25.冒険者の職業体験(1)
職業体験二日目。教室に入り、自分の席に座っているとルメルがやってきた。
「リオ、おはよう」
「ルメル、おはよう」
「この間の職業体験どうだった?」
「凄く楽しかったよ。騎士もいいなって思った。ルメルは?」
「私も楽しかった。薬の調合って料理に似ていて、わくわくしたよ」
どうやら、ルメルも職業体験を楽しめたようだ。行ってみないと分からないってこういう事なんだね。
「今日はお互いに本命の職業体験だね。凄く楽しみじゃない?」
「うん、とっても楽しみ! って言っても、私は家のお店で調理風景見ているから、目新しい事はなさそうだなぁ。リオは見たことのない場所に行くから、楽しそうだね」
「うん! 冒険者ギルドって行ったことがないから、すっごく楽しみ!」
この世界の冒険者ギルドというのはどうなっているんだろうか? 汚い感じだと嫌だから、綺麗な場所が良いんだけど……。
そんな感じで二人で話していると、先生が教室に入ってきた。
「はい、みなさんおはようございます。今日は職業体験の二日目です。しっかり、体験してくるのよ。じゃあ、職業体験ごとに別れましょう」
先生の合図で私達は動き出した。隣の教室の同学年の人達も動き出して、あらかじめ決まっていた場所へと移動をする。
私は隣の教室に移動をすると、予定していた場所に行く。すると、そこにはすでに二人の同級生がいた。
「よっ、リオ!」
「やっぱり、リオが来たか」
「あんたたちもね」
二人の少年と合流した。そう、冒険者志望はこれだけしかいない。……いくら何でも少なすぎるだろ! 冒険者にはもっと夢も希望もあるだろう! それなのに、それなのに!
「なぜ……冒険者が少ない!」
「仕方ないだろう? 王都には魅力的な職業がいっぱいあるんだから。無理に危険を冒す必要もないんだし」
「そうそう。王都にいるんだから、壁の外に出る必要なんてないんだから」
「なんであんたたちはそうやって呑気にしていられる!? もっと、布教活動をするべきだよ! 冒険者は崇高な職業だって!」
「その気持ちは分かるけれどなー。みんなとの温度差があるから」
「その温度差をなんとかするんだよ!」
「ここにも温度差があるな」
二人がもっと情熱的だったら、もっと同行者は増えていたはずなのに! どうしてこうなった!
「まぁまぁ、いいじゃん俺たちだけで。競争相手は少ない方がいい」
「ってか、どうせ将来のパーティーメンバーだから、仲良くしていこうぜ」
「だったら、今から私がビシバシ鍛えてやる。覚悟しておけ」
「「こわっ!」」
そんな生温い覚悟で冒険者が勤まるとでも思っているのか! パーティーメンバーだというのなら、徹底的に……そう! 徹底的に鍛えてやる!
「そんなこというリオは体を鍛えているのか?」
「もちろん。最近、毎日筋トレやってるよ」
「マジかよ……。リオ、今から本気過ぎ。そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
「どうやら、貴様たちの心も鍛えないといけないようだな」
「「いや、怖いって!」」
こんなナヨナヨした気持ちで冒険者が勤まるとでも思っているのか! どうして、こうも気持ちに差が出てしまうのか理解しがたい。冒険者はもっと情熱をもってやらなければいけない。
「君たちが冒険者志望の子たち?」
そこに、初めて聞く声がかかった。振り向いて見ると、そこには群青色の制服を纏ったお姉さんが立っていた。
「はい、冒険者志望です!」
「そーでーす」
「ですです」
「そうなの……。話には聞いていたけれど、数が少ないのね」
そのお姉さんは寂しそうな顔をして俯いた。もしかして、このお姉さん……冒険者ギルドの職員? フォォッ! 生の冒険者ギルドの職員、見るの初めて!
ここは元気づけるために、何か気の利いた一言を!
「凄くやる気に満ち溢れた冒険者志望の三人です! そりゃあ、もう! 死ぬ気で!」
「「勝手に殺すな!」」
「そんな気合でどうするー! もっと、やる気を見せんか!」
「ぐえっ、くっ、苦しいっ!」
「やっぱり、リオとはパーティを組まないぞ!」
やる気のない少年を締め上げる。それを他の少年が邪魔をするから、一気に騒がしくなった。どうだ! 私たちのやる気が伝わった事だろう!
「お、落ち着いて! やる気があったのは分かったから!」
「なら、いいです」
「ゲホッ、ゴホッ! ……リオ、馬鹿力」
「リオ、恐ろしい子」
どうやら、気持ちが伝わったみたいだ。よしよし、これは第一印象は良い感じだろう。そう思っていると、ピロンと通知音が鳴った。でも、今は確認している暇はない。
「数が少ないのは残念だけど、やる気がある子たちばかりで嬉しいわ。じゃあ、職業体験を始めて行きましょうか。まずは、冒険者ギルドから案内するわ」
「「「やったぁ!」」」
念願の冒険者ギルドに入れる! 私達は嬉しさのあまりハイタッチをした。
お姉さんが歩き出すと、私達はその後をついていく。わくわくとした気持ちが溢れてきて、楽しそうに会話をしながら冒険者ギルドへと向かった。




