79.ガチャ祭り後
「……え?」
さっきまであれだけ騒いでいたのに、今は逆に、頭の中が真っ白になった。画面の一番下。
【SSR(魔法:身体強化)】
その文字列が、やけにくっきりと、くっきりと表示されている。
「……」
震える指で、そっとウィンドウを閉じる。そして、もう一度開く。
【SSR(魔法:身体強化)】
「……」
スクロールする。上から順番に確認する。HR、N、HN、N、R、N、N、HN、R――そして最後。
【SSR(魔法:身体強化)】
「……変わらない」
当たり前だ。当たり前なんだけど。
「バグじゃない……よね?」
もう一度閉じて、もう一度開く。それでも。
【SSR(魔法:身体強化)】
「……ある」
ある。消えてない。夢じゃない。
「……」
じわ。じわじわと、実感が追いついてくる。SSR。上から二番目のレア。しかも、魔法。それも――身体強化。
「……」
ぶるぶるぶるぶる。手が震える。今度は興奮じゃない。理解が追いついた震え。
「……っ」
頬が引きつる。口角が、限界突破する。
「……っっっっしゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
完全爆発。嬉しさのあまりにベッドの上で跳ねた。
「SSR!! SSRだよ!? 出ちゃったよ!? 幸運500、ガチじゃん!! 本物じゃん!!」
枕を掴んでぶんぶん振る。
「ありがとう神様!! ありがとう過去の私!! ありがとう日課クエスト!! 十日間の努力、裏切らなかった!!」
もう一回見る。
【SSR(魔法:身体強化)】
「身体強化ってさぁ!? めちゃくちゃ当たりじゃない!? 戦闘系魔法じゃん!? 汎用性高いやつじゃん!? 絶対強いやつじゃん!!」
ごくり。喉が鳴る。魔力がないとか、筋力が平凡とか、そういうの。全部、覆せる可能性。
「やばい……やばいやばいやばい……」
また震える。でも今度は、歓喜で。
「幸運500……ありがとう……」
画面を胸に抱きしめる。
「私、今、人生の転換点に立ってない?」
ガチャの結果ひとつで、未来が変わる。そんなゲームみたいな話。でもこれは、現実。
「……ふふ」
笑いが止まらない。
「ふふふ……あはははははは!!」
もう一度ウィンドウを開き直す。何度見ても。何度確認しても。
【SSR(魔法:身体強化)】
そこにある。
「よし」
深呼吸。
「次の話はこの魔法、どう使いこなすかだよね?」
震えはまだ止まらない。でもそれ以上に、胸の奥が熱い。
「セリスさんかシグナさん、やりかた分からないかなぁ? 今度会った時に相談しなくっちゃ」
もし、知っていれば教えてもらえばいい。うん、そうしよう。
「じゃあ、今回のガチャの総括しますか。えーっと、能力値は160手に入ったね。その内、95使ったから、残りは65か」
さてさて、この能力値をどうするべきか? 運に振り分けたいところだけど、身体強化を手に入れた今、魔力に振りたいところだ。
今後、使うかもしれない能力。だったら、少しでも使えるようにしておきたい。
「よし。残りの65を魔力に振り分ける!」
【体力】68(年齢並み)
【魔力】146(低級)65上昇
【筋力】74(年齢並み)
【耐久】51(年齢並み)
【器用】68(年齢並み)
【敏捷】69(年齢並み)
【知力】494(賢明)
【運】500(幸運)
「あっ、コメントが変わった! ということは、才能なしよりも良くなったってことか」
うんうん、良い感じだ。これで、少しは身体強化が使えるようになっただろう。
「能力値はこれで終わりだね。じゃあ、ポイントは……1650。三十回分のガチャ、凄まじい……!」
ポイントもウハウハじゃないか!
「で、今の合計ポイントは……7705。おぉ、凄く貯まった! うぅ、ポイントが貯まっていくのが楽しい」
ポイントをパァッと使うのもいい。だけど、私は当初の計画を忘れない。えんぴつと消しゴムが広く認知されれば、きっと注文が山のように来る。
その時の為に、今はポイント貯めている状態なのだ。幸い、今は少しずつ認知が広がっていって、日に日に売れる量が増えていっている。
このままいけば、爆発的大ヒットも間違いない。だから、今は我慢だ。
「幸運になったことだし、良いことが沢山おきますように……」
これからがとても楽しみだ。




