表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/93

74.クッキー作り(2)

「小麦粉を振るって……」

「じゃあ、混ぜるのは私がやるね」


 私がボウルの上で丁寧に小麦粉を振るっていると、ヘラを手にしたルメルが気合の入った声を上げた。


 ボウルを手渡すと、ルメルは迷いのない手つきで材料を混ぜ始める。さすが料理店の娘だ。このあたりは、正直私よりもずっと手慣れている。


「この後は、形を棒状に整えてから切るんだよね?」

「うん、そうだよ」


 ……だけど、クッキーといえば型抜きだ。せっかくなら、あの可愛らしい形で食べてみたい。それが、転生者としてのささやかなこだわりでもある。


 ここはこっそり、ウィンドウを操作して――クッキーの型を取り寄せる。ポイントは1。全然問題ないし、二つ頼んでおこう。


 次の瞬間、手の中に銀色の型が現れた。ハートと星の形だ。……まぁ、無難だけど十分だろう。


「はい、混ぜ終わったよ」

「じゃあ、麺棒で伸ばそうか」

「えっ、どうして?」

「ほら、見て。この型で抜くんだよ」

「わっ……! なにこれ、可愛い!」


 型を見せると、ルメルはぱぁっと表情を輝かせた。嬉しそうに型を手に取り、指先で縁をなぞりながら、しげしげと眺めている。


「まるで、貴族が食べているお菓子みたいな形に出来そう。流石、道具屋の娘だね。こういうのも手に入っちゃうんだ」

「まぁね。じゃあ、これを使ってクッキーを作ろうか」


 まな板の上に生地を乗せ、棚から麺棒を取り出して転がしていく。生地は素直で、あっという間にちょうどいい薄さに伸びた。


「じゃあ、型を取っていこう」

「うん」


 ルメルはハートを、私は星を手に取って、生地に押し当てていく。単純な作業なのに、不思議と楽しい。隣で同じことをしているだけなのに、心が落ち着いていく。


 型を押すたびに、生地がきれいに抜けていく。ルメルが「次はここ!」なんて無邪気に声を上げるたび、自然と笑ってしまう自分がいる。


 時々、ルメルの手元を見て、ハートの形が少し歪んでいるのに気づいて。そっと位置を直してあげると、指先が触れて、ドキッとした。


 でも、どちらも何も言わなかった。ただ、顔を見合わせて、照れたように笑っただけ。


 星とハートが並んで増えていく光景は、思った以上に可愛くて。まるで、私たちそのものを並べているみたいで、頭が浮かされていくようだ。


 そして、型が抜き終わり、窯に入れて焼く。二人で窯の前でワクワクしながら待つ。すると、良い匂いが漂ってきて、二人でテンションを上げて焼き上がるのを待った。


 しばらくすると、時間が来た。


「開けるよ」

「どうかな? ちゃんと、出来ているかな?」


 二人でドキドキしながら、窯の扉を開ける。鉄板を掴んで外に出すと――。


「「わぁ!」」


 こんがりと焼けたクッキーが現れた。


「よし! 成功だね!」

「うん! これは上出来だよ」

「「イェイッ!」」


 鉄板をテーブルの上に置いて、二人で喜びのハイタッチをする。


「じゃあ、冷ましている間に紅茶でも入れようか」

「えっ、いいの?」

「もちろんだよ。クッキーには紅茶がなくっちゃね。ルメルのために、美味しい紅茶を入れてあげる」

「ふふっ、ありがと」


 そう言って、私はヤカンでお湯を沸かし、ティーポットを用意した。母さんが隠していた紅茶を拝借して、紅茶を入れる。その頃にはクッキーも冷めていて、皿に移し替えた。


「準備出来たよ。じゃあ、食べようか」

「うん! いただきます」

「いただきます」


 お互いに自分が作ったクッキーを手に取って食べる。サクッとした感触がしたあと、口の中でホロホロと崩れていく。


「うん、上手に出来てるね」

「美味しいね!」

「きっと、ルメルが上手に混ぜてくれたからだよ」

「そういうリオだって、丁寧に作業してくれたでしょ? だから、美味しいクッキーが出来たんだよ」


 美味しさにつられて、お互いにお互いを褒める。それだけで、気分は爆上がりして楽しい気分になる。だから、ちょっと調子に乗ってしまう。


「はい、ルメル。私のクッキー食べて。あーん」

「えっ?」


 意地悪な笑顔を向けて、星型のクッキーをルメルの口元に寄せた。すると、始めは良く分かっていなかったルメルだけど、事情が飲み込めて恥ずかしそうに頬を染めた。


「……自分で食べれるよ?」

「こういうのは、食べさせ合うのが美味しいじゃん。だから、あーん」

「……あーん」


 照れ臭そうに口を開けた。その中にクッキーを放り込むと、ルメルが照れた様子で食べる。その光景だけで、ごちそうさまでした! と、声を大にして言いたい。


「どう? 普通に食べるよりも美味しく感じるでしょ?」

「うぅ、こういう時ってどう答えればいいの?」

「素直な気持ちでいいと思うよ? で、どう?」

「お、美味しいよ……」


 ちょっと崩れた精一杯の笑顔を見せてくれる。ふっふっふっ、少しは感情を揺さぶることが出来たかな? あー、困っているルメルも可愛いなー!


「もう、リオばっかり……ずるい。わ、私もっ! はい、あーん!」


 少し頬を膨らませて、私と同じように食べさせようとする。目の前に差し出されたハート型のクッキー。それを見た後、すぐに口の中に入れた。


「あっ……」

「うん、美味しいよ! ありがとね、ルメル」

「ぜ、全然照れてない!」

「そりゃあ、こうくると思っていたからね。事前に心の準備が出来ていたのだよ」

「……リオ、ずるい」


 そう言って膨れるルメルを見て、可笑しくなって笑ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ