 ザシュッ。


 手応えがあった。刃が深く食い込み、ゴブリンの体を切り裂く。


「ギ……ッ」


 ゴブリンの動きが止まった。そのままぐらりと揺れて――地面に倒れる。ぴくりとも動かない。


 ……終わった? 私は剣を構えたまま、しばらく様子を見る。


 でも、ゴブリンは起き上がらない。完全に倒したみたいだ。


「よくやった。これで、冒険者の仲間入りだ」

「やった!」


 私は思わず両手を上げた。


 初めての魔物討伐。しかも一人で倒せた。


「ありがとう、シグナさん!」


 振り向いてそう言うと、シグナさんは小さく笑った。


「いや、リオが頑張ったからだ」


 そう言いながら、倒れたゴブリンを確認する。その時だった。ピロン、と通知音が鳴った。


『実績解除:初めての魔物討伐』


『報酬:1000ポイント』


 おお……! 久々の実績君じゃないか! まさか、ランクアップイベントの最中にポイントが貰えるとは思わなかった。


 ランクアップイベントも簡単だったし、これでシグナさんのパラメーターも好きな人に!


 ……って、思ったけど何も来ないな。もしかして、まだランクアップイベントは終わっていない?


 すると、シグナさんが口を開く。


「じゃあ……これでリオともお別れ」


 ……ちょ、まっ! どうして、そうなるの!?


 まさか、こっちが本命のランクアップイベント!?

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― 新着の感想 ―
 もう一つ可能性があったので追記。  命の危険を味わいたがる、スリルジャンキーの可能性を見落としていましたわ。
 元日本人で、人に近い見た目のモノの命を奪う事に躊躇しない……なるほど。  コイツは元々サイコパス系か、楽しくなってテンションが上がったとか好きな人のためとかの理由があれば倫理観がブッ飛ぶ系の、アレな…
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