表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/73

66.ものすごい上がった

「お母さん! お父さん!」


 誘拐されていた子供の家を訪ね、玄関先に姿を現した両親の顔を見た瞬間、ザムズは弾かれたように駆け出した。そのまま勢いよく抱きつく。


「おぉ……ザムズ! よく無事で……!」

「本当に……どれだけ心配したことか……!」


 両親は声を震わせながら、我が子を強く抱きしめ返した。失われていた時間を埋めるように、三人はしばらく離れようとしない。玄関先には、言葉よりも雄弁な安堵と喜びが満ちていた。


 感動の再会がひと段落した頃、父親がそっと視線をこちらへ向ける。


「あの……失礼ですが、どうして皆さんがこの子を? 誘拐されたと聞いていたのですが……」

「実はな。誘拐の現場をこの子が目撃して、すぐに知らせてくれたんだ」


 セリスさんが簡潔に事情を説明すると、父親は驚いたように目を見開き、すぐに深く頭を下げた。


「そうだったんですか……! 君が知らせてくれたおかげで、息子は無事に戻ってきました。本当にありがとう」

「ありがとうございます……心から感謝します……」


 母親もまた、涙ぐみながら何度も礼を述べる。その言葉一つ一つが、胸に温かく染み込んできた。


 助けられて、本当によかった。そう思わずにはいられない、穏やかな帰還のひと幕だった。


「犯人はどうなったんですか?」

「犯人はこちらで確保している。すでに王都警備隊へ引き渡した」


 セリスさんの言葉に合わせるように、私たちの背後で控えていた数名の人物が一歩前に出た。統一された装備に、引き締まった佇まい。事前に連絡を入れていた、王都警備隊の面々だ。


 その中から、一人の男性が代表として前へ進み出る。年若くはないが、落ち着いた雰囲気をまとった人物だった。


「王都警備隊を代表して、ご挨拶いたします。今回の件で多大なご心配をおかけしました」


 そう言って、彼は深々と頭を下げる。


「お子様は無事に保護され、犯人は身柄を確保しております。現在、詳しい事情を確認している最中です」

「……そうですか……」


 父親は胸をなで下ろすように息を吐き、母親はザムズを抱き寄せたまま、何度も頷いていた。


「つきましては、誘拐の経緯や保護に至るまでの状況を、改めて詳しくお伺いしたく思います」

「よろしければ、一度、王都警備隊の詰所までお越しいただけますでしょうか」


 丁寧だが、職務としての確かな重みを含んだ言葉だった。両親は顔を見合わせ、短く言葉を交わすと、揃って頷く。


「分かりました。必要なことでしたら、何でもお話しします」

「この子のためにも……お願いします」


 そう答える夫妻の表情には、不安よりも、ようやく事態が収束へ向かうことへの安堵が浮かんでいた。


 こうして、事件は終息へと向かっていった。


 ◇


「セリスさん、今日はありがとうございました」


 帰り道。通りを歩きながら、私は隣を歩くセリスさんにそう告げた。


「私の話を信じてくれて、嬉しかった」


 子供が誘拐された、という突拍子もない話。それを疑うことなく受け止め、迷いなく行動してくれた。言葉だけじゃない、その誠実な背中が、何より心強かった。


「いや、こちらこそ礼を言わせてほしい」


 セリスさんは足を緩め、穏やかな笑みを浮かべる。


「正直に話してくれて、ありがとう。君のおかげで事件は解決し、市民に平和が戻った」


 逆に感謝されて、胸がきゅっとなる。その横顔は優しくて、それでいて凛としていて。一瞬、騎士としての顔が垣間見えた。


「私はね、騎士は剣を振るうだけの存在じゃないと思っている。市民の暮らしを守り、声なき不安に耳を傾ける。それもまた、騎士の役目だ」


 真っ直ぐな言葉だった。誇りと信念が、静かに滲んでいる。


「今回の件で……少しだけ、目指していた騎士に近づけた気がする。こうして平和が守られたことが、本当に嬉しいんだ」


 どこまでも騎士。その在り方が、眩しくて、少しだけ胸が熱くなる。


「それに……何より嬉しかったのは」


 セリスさんは、ふと私の方を見た。


「リオが、正直に話してくれたことだ」

「……私が?」

「ああ。自分のスキルのことまで明かして、必死に信じてもらおうとしただろう。その心意気は、とても立派だ」

「そ、そんな……」


 思いがけない言葉に、顔が熱くなる。褒められるなんて、考えてもいなかった。思わず視線を落としてしまう。


 すると、歩みが止まった。


「リオ」


 名を呼ばれて、はっと顔を上げる。


 すぐ近くに、セリスさんがいた。柔らかく、それでいて真剣な眼差しが、まっすぐ私を映している。


「顔を上げて。君は、本当に立派なことをしたんだ」


 その言葉は、剣よりも強く、胸の奥に届いた。


 守られているのに、同時に認められている。そんな不思議な温もりが、心に静かに広がっていった。


「私はそんなリオが、誇らしい」


 その言葉を口にした瞬間、セリスさんの表情がふっと緩んだ。いつも見せる穏やかな微笑みとも、騎士としての凛とした顔とも違う。心からの、まぶしいほどの笑顔だった。


「恐怖も、不安もあったはずだ。それでも逃げずに、真っ直ぐ向き合った。誰かを救うために、自分に出来ることを考え、行動した……それは、立派な勇気だ」


 セリスさんの声は柔らかいのに、芯があった。一言一言が、私の胸に静かに積み重なっていく。


「剣を持たずとも、鎧を纏わずとも。今日のリオは、騎士みたいに強い心で、この事件に挑んでいた」


 その言葉と同時に、また一歩、距離が近づく。なんだか恥ずかしい……。視線が絡み、逃げ場がなくなる。


 ……ずるい。


 そんな顔で、そんなふうに言われたら。胸の奥が、熱くなって、落ち着かなくなる。


「……セ、セリスさん……」


 うまく言葉が出てこない。視線を逸らそうとするのに、なぜか目が離せなかった。


「ふふ」


 小さく笑う声が、やけに近い。


「その顔だ。そうやって戸惑いながらも、真剣に向き合うところが私は好きだよ」


 不意打ちの言葉に、思考が一瞬、止まる。


「え……?」


 意味を理解するより早く、頬が熱を帯びていくのが分かった。


「……あ」


 しまった、と言うように、セリスさんは少しだけ視線を逸らし、咳払いを一つ。


「こ、これは……騎士としての評価、だからな? だが……今日のことは、きっと忘れない。リオがその強い心を見せてくれた大事な日だからな」


 そう言って、もう一度だけ、優しく微笑む。


 ……騎士様、その笑顔は反則です。


 意識が奪われていた、その時。


 ピロン


 いつものように通知音が鳴り、ウィンドウが開く。


『セリス・アルディア 好感度3アップ、愛情度5アップ』


 ありえないくらいにパラメーターが上がって、思わず息を呑んだ。なんか、凄い上がった!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ