20.騎士団へ職業体験(1)
「ガチャ神、頼む、頼みます!」
ウィンドウに向けて手を叩いて拝むと、画面をタップする。すると、青い水晶が輝きだし、光が飛び出てきた。それが、カードになって前に出てくる。
【N】【R】【HN】【N】【N】【HN】【N】【N】【N】【HR】
「うっわーーーっ! しょぼいー!」
二回目の十連ガチャ、これは渋すぎでしょ!
ショックを受けていると、画面上のカードがひっくり返り、報酬が表示される。
【N(能力値+5)】【R(ポイント+300)】【HN(能力値+10)】【N(能力値+5)】【N(ポイント+50)】【HN(ポイント+100)】【N(ガチャ+3)】【N(能力値+5)】【N(ポイント+50)】【HR(能力値+50)】
「うわー! ほとんど、能力値とポイントだー!」
くぅー! 初めての十連は何か補正が掛かっていたのか!? そう思うくらいにはこの結果はしょぼすぎる!
まぁ、確定のHRのお陰で残念な気持ちは薄れているけれど、それでも残念過ぎる。運……運が足りない!
「ここは、能力値を全部運に振る!」
ウィンドウを操作して、私は運に全部能力値を割り振った。
【体力】48(年齢並み)
【魔力】15(才能なし)
【筋力】48(年齢並み)
【耐久】40(年齢並み)
【器用】50(年齢並み)
【敏捷】51(年齢並み)
【知力】480(賢明)
【運】237(普通)75上昇
「うーん、コメントが変わらない。まだ運の恩恵は受けられないってことか……」
一体、どれだけ上げれば恩恵が受けられるのか。この部分は説明がないから、手探りで上げていくしかない。
「えーっと、ポイントは500ポイント貰ったから、今のポイントは1195。おっ、千ポイント越えた! これで少しはゆとりが出来るんじゃないかな!」
ポイントはあればあるだけ幸せだ。だけど、使ったらすぐになくなるから、慎重に使い道を考えなくてはいけない。
今はえんぴつと消しゴムにポイントを使っている。今後、大量に注文が入るかもしれないから、その時のためにポイントは取っておいた方が良いだろう。
今日のガチャは良くなかったけど、順調にポイントが貯まっているし、能力値も上がっている。いやー、可能性が広がるねぇ。
このまま増やしていくと、どんな風に生活が変わっていくのか楽しみだ。生活と言えば、明日はとうとう職業体験の日。
確か、始めの日は騎士団にお邪魔するんだったよね。騎士団は王城近くに騎士たちが集まる特区があり、そこにお邪魔することになっている。
そこで騎士団の事を聞き、将来の選択肢にする。まぁ、私は騎士よりも冒険者の方が興味あるんだけど、どれか二つ選ばないといけないから、そのせいで騎士団を選んだからなー。
あんまり期待してないけど、行くのであればちゃんと面白い所なのかみないとね。一体、どんなところか、今から楽しみだ。
◇
翌日、学校に行くと、すぐに職業体験ごとに別れた。騎士団に行く集団の中に入ると、見事なくらいに他は全員男子だった。
「わぉ、女子は私しかいない!」
「は? リオは女子か?」
「そんな可愛らしい性別じゃないだろ」
「女子っていうかリオっていう性別なのかと」
驚いて声を上げると、近くにいた男子たちが鼻で笑いながら貶してきた。それを聞いた私は笑顔を作り――。
「もう、男子ったら~……ぶっ殺す」
「「「やっべっ!」」」
本気で叩きに行った。逃げ出す男子たちだったけど、意外に私の足が速くて、すぐに捕まえられた。そして、全力で叩きのめした。ふぅ……悪は滅びた。
「こら、リオ! 遊んでないで、ちゃんと並んで!」
「だって、男子が~」
先生に注意されて、不貞腐れるように抗議した。それを聞いた先生はため息を吐いて、軽く男子たちを注意する。それじゃ、あまりにもいじめられた私が可哀想というものですよ!
もっと、頭ごなしに叱ってもらわないと、私の女子としての矜持がですねー。
そんな事を考えていると――。
「おぉ、すげぇ!」
「来た、来た!」
「うわー、カッコいいなぁ!」
同じ列に並んでいた男子たちが歓声を上げた。何かと思い視線を向けてみると、そこには銀色の鎧を纏った騎士が歩いてきていた。
「本物だ!」
「やっぱり、いいなー」
「騎士、カッコいい!」
男子たちは目を輝かせて騎士に見惚れていた。ふむ、確かにこうして近くで見るとカッコいいな。でも、騎士になると鎧を纏わないといけないから、それが大変だ。
落ち着いた様子で眺めていると、騎士と先生が軽く言葉を交わして、私達に向き直る。
「では、皆さん。これから案内を務めさせてもらう、王都騎士団・第二部隊所属のグレイ・ハーランドだ」
銀の鎧の男――グレイさんは、胸に手を当て、礼儀正しく頭を下げた。近くで見ると、鎧の表面には傷がいくつも刻まれており、実戦の場をくぐり抜けてきたのが分かる。髪は短く刈り込まれ、目つきは鋭いけれど、どこか穏やかさもあった。
「今日一日は、皆に騎士の仕事というものを体験してもらう。訓練や巡回だけが仕事ではない。町の安全を守るための交渉や、記録の作成、住民の相談対応も立派な任務だ」
「え、記録とかもやるんだ?」
「紙仕事とかあるの?」
「魔物と戦うだけじゃない?」
ざわざわと声が上がる。男子たちは「もっと剣を振るう訓練がしたい」とでも言いたげだ。
グレイさんは苦笑を浮かべて、軽く肩をすくめた。
「剣を振るのも大事だが、知識と誠実さがなければ、民はついてこない。それを今日は、覚えていってくれ」
その言葉に、私は少しだけ背筋を伸ばした。なんというか、見た目のゴツさに似合わず、まっとうな考えの人だ。
「それじゃ、出発しよう。王都騎士団の訓練場までは少し歩く。道中、質問があれば遠慮なく聞くといい」
グレイさんが歩き出し、私たちは列を作ってついていく。
男子たちは「剣はどんなの使ってるんですか!?」とか「魔物と戦ったことありますか!?」とか、早速テンション高めで質問を連発していた。
グレイさんはその質問に一つ一つ丁寧に答えていく。その口調には押しつけがましさがなく、子どもたちの興味を上手く拾いながら説明していた。
そんな賑やかな中、私達は訓練場まで歩いて行った。




