エンディング
今なら、相談してきた大和の気持ちがよくわかる。
この先どう進めたらいいのかわからない、あの時大和はそう言って悩んでいたが、まさに今同じ心境だった。
文化祭で両思いだったことがわかった俺たちだけど、だからといって何かが大きく変わったわけではなかった。文化祭から1ヶ月たった今も、キスしたのもあの時の1回きり。
まあ、いいか。
「深智、クリスマスどうするの?」
「クリスマス?」
昼休み、なぜかうちのクラスで弁当を食べている芳賀は、俺の前の席でサンドイッチを頬張りながら聞いてきた。
「暎一とどこか行くの?」
「まだ考えてない。っていうか、まだ1ヶ月以上先じゃん」
「1ヶ月なんてすぐだよ? プレゼント用意したりするなら、そろそろ考えないと」
そうか。全然考えてなかった。
芳賀は、やっぱり暎一の態度を見て気付いていたらしい。暎一は俺にだけ過保護で、距離が近かったと言われた。なんか恥ずかしいんだけど。
放課後、暎一と2人で帰りながら、クリスマスの予定を聞いた。
「クリスマス、空いてる?」
「空いてる。空いてないわけないだろ」
「いや、わかんないじゃん。冬休みだし。家族と予定あったりとか」
「深智が最優先だ」
「⋯。どっか行く?」
恥ずかしげもなく言われた言葉に、赤くなった頰を誤魔化すように視線を逸らして訊くと、暎一は真剣に悩み始めた。
「遊園地とかは? 寒いか?」
「あったかくしてけば大丈夫じゃん?」
「大和たちはどうするんだろうな」
「芳賀はまだ決めてないみたいなこと言ってたけど、なんで?」
また4人で出かけたいという意味だろうかと思ったけど、今回は違った。
「鉢合わせしないようにしないとと思って」
「あれ、いつもと逆じゃん」
「クリスマスは、深智と2人で過ごしたい」
「!」
さっきっからもう!
いちいちぶっ込んでくる暎一を軽く睨む。
「わかった。じゃあ遊園地な! 決まり! この話は終わり」
「なんだ、もう終わりか? 残念」
「全然残念じゃないし」
暎一は、ぷっと小さく吹き出して笑っている。大きく変わったことはないと思っていたけれど、2人きりの時のこういう空気は結構変わったことに気が付いた。まだ全然慣れないけど、そのうち慣れる時が来るんだろうか。
「楽しみだな、クリスマス」
「――うん」
スッと手を差し出す暎一。俺は口元に笑みを浮かべると、そっとその手を握った。
END.