17.お店での取り扱い
「えへへ。私のカードだぁ……」
通りを歩きながら、出来立ての銀行カードを眺めた。銀色で出来ていて、そこには自分の名前が書いてある。
そして、少し魔力を通せば、取引や口座残高が表示される。異世界ならではの銀行カードはとても便利な仕様になっていた。
「ふっふっふっ、いきなり小金持ちになった」
その口座残高を見て見ると「60万デル」の文字が書かれてある。えんぴつと消しゴムそれぞれ300個売ったお金だ。たったそれだけでこんなにお金が手にはいるなんて驚きだ。
「初めての取引、おめでとう。緊張したか?」
「緊張なんてしてないよ。とにかく、テンションアゲアゲだった!」
「そうか。それならいい。リオの初取引の場面を見れて、父さんは嬉しい」
そう言って、私の頭を撫でてくれた。そうやって褒められると、照れてしまうじゃないか。
「そのお金は何に使うんだ? お菓子でも買うのか?」
「いや、これは貯める」
「リオが……貯金をっ!?」
私の言葉に父さんは驚いた様子だった。
「まだ自分の将来は決まっていないけど、その道を広げるためにもお金はあったほうがいいと思う。だから、将来のために貯金する」
まぁ、実は……それは建前で。本当はただ貯金をするのが好きなだけだ。
社畜時代の心の支えが貯金だったから、増えていくお金を見ると凄く安心するし、達成感がある。この独特な快感は貯金でしか味わえない。
そりゃあ、将来のために貯金をするっていうのも嘘じゃないけれど、お金はなんぼあってもいい。貯金は心のゆとりそのものだ。
お金……お金がいっぱい、幸せ、幸せになる。ふっふっふっ、今後どんな金策をしていこうかな。凄く楽しみ。
「うぅ……あのリオが将来の事を考えているなんて。リオ、凄いぞ! 偉い!」
「わっ! いちいち、感激して抱きしめないでよ!」
全く、この父さんはこの調子なんだから。子離れして欲しいくらいだよ。
そんな事を話していると、自宅兼お店に辿り着いた。
「ただいまー!」
お店の玄関から入ると、カウンターの所に母さんと兄さんがいた。
「おかえりなさい、どうだった?」
「えへへ、ちゃんと売れて、取引出来たよ」
「おっ、凄いじゃないか!」
「ほっ、良かった……」
ピースをしてアピールすると、兄さんは褒めてくれて、母さんは一安心といった様子で胸を撫でおろした。
「見て見て。私の口座残高!」
「どれどれ……。なっ、こんなに売れたのか!?」
「えへへ、そうなんだー。しかも、これからも定期的に売れる予定」
「そんなに大金持って大丈夫かしら? 無駄使いとかしない? いきなり高級品な物を買わない?」
驚く兄さんを他所に、母さんは不安そうな顔をしている。まぁ、その気持ちは分からんでもない。
「大丈夫! 無駄使いはしないし、お金は貯金する!」
「本当に出来るのかー? 途中で魔が差すんじゃないか?」
「そのカード、母さんの方で管理しようか?」
「それは嫌! ちゃんと自分で管理する!」
母さんにカードを渡したら最後、大人になるまで自由に出来なさそうだ。
「そんなことよりも、今回の取引を帳簿に書こうよ」
「あっ、そうだな。忘れない内に書かないと。えーっと……これだな」
すると、父さんが帳簿を出してきてくれた。帳簿をカウンターに広げると、ペンとインクを用意する。
「私が書く!」
「リオが書くのか? お前に出来るかー? ちゃんと、文字とか書けるか?」
「失礼な! ちゃんと、書けるよ! 父さん、どこに書いたらいいか教えて!」
「いいぞ。まずはこの項目に……」
兄さんがニヤニヤしながらからかってくるけれど、気にしない。父さんの教えに従って、帳簿に今回の取引を記入する。
「よし、出来た! これで大丈夫?」
「あぁ、良く出来たな。偉いぞ」
これで帳簿の書き方は分かった。今度から取引があったら、自分でちゃんと記入しよう。
「あっ、それでこの売上金の事なんだけど、一部は税金、一部はお店の利益にして欲しいの」
「えっ。そんな事を考えていたのか?」
「リオがお店の事を考えてくれるなんて……!」
「そんなの当たり前だよ! 私だってこのお店が繁盛すればいいって思っているから」
私が売ったんだから、税金はちゃんと支払うべきだし、お店の名前を借りているから利益も分配しないといけない。
「はー……。リオもお店の事を考えるようになったのか。あのお前がなぁ……」
「リオがそういうのなら、そうしてくれると助かるわ。色々考えてくれてありがとね」
ピロンと通知音がした。ウィンドウを確認すると、兄さんと母さんの好感度が一つ上がっていた。父さんが上がらなかったのは、好感度がMAXになっていたから、上がる余地がなかったみたい。
ふむふむ、普通にしても好感度が上がるのはいいよね。こうやって好感度を上げていくと、私の意見が通りやすくなるからガンガン上げていきたい。
「それでね。商業ギルドでえんぴつと消しゴムが使われるようになると、商人の間に話が広がると思うんだよね。そしたら、きっとこのお店にえんぴつと消しゴムを求めに来ると思うの」
「おっ! だったら、このお店でも売るのか?」
「うん! そうしてくれると嬉しい!」
「商業ギルドで使われているんだったら、その内商人がここにきそうだね。だったら、店頭に置いてみるよ。それと、お客さんにもそれとなく勧めてみるわ」
「ありがとう!」
店頭に置いていけば、えんぴつと消しゴムの良さを知ってくれた人が買いに来てくれる。そうしたら、お店にお金が入って来る。
ふふふ、完璧だ。これでお店も繁盛! 私の貯金が増える! がはは、勝ったな!




