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第一章 悪役令嬢の目覚め
目が覚めたとき、私は白い天蓋付きのベッドの上で、自分の記憶が二つあることに気づいた。
一つは、現代日本で平凡に生きていた記憶。
もう一つは、『恋する乙女と王太子の誓い』という乙女ゲームに登場する、悪役令嬢──ミランダ・エリゼ・ブラックモワのそれ。
ミランダは、主人公である平民出身のヒロイン、ルイゼット・ドゥボアを妬み、王太子フェルディナント・アルフレッドを奪おうと策略を巡らすが、最終的に貴族社会から追放され、孤独な末路を辿る。
そして、その運命を背負ったのが、今、この体の主──私だった。
「……まさか、まさかよ。まさか本当に、悪役令嬢に転生するなんて!」
鏡に映る私は、整いすぎていて冷たい印象の美貌。
まさに“嫌われる美貌”とでも言うべき容姿だった。
「でも、私は追放されない。孤独にもならない。絶対に、この運命を変えてみせる……!」
そう誓ったその日から、私は“善人ミランダ”を演じ始めた。