68.攻略法を探る(1)
「シグナさん、今日もよろしく!」
「……あぁ」
翌日、冒険者ギルドにシグナさんがいると分かると、私はすぐに会いに行った。どうやら今日は手が空いていたらしく、成り行きで一緒にダンジョンへ向かうことになった。
さて、昨日考えたことを、今日こそ試す時だ。問題は、どうやって切り出すか、だけど。
シグナさんは冒険者だ。なら、冒険者に関係する話題で攻めるのが自然だろうか。
……けれど、今までも冒険者についての話は何度かしてきた。それでパラメーターが大きく動いたことは、一度もなかった。
つまり、ただ話すだけではダメ、ということだ。
となると、次に考えられるのは――行動で示す、か。冒険者らしい行動を取れば、何か反応があるのかもしれない。
でも、冒険者らしいこと、って何だろう。
私はまだ冒険者になったばかりだ。今は魔物に遭遇した時の対処法を教わっている段階で、本格的な冒険に出るには、もう少し時間がかかりそうだった。
体を鍛えることも考えたけれど、それはもう試している。あの時も、特別パラメーターが変化する様子はなかった。つまり、鍛錬だけではシグナさんは反応しない。
「……うーん」
そうなると、今日は鍛錬以外の何かを試す必要がある。冒険者らしさを、別の形で示す方法。それを見つけられるかどうかが、鍵になりそうだ。
「……なんか悩んでる?」
「え? まぁ、ね」
「何かあった? 話を聞く」
すると、私の様子を不審に思ったのかシグナさんが話しかけてきた。なんと答えていいか迷う。
「えーっと……なんか冒険者らしいことをしたいなって思って」
「……なるほど。鍛錬だけじゃ飽きてきたってこと?」
「まぁ、そんなところ」
素直に言ってみると、シグナさんがしばらく黙り込んだ。一体、何を考えているのか……。黙って待っていると――。
「だったら、今日は色んな所を見て回ろうか?」
「えっ? いいの? だって、魔物がいるから危ないんでしょ?」
「弱い魔物がいるところしかいかないから大丈夫。それに、リオは私が守る」
凄く頼もしいことを行ってくれる。Aランクの冒険者が傍にいてくれるんだから、危険なことなんてないよね?
「だったら、今日は色んな所を見て回りたいな。その中で、冒険者について色々と教えてくれると嬉しい」
「なら、そうしよう」
ここで、冒険者らしいことをして、シグナさんの攻略法を見つけよう。
◇
始まりの草原から歩いてしばらくすると、川にたどり着いた。水質はとても良くて、光に反射してキラキラと光っている。
「わぁ! こんなところがあるんだね!」
「先に行けば、この何十倍もの大きな川がある」
「そうなんだ。いつか見てみたいなぁ」
現実世界でもここまで綺麗な川はないんじゃないか? っていうくらいに綺麗な川だ。こんなに綺麗だと遊びたくなるけれど、今は我慢だ。
「初心者は良く、この川の周辺で食料集めをしている。川辺に色んな食べ物が生っていたり、埋まっていたりするんだ」
「へぇ、そうなんだ。シグナさんもやっていたの?」
「最初の頃、少しだけ」
なるほど、ここでの食料集めは冒険者の誰もが通る道ってことか。だったら、私もやってみたらいいかも。冒険者らしい事だし、もしかしたら頑張るとシグナさんのパラメーターが特別に変わる可能性が……。
「だったら、私もやってみてもいい?」
「もちろん」
よし、ここで沢山の食料を取って、シグナさんを驚かせよう。そしたら、見直してくれてパラメーターが一気に変化するかも。
私は早速、川辺を歩き出した。川辺には色んなものが生えている。見慣れない草はもちろんのこと、花もあったりする。低木がちらほらと生えていると思ったら、普通の大きな木も生えている。
この中から、食料を探せと言われたら難しいかもしれない。何かヒントみたいなものがあればいいんだけど、何かあったかなぁ?
そうだ。マップ機能で食料が表示してくれるっていう機能はないだろうか? 詳しくどこに何があるか分かれば、採取は簡単だ。
早速、ウィンドウのマップの項目を開く。マップはダンジョン内も映してくれて、とても便利だ。だけど、そこには私の欲しい情報は載っていなかった。
ということは、ここで神様の出番だ。要望メールにマップに詳細を表示してくれるように書いて送った。しばらく待つと、ウィンドウが開く。
『マップに詳細表示機能が追加されました』
流石、神様。心の中で感謝をすると、すぐにマップを開く。すると、マップにはどこに何があるのか分かりやすく表示されてあった。
これを見れば、どこに何があるのか一目瞭然。私はそのマップに従い、川辺を歩き始めた。
一つ目の表示が示した場所に行くと、そこには低木が生えていた。その低木には五センチ程度の赤い実が生っているのを見つけた。
「シグナさん、見つけたよ」
「早いな。……あれはクレイズの実だな。甘酸っぱくて美味しい、ダンジョン産の果物だ」
「へぇ、これがダンジョン産の果物」
低木に近づき、その実をもぎ取る。
「食べてみたら?」
その一声に、私は果実を口に入れた。噛むとジュワッと果汁があふれ、甘酸っぱい風味が口いっぱいに広がった。
「うん、美味しい!」
「初心者の冒険者はこの果実を収穫して、冒険者ギルドに売るのが恒例になっていた。だから、リオもそうするといい」
「分かった、そうする!」
私は持ってきた袋を広げると、中にクレイズの実をいっぱいに詰め込んだ。ぎっしりと袋の中がいっぱいになると、それをシグナさんに見せる。
「見て! こんなに採れたよ!」
「リオ、良くやった」
すると、シグナさんが頭を撫でてくれる。その時、通知音が響いた。
『シグナ・ヴォルグ 好感度1アップ』
あー! このやり方はいつも通りっていうことか! 冒険者らしいことをしたけれど、これじゃあシグナさんの心を動かすには足りなかったというわけか。
もっと、頑張りが必要なのか。それとも、別のことなのか。シグナさんの攻略の糸口を探すのは、難しそうだ。




