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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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14.異世界で売り込む商品

 ポイント交換で手に入れる品物はもう決めてある。その画面を開き、早速品物をタップする。すると、目の前に現れた。


 それは――。


「えんぴつと消しゴム。これが、初めての商売の品物だ」


 4ポイントを消費して呼び出したのは、一ダースに纏められたえんぴつと消しゴムだ。


 この世界の筆記用具はそんなに発達していない。筆記用具と言えば万年筆タイプ。ペン先でインクを吸い上げて書くというスタイルだ。


 確かに見た目は格好いいし、貴族や学者が使うには申し分ない。けれどあれは、失敗が許されない道具でもある。


 インクが垂れれば紙が台無し。書き間違えたら、もう一度最初から書き直すしかない。書類の修正は面倒くさく、いつも苦労していると聞いた。


「だから、えんぴつと消しゴムがあれば、すっごく便利になるはずなんだ」


 私はそう呟いて、箱からえんぴつを取り出してじっと見つめた。


 芯を削ればすぐに使える。インクもいらないし、ペン先が割れる心配もない。なにより、書き間違えても簡単に消せる。


 消しゴム。この世界の人たちは、たぶん「文字を消す」という発想自体を知らない。だからこそ、これを初めて見た人の反応が楽しみでもある。


「子どもたちが文字を練習するときとか、商人が帳簿をつけるときとか。きっと役立つよね」


 そう、これこそが失敗してもやり直せる道具だ。きっと、筆記用具の革命が起こると思う。


「さて、それを売り込む先だけど……」


 私は顎に指を当てて考え込んだ。


 自分のお店で売るのも悪くない。けど、うちみたいな小さな店に来るお客さんは限られている。


 常連は冒険者や周辺に住んでいる住民が多いけど、筆記用具なんて買う人は少ないだろう。日用品やアイテムならともかく、「えんぴつと消しゴム」なんて見たこともない物を買ってくれるとは思えない。


「……やっぱり、最初は他の場所に持っていくべきだよね」


 そう呟くと、頭の中にある一つの施設が思い浮かんだ。


「商業ギルド!」


 そこは町でもっとも多くの商人が出入りする場所。帳簿を扱う職員や書類仕事に追われる人たちが山ほどいる。つまり、書くことが仕事みたいな人の集まりだ。


 もし、あの人たちがえんぴつと消しゴムを使えば、その便利さはすぐに分かるはず。


 書き間違えたときにいちいち紙を取り替える手間が省ける。計算の下書きにも最適だし、練習用にもなる。――完璧だ。


「うん、まずは商業ギルドに試してもらおう」


 ギルドの職員が日常的に使えば、多くの商人がそれを目にする。便利な新しい筆記用具として噂が広まれば、あとは自然と需要が生まれていく。


 やがて貴族や学者の間にも広がって……それから、我が道具屋が繁盛する。


 想像しただけで、胸が高鳴った。自分が生み出したわけじゃないけど、この世界に「えんぴつ文化」を広めるのは、なんだか夢がある。


「よし、商業ギルドに行ってみよう。きっと、興味を持ってくれる人がいるはず!」


 私はえんぴつの箱を抱え、胸を張って立ち上がった。まずは父さんからの説得からだ。

 

 ◇


「父さん、来てくれてありがとう!」

「リオたっての願いだったからな。気にするな」


 父さんの説得が成功し、二人で商業ギルドに向かっていた。


 特技の愛嬌の効果なのか、いつもよりも各段にお願い事が通りやすくなっている。それにお願いするだけで、好感度が上がってしまった。いや、愛嬌の効果強すぎないか?


 この調子だったら、商業ギルドでの説得も上手くいきそう。ルンルン気分で通りを歩いていくと、商業ギルドが見えてきた。とても大きな建物で、人がひっきりなしに出入りしている。


 私達は入口から中に入り、辺りを見渡す。


「えーっと、商品の相談窓口は……あっちか」


 父さんが相談窓口を見つけてくれた。そこに近づくと、職員と人と目が合った。


「商品の相談ですか?」

「はい。見て貰いたいものがあるのですが……」

「どうぞ、お座りください」


 ぶっきらぼうな様子の職員が席に誘導してくれた。私達は言われた通りに席に座る。


「どのような相談ですか?」

「実は娘なんですが……」

「……娘さん?」

「はい! 私から提案する商品です! ぜひ、お話を聞いてください!」


 鋭い目が私を見る。私は出来るだけにこやかに言うが、職員の顔はピクリともしない。どうやら、対応する職員は難敵のようだ。これはプレゼンは厳しいか?


 そう思っていると、ピロンと通知音が鳴った。選択肢のウィンドウが開いた様子はない。何だろうと思ってウィンドウを開くと、知らない名前の人の好感度が凄く上がっている表示が出てきた。


 この人、誰だろう? ……もしかして、目の前の職員?


 そう思って職員の胸元を見て見ると、同じ名前が書かれた名札をぶら下げていた。えっ、こ、こんなにぶっきらぼうなのに、めちゃくちゃ好感度が上がっているのは何故!?


 も、もしかして私がタイプだったのか? いや、それなら愛情度が上がっているはず。じゃあ、純粋に私を一目で見て、好感持てたってこと?


 どうして、そんな……あっ! 愛嬌! 特技に愛嬌があったんだ! あれって、確か初対面に効果があるって書いてあった!


 と言う事は、こんなぶっきらぼうな人でも好感度が爆上がりするくらいには愛嬌は効果的って事? ……いや、愛嬌凄くね?


 こんなに無表情で人を寄せ付けない顔をしているのに、私に好感を持っているって事だよね? 普通に話をするだけで、こんなに好感を持ってくれるなんて凄すぎる!


 ……くっくっくっ。だったら、この好感度を利用して、商品を認めさせる!


「子供でも容赦はしません。では、商品を見せてください」


 厳しい口調で言ってくるが、内面を知ってしまっているから怖い事はない。あとは、私が上手にプレゼンをするだけだ!

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― 新着の感想 ―
あざと可愛く、軽い失敗を混じえて好感度稼ぎをするか、真面目にプレゼンして知的可愛いで好感度稼ぎをするか……… ティンタクル「しれっと戻るな!それ、『愛嬌』じゃなくて『たらし』じゃないのか?」 まぁ良い…
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