78.ガチャ祭り
「ようやく、ガチャが貯まった……。これで、久しぶりにガチャが引ける!」
あれから、まるまる十日間。日常クエストをコツコツやって、ようやく十回分のガチャが貯まった。いつもはガチャの回数をガチャで引いていたから、まるまる十日間なんてかからなかった。
でも、前回はガチャ回数を引けなかったから、十日間を費やさなければならなかった。
「うぅ……寂しかったよ、ガチャ。君がいないと、生活に張りが出ない」
ガチャの画面を開き、画面に抱きついた。この日をどれだけ待ちわびたことか。毎日でもガチャは引きたいのに……。
「さて……。今回はどんな結果になるのでしょうか。頼む、ガチャ神! 私に神引きをさせてくれ!」
ウィンドウに向かって、手を合わせて拝む。心からの願いを唱えると、画面をタップした。
青い水晶が輝き、光の粒が飛び出してくる。くるくると宙を舞うと、カードとなって目の前に並んだ。
【HR】【N】【HN】【R】【N】【HN】【R】【HN】【N】【N】
「うーん……まぁまぁ、かな?」
【HR(能力値+30)】
【N(能力値+5)】
【HN(能力値+10)】
【R(ガチャ+10)】
【N(能力値+5)】
【HN(ポイント+100)】
【R(ポイント+300)】
【HN(能力値+10)】
【N(ポイント+50)】
【N(ポイント+50)】
「え、ちょっと待って!? 十回分当たった!? うそでしょ!? 画面バグってない!? ……ある。ちゃんとある。十回分! きたきたきた!! 神引き!! 今日の私、絶対ツイてる!!」
心臓がドクドク鳴ってる。いや、ドクドクどころじゃない。うるさい。手も震えてる。落ち着けって言ってるのに、指がもう次のボタンに行こうとしてる。
「いや待って、一回深呼吸……無理無理!! 落ち着けるわけないでしょこんなの!!」
十回だよ? しかも当たった十回。こんなの都市伝説だと思ってたのに!
「今日、伏線回収日だわ……。これはもう、引けって流れでしょ」
画面を見つめて、思わず手を合わせる。
「頼む……ここで来て……! 徳、積んできたよね!? ちゃんと!」
指先がボタンの上で止まる。
「……はぁ……もういい! これは引くしかない!」
口角が勝手に上がる。
「追い十連! いっけええええ!!」
画面に手を合わせて、もう一度画面をタップした。同じ演出が終わると、カードが並ぶ。
【N】【R】【N】【HN】【HR】【N】【N】【HN】【N】【N】
「……うーん、ちょっと渋い。でもでもでも、内容さんは?」
【N(ポイント+50)】
【R(ガチャ+10)】
【N(能力値+5)】
【HN(能力値+10)】
【HR(能力値+30)】
【N(能力値+5)】
【N(ポイント+50)】
【HN(能力値+10)】
【N(ポイント+50)】
【N(能力値+5)】
「はぁぁ!? ま、また当たった! 何、私……どんな徳を積んだわけ!? また、十回引けるとか……こんなに良いことってないから!」
ちょっと待って、落ち着こ? 無理無理無理。画面見てるだけで口角が勝手に上がるんだけど。心臓の音うるさすぎ。今、絶対変な笑い出てる。
「いや、さすがに連続は……って思うじゃん!? 思うけどさぁ!! 現実がそれを否定してくるんだけど!!」
また十回。追い十連、じゃなくて正規の十連。おかしい。運の帳尻どこ行った? 今頃、未来の私が泣いてる気がする。
「これはもう……引けってことだよね? 神様が行けって肩叩いてきてるよね?」
画面をじっと見つめて、意味もなく端末を両手で包む。
「よし……深呼吸……すぅ……はぁ……」
一拍。そして、思いつく。
「……待って。ここで入手した能力値を運に振ったら? 今、上がる能力値は125ある。今の私の運は405ある。あと95で500になるんだったら、コメントが変わる可能性がある」
……ここは使うべきでは。そして、次のガチャにかけるべきでは?
「よし、能力値95を運に振り分け!」
【体力】68(年齢並み)
【魔力】81(才能なし)
【筋力】74(年齢並み)
【耐久】51(年齢並み)
【器用】68(年齢並み)
【敏捷】69(年齢並み)
【知力】494(賢明)
【運】500(幸運)95上昇
「っしゃーーーーっ! 幸運にランクアップだー!」
思わずガッツポーズ。今のは完全にアウトな声量だった気がする。でも知らない。今はそれどころじゃない。
「やばい、やばいって……! 運500だよ!? キリ番だよ!? コメント変わったし!? 幸運だよ!?」
画面を二度見、三度見。間違いない。見間違いじゃない。さっきまでそこそこだった運が、今や堂々の幸運。
「これは……来る。絶対来る。今の私、世界に祝福されてる側の人間だから」
変な確信がある。根拠? ない。でも、今までの流れが全部そう言ってる。ガチャの神様、完全にこっち向いてる。
「いや待って、ここで引かなかったら一生後悔するやつだよね? あの時引いてたら……って言う未来が見えるもん」
指が震える。さっきまでの震えとは違う。これは期待と興奮で限界を迎えてるやつ。
「落ち着け……落ち着け私……。運が上がったからって、油断したら爆死するパターンも……」
一瞬だけ理性が顔を出す。
「……でもさ」
すぐに引っ込んだ。
「ここまで来て引かない選択肢、ある!? ないでしょ!!」
画面に表示されたガチャボタンを、じっと見つめる。
「運500。幸運。今の私に出来ないことなんてない気がするんだけど?」
ニヤニヤが止まらない。口元、完全に緩みきってる。
「よし……行くよ……? ここで外したら、それはそれで伝説だからね……!」
深呼吸――のつもりが、息が詰まる。
「……もういい! 引く!!」
――タップ。
「幸運500の力、見せてみなさいよ……!」
画面が切り替わる瞬間、心臓が跳ねた。
「さぁ……来い。次の神引き……!」
【HR】【N】【HN】【N】【R】【N】【N】【HN】【R】【SSR】
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!? ちょ、ちょっと待って待って待ってぇぇ!? SSR!? SSR来たぁぁぁぁぁぁ!!? なにこれ!? え、私、生きててよかったんだけど!? 幸運500!? 神か!? 神なの!? ありがとう!! マジでありがとう!! 肝心の中身はなんですかー!?」
【HR(ポイント+500)】
【N(ガチャ+3)】
【HN(能力値+10)】
【N(ポイント+50)】
【R(能力値+20)】
【N(能力値+5)】
【N(ポイント+50)】
【HN(ポイント+100)】
【R(ポイント+300)】
【SSR(魔法:身体強化)】
「なんか、見覚えのある魔法がキターーーーッ!!」




