77.第二段階目の恋愛イベント(3)
しばらく、二人で寄り添っていた。それ以上のことはしない。だって、今はそれで十分だと思ったから。
だけど、ウィンドウは待ってはくれない。
ピロロンッ!
『ルメル・エリアミルの愛情度ランクアップのイベントクリア』
……全く。このウィンドウと効果はいつも雰囲気を台無しにしてくれる。しっとりとした余韻が台無しじゃないか。
まぁ、それでも……無事にクリア出来たのは嬉しい。ウィンドウの愛情度欄を開き、ルメルの項目を確認する。
数値は40に達していて、パラメーターのコメントが「好きな人」に変わっていた。それを見て、ゾクゾクとした喜びが溢れてくる。
ということは、ルメルは完全に私のことを恋愛として好きって思ってくれているってことだよね? ふ、ふふふ。とうとうここまで来たか!
ゲームの中だったら、めちゃくちゃ嬉しい場面だ。それがリアルだったら、もっと嬉しんじゃない? 現にワクワクとした気持ちが止まらない。
どんな風に様子が変わるのか、どんな感情を向けてくるのか……。ゲームにはないリアルを感じることが出来そうで、楽しみすぎる。
ちらりと隣のルメルを見ると。まだ、顔を俯かせている。まだ、気持ちが整わないのかな? ここは無理やりにでも……いやいや、早まるな。ここで嫌な思いをさせて愛情度が下がったらどうする。
まだ、慎重になるべきだ。……でも、どんな反応になるのか気になりすぎる。あぁ、早く何か言ってくれないかな……。
期待の眼差しを向けていると、ルメルの体が少し動いた。動き出した腕が、私の腕に絡まる。それだけじゃなくて、手と手が重なり合ってギュッと握られた。
いつもにはない絡み。それだけで、鼓動がドキリとする。触れ合っている手のひらに意識が集中して、強くルメルを思ってしまいそうになった。
「私……」
その時、ボソリとルメルが口を開く。
「リオと仲良くなって良かった……」
今までにない声色。しっとりと甘い、シロップのような声。
「私……本当に仲の良い子っていなかったから。だから、本音を言い合える子が出来て、本当に嬉しい」
少しの寂しさを感じる言葉の後に、心からの喜びを感じる言葉が向けられた。だけど、それはいつもの明るいルメルの様子ではない。湿り気を帯びた思いのような気がする。
「本音を知ってもらうのって怖いけれど、凄く心地いいの。こんな気持ち初めて……」
握られた手が軽く開かれ、ゆっくりと絡めるようにまた握られる。そして、私の手に指先をこすり付けた。
その鈍い感触が何故かゾクゾクとした感触になって、体を巡る。感覚が研ぎ澄まされて、堪らない気持ちになる。
「きっと、リオになら……どんなことでも言えそう。どんな気持ちも伝えられそう」
肩に寄せた、頭をグリグリとこすり付けられる。ルメルを感じる場所が多くなって、体が緊張した。
えっ、えっ、えっ? これは、あの……ルメル? なんか、凄く甘くなっているような気がするんだけど……。
様子の変わったルメルを間近で感じて、鼓動が煩く鳴る。リアルで感じる好意に心が慣れていない。いや、こんなにしっとりと甘いのは――。
「これからは、リオに本当の気持ちを打ち明けるね。どんな些細な気持ちでも知ってもらいたいの」
そう言って、肩から頭を離し、顔をこちらに向けてきた。その顔は蕩けるような笑みが浮かんでいて、幸せに目が潤んでいる。
――甘い。ゲーム上で現れる一枚のスチル画のようだ。それが、リアルに出現して、ここが現実ではないかも……と現実逃避をしてしまう。
うわぁ……これは想像以上にヤバい。凄く、くる。ゲーム以上に感じてしまう。
しかも、王都一の美少女で大天使の蕩け切った笑顔だよ? これで、理性を保てている自分凄くない?
普通ならプッツンするよ。うわー、マジかー、うわー。
「えーっと……それは嬉しい、かな」
流石に無言だと悪いから、なんとか一言出した。本当に搾りだした言葉だから、嬉しくないと思うんだけど……。
ルメルは違った。パァッと明るく笑って、満面の笑みを向けてくれる。
「本当!? ふふっ、だったらリオだけに伝えるね」
うぅっ……笑顔が眩しい! 攻略するぜ、と息巻いていた自分自身が恥ずかしくなるくらいに、素直な笑顔だ!
「だったら、これからは二人きりの時間を増やそう? もっと、色々と話したいし、気持ちを知って欲しい」
「う、うん……」
「リオと話すの、もっともっと楽しくなってきちゃった。ねぇ、もう少し傍にいてもいい?」
そう言って、首を傾げてきた。あー、それは反則ですよ。それは自然と頷いてしまう魅力がありますよ。
すると、ルメルがまたすり寄ってくる。それだけで、凄く意識してしまうし、柔らかい感触にこちらまで蕩けてしまいそうだ。
……ランクアップイベント、すさまじい。




