32.システム(2)
「ん? 私の顔に何かついている?」
いやいやいや! 母さんの顔には何もついていないけれど、後ろに余計なものを背負っているんだよ!
なんなん!? なんで、木が生い茂るの!? なんで、動物が咆哮を上げているの!? 虹とキラキラが派手過ぎて、目が痛い!
もう! 神様はなんでこんな効果にしちゃったわけ!? 私が望んでいるのはこういう効果じゃないのに!
消えろ、消えろ! そんな効果はいらん!
すると、母さんの背にあったものが「失礼しました……」と言わんばかりにしぼんで消えていった。
「ふぅ……大変だった」
「えっ? 朝食の支度、大変だった?」
「いや、こっちの話」
「そう? じゃあ、ちょっとお父さんとレオンを起こしてくるわね」
「うん」
母さんが台所から出ていき、私は自分の席に座った。そして、すぐにウィンドウのシステム欄を開く。
「ちょっと、ちょっと、神様~。今の効果はマジでありえないって! もっと、普通の効果でいいんだって!」
素早く要望を書き込むと、送信した。これで、次には変わっていると思いたい。いや、変わってくれないと困る。すんごく、困る。
すぐに対応してくれたから、今回もすぐに対応してくれるだろう。しかし、どんな考えであの効果にしたのか、意味が分からん。
とにかく、次はちゃんとした効果になっていてねー!
◇
「ごちそうさまでした!」
「はい、おそまつさまでした」
朝食を食べ終わり、食器を片づけた。日常クエストを消化するのもいいけれど、それよりももっと気になることがある。
効果の要望が通ったか確認することだ。そのためには誰かの好感度を上げなければならない。さっきは母さんを上げたから、今度は父さんの好感度を上げよう。
父さんの好感度はカンストしているけれど、何かあった時は上昇コメントが出てくる。もしかして、限界値である100の数値を越えているのかもしれない。確認するすべはないけれど、上がるのは悪いことがないから気にしていない。
「父さん。今日、少しだけ仕事を手伝うよ」
「本当か? 助かるよ」
「何をすればいい?」
「店頭の商品の個数を調べてほしいな」
「分かった。早速、やってくるよ」
よし、これで仕事が終われば、父さんの好感度も上がるだろう。ちゃっちゃと終わらせて、どんな感じになるか確認しよう。
◇
「ふむふむ……。よし、これで完了!」
店頭に並べている商品の在庫を紙に書き終えた。ふー、一仕事は達成感があるな。
紙を持って、父さんがいる倉庫に向かう。倉庫では父さんが在庫チェックをしていた。
「父さん、終わったよー!」
「おっ、ありがとう。どれ、確認するかな」
声をかけて、紙を渡す。父さんは紙をチェックすると、満足そうに頷いた。
「うん、ちゃんと書いているみたいだな。仕事を手伝ってくれてありがとな、リオ」
そういって笑うと、私の頭を撫でてくれる。その時、ピロンという通知音と共にウィンドウが開く。『ハルト・グランデ 好感度1アップ』と。
そして、父さんの背後でキラキラとした光がはじけ、小さな花が舞った。おっ、これは想像以上に良い効果がついた!
そうそう、こういうの! こういうのが欲しかった! ウィンドウだけじゃ物足りなかったから、こういう画面外のアクションが欲しかったんだよねー!
うん、神様やるじゃん。やればできるじゃん。
「ん? なんだか、嬉しそうだな」
「まぁね。嬉しいことがあったから」
「そうか? だったら、もっと頭を撫でるか?」
「それはいい! じゃあ!」
「そ、そうか……」
父さんは肩を落として固まり、私はというと――。うん、完全にご機嫌モードでその場をスキップする勢いで離れた。この気持ち、ちゃんと神様に報告しなきゃ!
ウィンドウのシステム欄を開いて、要望フォームの下にある要望へぽちぽちと入力。今回の良かった点をつらつらと書いて、送信ボタンを押す。
「よしっ! これで気持ちは伝わったはず!」
そう満足してウィンドウを閉じた、その瞬間だった。
パァンッ!!!
目の前に、勝手にウィンドウが弾けるように展開された。
『神様の好感度3アップ。神様の愛情度1アップ』
「……………………え?」
一瞬思考が止まった。
「いやいやいやいや!! お前も上がるんかーーーい!!」
全身の力が抜けて、魂がひっくり返るほど衝撃を受けた。何そのシステム!? 誰がいつその設定をした!? ていうか、好感度とか上がるタイプの神様なの!?!?
予想外すぎて、思考が追いつかなかった。




