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元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~  作者: 鳥助


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11.昼食

 ガラン、ガランと鐘の音が鳴った。


「もう鐘の音? というわけで、今日の授業は終わりです」

「やったー、昼だー!」

「疲れたー、お腹すいたー」

「一緒に水を汲みに行こう?」


 先生が声を上げると、生徒たちは待ちに待ったと言わんばかりに声を上げて立ち上がった。


 異世界の学校は午前で授業が終わる。普通に考えればそのまま家に帰って昼食となるけれど、ここでは昼食をみんなで食べる習慣がついている。


 まぁ、学校に来て、勉強だけをして帰るっていうのが勿体ないのだろう。折角、こんなに子供が集まっていることだし、交流の機会を設けるために昼食の時間を作ったのだ。


 みんな、この時間が好き。途端に元気になって、昼食の準備をする。昼食の準備といっても、家から持ち寄った食事を出して、外にある井戸から水を汲みに行くだけなのだけど。


 私も鞄の中からサンドイッチを机に用意し、コップを手に持った。みんなで騒がしく教室を出て井戸まで行くと、順番に桶を上げていく。地味に汲む動作が人気で争奪戦になる。


 まぁ、そんな面倒なことは好きじゃないし、私は誰かが汲んだ水をおこぼれで貰うだけなんだけどね。へへっ、今日も代わりの労働ありがとうございます。


 そうして、コップに水を入れると、ぞろぞろとまた皆で教室に戻って来る。そうすると、楽しい昼食の時間だ。教室のあちこちで挨拶をする声が聞こえて、私も同じように挨拶をする。


 ふと、隣を見て見ると、可愛らしい箱を開けるルメルの姿があった。


「あっ、ルメルはお弁当なんだ」

「うん。ほら、ウチって料理店でしょ? 作るついでに詰めてもらっているの」

「へー、そうなんだ。いいね……って、凄い豪華だよ!?」

「そうなんだよね……。いつも詰めすぎっていうくらいに詰めてくるんだよね」


 開けた箱の中は色とりどりなおかずが並んでいて、どれも凄く美味しそうだった。流石は料理店の娘だ、これは羨ましい。


 その時、目の前にウィンドウが開いた。こんなところで選択肢? 疑問に思いながらも、表示された文章を読んでみる。


 「美味しそうだねって褒める」と「自分で作らないの?」の選択肢が現れた。ほう、これは面白そうな選択肢だ。


 普通なら褒めるだけで終わるけれど、自分で作らないのって聞くのは何かある。だって、わざわざそんな事聞かないじゃん。だって、子供だよ? 子供が自分のお弁当を作るっていう考えにはならない。


 この選択肢は話題を発展させようとして出てきたものだ。だから、選ぶのは褒めるじゃなくて――。


「ルメルは自分で作らないの?」


 この選択肢をすれば、きっと何かが起こる。そう、思った。


 すると、ルメルは目をパチクリして驚いた顔をした。初めて言われたような態度だ。だけど、驚いたのは一瞬で、すぐに笑顔になってくれる。


「そういう手もあるね!」

「でしょ? ルメルは自分のお店を継ぎたいって思っているんでしょ? だったら、少しずつ調理をしてもいいんじゃない?」

「うん。まだ、十二歳の見習いになっていないから、調理とかはさせてもらえないんだ。それは仕方がないなーって思っていたんだけど、別に今から調理をしたって問題ないよね」


 私達が働き出すのは十二歳になってから。それを目安にして、大人たちは十二歳じゃない私達を自由にさせてくれている。


 それはありがたい話だけど、目標がある子にとってはもどかしい期間だろう。だって、すぐに始めたいのに、手を付けられないのだから。


「自分のお弁当を作りたいって言ったら、きっと許してくれるよ。だって、食べるのは自分自身なんだから」

「そうだよね、失敗しても食べるのは自分なんだから、他に迷惑が掛からないよね。そっか、その手があったかー」

「完璧超人のルメルなら、初めてのお弁当作りも完璧に作れるんじゃない?」

「もう、私をなんだと思っているのよ。そんなに完璧じゃないわよ」

「いや、絶対に完璧に仕上げてくるって。ちゃんと、調理現場を見ていることだし、やる気だってあるんだから。絶対に上手くいく」

「そ、そうかな?」


 王都一の天使にやって出来ないことはない。そう強く伝えると、ルメルは恥ずかしそうに照れた。そして、少し考えるように俯く。一体何を考えているんだろう、と疑問に思っていると、ルメルがこちらを強い眼差しで見てきた。


「私、作るよ!」

「おっ、その意気!」

「そ、それでね……リオにお願いがあるんだけど」


 少しもじもじして言いづらそうにしていた。事前にそんな事言われちゃったら、なんでもお願いを聞きたくなっちゃうなー、ぐへへ。


「何でも言って!」

「あのね……私が作ったお弁当、食べてくれる? 他人にも美味しいか評価してもらいたくて」

「私でいいの?」

「だって、リオって正直になんでも言ってくれるでしょ? その方が、私も上達するかなって思って」


 まぁ、確かに。嘘をつく時もあるけれど、大抵は正直に言っているからな。ルメルは良く私の事を知っている。流石、王都一の天使は人をちゃんと見ている。


「私に任せて! ちゃんと、正直に伝えてあげる!」

「本当!? 断られたらどうしようかと思っちゃった」

「王都一の天使のお願いを断るなんて滅相もない!」

「ふふっ、だったらなんでもお願いしちゃおうかな?」

「やっぱり、ほどほどでお願いします」


 なんだかこのやり取り、学園恋愛シュミレーション的な展開になってきた。全く、懐かしい気分にさせてくれる。お陰でテンションが上がりっぱなしだ。


 すると、通知音がピロンと鳴った。ウィンドウを確認してみると「ルメル・エリアミル 好感度1アップ」と表示されてある。


 この表示、堪らない! 人と話すのがもっと楽しくなるし、やる気が漲る。もっともっと、色んな人に話をして数値を上げて行こう!

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