67.攻略法がある?
ピロン。
『神様の好感度2アップ。神様の愛情度2アップ』
今日の出来事への感謝を込めて、神様にメッセージを送ったら、ほとんど間を置かずに反応が返ってきた。
……相変わらず早い。
というか、この神様、ちょろすぎない? 本当に大丈夫?
「神様の好感度とか愛情度が上がると……どうなるんだろう?」
まさか、神様が降臨するとか? いや、それはそれで大事件だよね。世界的に騒動になるし、絶対に面倒なことになる気がする。
だったら、あんまり上げない方がいいのかも……? そう思った直後、別の考えが浮かぶ。
でも、愛情度が上がる相手って、そう多くない。せっかく上がる対象なんだから、上げられるなら上げておきたい気もする。
……完全にゲーム脳だ。
数値が表示されると、どうしても先が気になってしまう。どんなイベントが発生するのか。何か特別な展開が待っているのか。
その先を見ずに止める、なんて選択肢は正直、出来そうになかった。
「やっぱり、攻略は楽しい。この先が気になって仕方ないなぁ」
ゲームをリアルで体験出来るってことは、そうそうない。だから、リアルが破綻しない程度にこのゲーム感覚を楽しんでいきたい。
それに今日、大きなヒントを手に入れたような気がする。
「今日のセリスさん、凄いパラメーターが上がったなぁ……。毎回、あのくらいに上がってくれれば、もっと楽しいのに」
思い出すのは帰り道。一交流を終えた後に上がったパラメーターの数値が飛び抜けて多かった。本当に未だかつてないほどの数値の上がりようで、とても驚いた。
「何が良かったんだろう……」
腕を組んで考える。きっかけはきっと、誘拐事件を解決したことによるものだと思う。
もしかして、何か事件が起こって、それを解決すれば上がるパラメーターが増えるとか? だけど、他にも事件が起こった時は上がり幅はそんなに大きくなかった。
単純に事件を解決したから。それだけじゃない気がする。私はベッドに仰向けになり、天井を見つめながら思考を整理する。
「事件の規模? 関わった時間? それとも危険度……?」
誘拐事件は確かに大きい出来事だった。被害者もいて、加害者も明確で、結果もはっきりしている。けれど、それだけなら以前にも似たような出来事はあったはずだ。にもかかわらず、今回だけ数値の跳ね上がり方が異常だった。
じゃあ、何が違った?
「……セリスさんの、心?」
ふと、そんな答えが浮かぶ。
セリスさんが語ってくれた言葉を思い返す。私の行動を褒めてくれたあの時の内容。それは、彼女自身が大切にしている価値観と、ぴたりと重なっていた。
騎士として生きることを選び、騎士らしい在り方を何よりも尊ぶセリスさん。その彼女の前で、私が事件解決に動いた理由や姿勢は確かに、騎士の心に沿ったものだったはずだ。
「……騎士らしいことをしたから、パラメーターが大きく上がった……?」
ただ事件を解決しただけじゃない。その人が大切にしている信念や生き方に寄り添った行動を取ったからこそ、パラメーターが強く反応したんじゃないだろうか。
騎士であるセリスさんには、騎士の心を持って向き合った。だからこそ、表面的な好意や、いつもの軽い口説き文句では届かない、心の奥にまで踏み込めた。
「……それなら、今回の数値の跳ね上がりも納得だ」
単なる好感度上げじゃない。その人らしさを理解して、それに応える行動をした時、初めて大きく心が動く。
「なるほど……セリスさんの場合は、騎士の心をくすぐる行動をすれば、パラメーターが一気に変化する、ってことか」
数字の裏にある条件が、少しだけ見えた気がした。
「なら、セリスさんを攻略する鍵は騎士っていうことになるか。うーん、難しい鍵だなぁ。騎士かぁ……」
毎日を楽しく生きているだけの私に騎士を理解して、セリスさんの心を動かすことは可能だろうか? だけど、この攻略法をもってすれば、セリスさんを落とせるような気がする。
……待てよ。セリスさんだけじゃなくて、ルメルもシグナさんもこの方法で攻略すればいいのでは?
ルメルを攻略するカギは……他人との交友と料理。シグナさんは冒険者。きっと、この方向性で攻めていけば、パラメーターにも変化が現れるはずだ。
やってみる価値はある。よし、明日は学校が休みだし、シグナさんが冒険者ギルドにいたら、速攻で会いに行こう。
でも、冒険者の関連ってどんなことをすればいいのだろう? 冒険者の心っていうのも分からないしなぁ……。
偶然に見つけた法則でも、それを他の誰かに適用するのは難しい。きっと、その人にはその人の攻略法っていうのがあると思うんだよね。
どんなことをすれば、パラメーターが劇的に変わってくれるだろうか?




