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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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49.ルメルの困り事(2)

「お父さんにね、素材によって塩を変えて作るといいって教えてもらったの。どんな素材に、どんな塩が合うのか知りたくて」


 なるほど。料理の悩みだったのか。それで塩なんだね。


「今度のお弁当に鶏肉を使おうと思っててさ。せっかくなら、塩のこともちゃんと考えて作りたいなって」

「だから塩なんだ。確かに、塩って一口に言っても、種類は色々あるもんね」

「うん。全部同じだと思ってたから、違うって言われてすごく衝撃だったよ。それで、素材に合う塩を探してみたくなって」


 将来、家を継ぎたいと思っているルメルらしい悩みだ。まだ見習いと呼ばれる年齢でもないのに、もう先のことを考えている。


 ……健気だなぁ。


 私なんて、興味を持ったことに次々と手を出して、少しふらふらしているというのに。ルメルはちゃんと一つの夢に向かって、少しずつでも歩いている。


 偉いなぁ。そうやって真剣に頑張っている姿を見ると、自然と応援したくなってしまう。


 うん。ちょうどクエストも発生したことだし。ここは全力で、ルメルの力になるとしよう!


「だったら、学校終わりに市場に行かない?」

「えっ?」

「市場の人にどんな塩があるか聞いてみようよ」

「い、市場の人に? それは迷惑がかかるんじゃ……」


 きっと、市場の人なら鶏肉に合う塩を教えてくれるはず。そうなれば、きっとルメルの力になれるはずだ。


 だけど、ルメルは遠慮がちだ。仕事の邪魔になることを危惧しているようだ。真面目なルメルらしい返答だけど、真面目だけではこの世は渡っていけない。


「迷惑にならないから大丈夫! 市場の人って優しい人が多いから、なんでも教えてくれるよ」

「そ、そうなのかな……」

「ルメルは市場に行ったことがない?」

「……うん。まだ、行かせてもらえてないんだよね」

「だったら、いい機会だよ。遊びがてらに行ってみようよ」

「あ、遊びがてら? 迷惑にならないかな……」

「大丈夫だって!」


 ルメルは不安そうにしているが、私が食い下がる。強い口調で説得をすると、ルメルは戸惑いがちに頷いた。


「だったら、行ってみようかな……」

「そうこなくっちゃ! ルメルとお出かけ、楽しみだなぁ!」

「ふふっ、私も楽しみになってきちゃった」


 よし、これでルメルと市場に散策だ! そういえば、学校外で二人で活動するのって、帰り道以外じゃ初めてじゃない?


 ◇


「ルメル、行こう!」

「うん!」


 学校が終わるや否や、私たちは連れ立って校門を飛び出した。いつも通学に使っている道を外れ、今日は少し遠回りの通りを歩いて市場を目指す。


「市場かぁ……どんなところなんだろう?」

「ルメル、買い出しとかには行かないの?」

「うち、料理店でしょ? だから仕入れは、ずっと信頼してるお店に任せてるんだよね。自分で市場に行くことって、あんまりなくて」

「なるほど。それなら、市場に着いたら人の多さにびっくりするかもね」

「そ、そんなに?」


 実家が料理店と聞いて、てっきり日常的に買い出しへ行っているものだと思っていたけれど、どうやら違うらしい。


 ということは今日が、ルメルにとって初めての市場体験だ。


 少し歩くと、前方からざわざわとした音が聞こえてきた。人の話し声、笑い声、そして何かを売り買いする活気のある声。


「あ……」


 通りを抜けた先に、視界が一気に開ける。そこには、色とりどりの屋台が立ち並び、人々が行き交う光景が広がっていた。


「わぁ……!」


 思わず、二人同時に声を上げる。


 野菜を山のように積んだ露店。肉や干物を吊るした店先から漂ってくる香ばしい匂い。籠いっぱいの果物を並べて、威勢よく呼び込みをする商人たち。


「新鮮な鳥肉だよ! 今朝さばいたばかりだ!」

「採れたて新鮮な野菜だよ! 今日買わなかったら損だよ!」

「隣国から輸入した香辛料だよ! ここにしかないよー!」


 あちこちから飛び交う声に、耳が追いつかない。人と人がすれ違い、笑い、立ち止まり、また流れていく。


「す、すごい……」

「でしょ? これが市場だよ」


 ルメルはきょろきょろと周囲を見回し、目を輝かせている。料理人の家に生まれた子だからこそ、素材が並ぶこの場所は、きっと特別に映るはずだ。


「ちょっと、店を見て歩こうか」

「うん!」


 こんなに沢山の商品が並んでいると、つい見ていきたくなる。私の提案にルメルは元気よく答えた。


 人の流れに身を任せながら、私たちは並んで市場を歩く。肩がぶつかりそうなほど近い距離なのに、不思議と嫌じゃない。こんなに至近距離で歩くのって普通はないから、テンション上がる!


「……ねえ」

「なに?」

「市場って、こんなに楽しい場所なんだね」


 ルメルはそう言って、私の方をちらりと見る。その表情はとても明るくて、どこか浮き立っているようだった。


「でしょ? 連れてきて正解だった」

「うん……ありがとう」


 小さな声で言われたその一言が、胸の奥にすっと染み込む。ルメルがそう思っているだけで、来てよかったなって思えてしまうのが不思議だ。


 次の露店では、山積みになった野菜が並んでいた。ルメルは一つ一つを大切そうに眺め、時々身を乗り出す。


「この葉物、瑞々しいね!」

「へぇ、分かるんだ!」

「うん! お店で見ているから」

「流石ルメル! 将来は立派な料理人を約束されたようなもの!」

「もう、褒めても何も出ないよぉ……」


 私が全力で褒めると、ルメルは恥ずかしそうに目を伏せた。市場に来ただけで、楽しそうなルメルを見たり、恥ずかしそうなルメルを見たり、とても役得な場面が沢山ある。


 まだ、クエストはクリアしなくてもいいかな? そう思うくらいに、今は楽しい時間だ。

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― 新着の感想 ―
○貴族「やはり可愛い少女が焼いていた方が売上上がるんだよな」 男爵「だからやめいw」 ゴリ「この白い加圧シャツを使えば……」 男爵「ソイツはインナーだ!アウターじゃねぇ!」
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