83.やっぱり運がいい
「リオ、一緒に帰ろう?」
「う、うん……」
笑顔で手を伸ばして、私の手をギュッと握る。いやいや、本当にパラメーターの力は凄いな。こんなに距離が近くなるなんて思ってもみなかった。
二人で仲良く手を繋いで教室を出て、廊下を歩き、学校の外に出る。他愛もない会話をして歩いていると、出入口の所にセリスさんが立っているのが見えた。
「あっ、セリスさん!」
「やぁ、リオ。授業、お疲れ様」
「セリスさんこそ、見回りお疲れ様!」
手を離してセリスさんに駆け寄ると、いつも通りに声をかけてくれる。
「今日も二人は仲がいいな。私も混ぜてくれないか?」
笑顔でそう言った。セリスさんの視線はルメルに向けられていて、ルメルの気持ちを確かめているようだ。
「えっと……騎士様のお邪魔になると思うので、私はいいです」
「全然邪魔じゃないぞ。私が邪魔をしているようなものだからな」
「そ、そんな!」
セリスさんを見ると、ルメルはいつも通りに慌てだした。まだ、ルメルは騎士という役職に引き気味だ。でも、以前よりは少しは話せるようになった気がする。
「三人で一緒に帰らないか? 人数が多いと楽しいと思うぞ」
「わ、私は恐縮しちゃうので……」
「騎士だからと、遠慮することはないぞ。こうして、リオも懐いてくれていることだし……」
「……いえ、やっぱりお邪魔は出来ません。じゃあ、リオ。私、先に帰るね。またね」
キリッと断ると、ルメルは手を振って走って行ってしまった。でも、途中で止まってちらりとこちらを見た。少し残念そうな顔をした。
その後姿をセリスさんは残念そうに見守る。
「また、今日もダメだったか……」
「でも、少しは長く話せたよ」
「そうだな、少しは仲良くなれたと思う。じゃあ、行こうか」
「うん!」
そうして、私たちは並んで歩き出した。
◇
他愛もない会話をして、通りを歩く。時折、聞こえる好感度や愛情度が上がる音を聞きながら、楽しい帰り道は続いていた。
だけど、ふと視線を向けると、店の前に人だかりが出来ていた光景を見つけた。
「あれ? 何かのセールかな?」
「あぁ、あの人だかりか? セールのようには見えないが……ん?」
人だかりに視線を向けた時、セリスさんの表情が引き締まる。
「ちょっと、寄っていってもいいか?」
「うん」
セリスさんがその人だかりに近づいていき、私もその後を追う。近づいていくと、人の怒鳴り声が聞こえた。どうやら、これはただ事ではないようだ。
「私は第二部隊所属の騎士、セリス・アルディアだ。何があった」
「あぁ、騎士様! 丁度いいところに!」
セリスさんがその間に割って入ると、店の奥から困り顔のおじさんが出てきた。
「商品が盗まれてしまったんです。それで、犯人を捕まえたんですが――」
「で、ですから。私は犯人じゃありません!」
すると、戸惑ったような女性の声が聞こえた。
もしかして、これは事件では? そう思っていると、ピロンと音が鳴り、ウィンドウが開く。
『クエスト発生! 盗まれた商品を探せ』
これは、突発クエストじゃないか! これ、中々発生しないんだよね。やっぱり、幸運が働いているってことでいいのかな?
じゃあ、これを達成したらポイントがザクザク! よし、セリスさんと一緒に事件を解決するぞ!
「いや、犯人はこいつだ! 商品の近くにいたのを見た!」
すると、他の男性が声を上げた。見る限り、どうやら店員のようだけど……。
「商品の近くにいましたが、取ってません!」
「落ち着け。疑うのであれば、証拠を探せばいい。まずはあなたの所持品を確認させてもらってもいいかな?」
「も、もちろんです! どこでも調べてください!」
セリスさんが間に入ると、話を仕切り始めた。女性は少し戸惑ったように、手を広げて見せた。
「ちなみに盗まれた物はなんだ?」
「宝石の付いた万年筆です。このお店で一番高いものになります」
「なるほど……。それなら、簡単に持ち運べそうだな。まずは、私が調べる。少し待っていてほしい」
そう言って、セリスさんは女性をお店の端に移動させた。まぁ、人の視線があるなかで、色々と調べるのははばかられるよね。
でも、これはクエスト。セリスさん頼みにしてしまうと、自分が達成したことにはならない。だから、私も解決の手助けをしてみよう。
これは物探しのクエスト。ということは、その物がどこにあるかが分かればクエスト達成になる。
手あたり次第に探すのは現実的じゃない。だから、こういう時にウィンドウの機能を使う。マップ機能だ。
これには、色んな物の在りかまで表示してくれる優れもの。だから、そのマップに宝石付きの万年筆の在りかを表示させれば一発ということだ。
ウィンドウを開いて、マップの画面を開く。そして、検索欄に文字を打ち込んで検索した。すると、すぐに表示される。
どうやら、宝石の付いた万年筆はこのお店の中にあるらしい。マップに表示された位置を店を見比べると――見つけた。
マップに表示された場所にいたのは、男性の店員だった。ほほーん、なるほど。女性を犯人に仕立て上げていた、ってところか。
だけど、それは私の前では無駄! この機能がある限り、私に見つけないものは――。
「そ、そんな!?」
その時、店の端にいた女性が声を上げた。何かと思い視線を向けると、セリスさんの手には宝石の付いた万年筆が握られていた。
……えっ? マップ表示は男性の店員だったけど、どうしてそこにあるの?




