58.魔法
「頼む! 良いの来い、良いの来い!」
ウィンドウに向かって、手を合わせて拝む。心からの願いを唱えると、画面をタップした。
青い水晶が輝き、光の粒が飛び出してくる。くるくると宙を舞うと、カードとなって目の前に並んだ。
【N】【N】【HR】【HN】【N】【HN】【R】【N】【R】【HR】
「ファッ!? 今回もHRが二つだと! Rも二つある!」
これは……! 絶対、運のお陰だ! じゃあ、一体何が当たったっていうんだ!?
【N(能力値+5)】
【N(ポイント+50)】
【HR(ポイント+500)】
【HN(ポイント+100)】
【N(能力値+5)】
【HN(能力値+10】
【R(能力値+20)】
【N(ポイント+50)】
【R(能力値+20)】
【HR(乾燥魔法)】
「なんか、魔法キター!」
とうとう! 愛嬌以来の能力が来た!
すぐにウィンドウを開き、自分の能力の項目を開く。すると、魔法の欄にちゃんと乾燥魔法が載ってあるのを見た。
「やったー! これで、私も魔法使い! どんな魔法でも、嬉しい!」
ガチャで魔法の能力が貰えるなんて、なんて良い機能なんだ! 努力もせずに魔法が備わってくれるんだから、やっぱり運は私を強くしてくれる!
「いやー、乾燥魔法か。どんな使い方があるんだろう?」
腕組をして考える。洗濯物を一瞬で乾かす商売をしちゃったり? 自分の濡れた体を一瞬で乾かして楽にしたり? とにかく、乾燥でなんか色々出来そうかも!
「とにかく、乾燥魔法の事は後でしっかりと考えるとして。今回の能力値をどう振り分けるか、だね」
確か、運が後少しで400に達するよね? じゃあ、とりあえず400にして、コメントが変わるか確かめないと。
「じゃあ、能力値の一部を運に振り分けてっと」
【体力】64(年齢並み)
【魔力】25(才能なし)
【筋力】67(年齢並み)
【耐久】47(年齢並み)
【器用】64(年齢並み)
【敏捷】63(年齢並み)
【知力】489(賢明)
【運】400(良運)9上昇
「あー、ダメか。コメントが変わらなかった。じゃあ、500で変わる可能性があるってことだよね?」
やっぱり、変わったばっかりだから、すぐには変わらないってことか。このまま運に振り分けるべきか、それとも、新しく覚えた魔法のために使うか……。
「よし! 残りは魔力に振り分ける!」
【体力】64(年齢並み)
【魔力】76(才能なし)51上昇
【筋力】67(年齢並み)
【耐久】47(年齢並み)
【器用】64(年齢並み)
【敏捷】63(年齢並み)
【知力】489(賢明)
【運】400(良運)
「まだ、才能なしかー。100くらいにならないと、コメント変わらなさそうだな」
まぁ、今回はこれで仕方がない。乾燥魔法を使うのであれば、少しでも魔力があった方がいい。
とりあえず、魔力100を目指しつつ、運を500まで上げていこう。でも、今回ガチャがないんだよなー。ということは、十日間みっちり日常クエストをこなさないといけない。
次のガチャまでは時間がかかるね。うぅ、ガチャが出来ないと思うと、急にやる気が……。
「いかん、元気がなくなっている。違うことを考えなきゃ。えーっと、ポイントは+700か。ふふふっ、かなりのポイントが集まったね」
現在のポイントは4655。それにポイントを加算すれば、5355。鉛筆と消しゴムに使っちゃったけど、イベントポイントで沢山貯まったんだよね。イベントポイント、凄く美味しい。
冒険者になったことだし、このポイントで能力を買うって事も出来る。そういえば、武器や防具もポイントで交換出来るよね?
ポイントで買うべきか、それともリアルマネーで買うべきか。これはシグナさんと相談しつつ、決めていこう。経験者の言葉ほど頼りになるものはないからね。
「うん。ポイントの事を考えると、元気が出てきた。でも、今日は何と言っても、乾燥魔法だよね」
とうとう、私も魔法持ちに! 乾燥魔法って日常に使えるものだから、色々と活躍しそうだ。
「でも、どうせなら、乾燥魔法でお金を稼ぎたいよね。どんなお金の稼ぎ方があるんだろうか?」
腕組しながら考える。濡れた物を乾かすのにお金を貰うとか? いっそ、乾燥屋でも始めちゃう? でも、それだと拘束時間が長くて大変じゃない?
前世で乾燥して良かったものとかなかったかな。うーん、乾燥、乾燥……あっ!
「乾物があるじゃない!」
乾燥果物に乾燥野菜。乾物の利便性を一つ一つ考えていくうちに、ふと気づいた。
「……そもそも、誰が一番これを欲しがるんだろう?」
少し考えて、すぐに答えが浮かぶ。
「家にいない人たち、だよね」
たとえば、ダンジョンに潜る冒険者。それから、街から街へと移動する商人や行商人。護衛の仕事で長距離を歩く人たちも、きっと同じだ。
「そういう人たちって、食事が一番の悩みなんだよね」
生鮮食品は日持ちしない。重いし、傷みやすいし、管理も大変。その点、乾物なら――。
「軽い。嵩張らない。腐らない」
干し肉や乾燥野菜なら、鞄の隅に入れておける。何日も、何週間も持ち歩ける。
「しかも、すぐ食べられる」
水があれば戻せるし、そのまま齧ってもいい。ダンジョンの中で、手早く栄養を取れるのは大きな利点だ。
「調理の手間も、最低限でいい」
疲れている時ほど、火を起こして料理するのは面倒だ。乾物なら、鍋に放り込むだけで一食になる。
「……これは、冒険者向けとして完璧じゃない?」
さらに、長距離移動をする人たちにとっては――
「補給の心配が減る」
次の街まで何日かかっても、食糧が腐る心配がない。荷物が軽ければ、その分だけ商品や装備を持てる。
「安全性も高いよね」
生肉や生野菜みたいに、傷んでお腹を壊す危険も少ない。品質が安定しているのは、旅人にとって何よりありがたい。
「……うん、これは売れる!」
しかも、乾燥魔法で作った乾物なら、仕上がりが一定。天候にも左右されない。
「冒険者ギルドに置いてもらうのもアリだし。長距離キャラバンと契約するのもいいかも」
考えれば考えるほど、売り先が自然に浮かんでくる。
「よし。まずは冒険者向け乾物、だね」
私は、少しだけ拳を握りしめた。乾燥魔法は使い方次第で人の役に立つし、お金にもなる。
「商品を開発しよう!」
私は早速机に向かった。




