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戦国新選組 最狂×最狂 ー土方歳三が織田信長に逆行転生した混ぜたら危険な世界線ー  作者: 五平


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第8話 断罪、二つの顔

清洲城は、冷たい朝の空気で満ちていた。武具蔵前の広場には、昨日と同じように兵たちが集まっている。だが、その雰囲気は昨日とは全く違っていた。米と小石を選り分ける堀田の姿はない。代わりに、広場の中心には、簡素な台が置かれ、その前には犬千代が、無表情で立っている。


「若殿、御用と伺い、参りました」


犬千代は、信長の姿を見つけると、深々と頭を下げた。彼の声は、張り詰めた空気を切り裂く。信長は、その声に静かに頷いた。


(今日の空気は、斬首刑を待つ者たちのそれだ)


信長の脳裏には、壬生で見た、処刑場を待つ男たちの顔が蘇る。彼らは皆、恐怖に震えていた。だが、この清洲の兵たちは違う。彼らの目には、恐怖だけではなく、信長がどのような裁きを下すのか、という好奇心と、かすかな期待が入り混じっていた。


「岩田か」


信長が静かに問うと、犬千代は無言で頷いた。その背後から、二人の兵に両腕を固く掴まれた岩田が引きずられてくる。岩田は、怯えと絶望に顔を歪ませ、信長に向かって叫んだ。


「若殿! どうか、お慈悲を! 私は、勝家様の家臣にございます!」


岩田は、勝家の名を叫んだ。それは、彼にとって最後の切り札だった。


だが、信長は何も言わなかった。ただ、岩田の顔をじっと見つめる。


(この男は、己の罪を悔いることすらできぬ。主君の名を叫んで、命が救われると思うか)


信長の脳裏に、壬生で見た、隊規を破った者たちの顔が走馬灯のように駆け巡った。彼らは皆、己の命を惜しんだ。その姿は、岩田と寸分違わぬものだった。


「犬千代」


信長が静かに呼ぶと、犬千代は無言で信長の前に進み出た。


「この男の罪を、皆に告げよ」


犬千代の声が、広場に響き渡る。


「岩田、若殿の軍律を乱し、兵たちの不満を煽るため、堀田殿に金子を渡したる。その罪、軍律に照らし、許されぬ」


犬千代の言葉に、兵たちはざわめき始めた。


(堀田殿の他にも、裏切り者が…)


誰もが、そう思った。信長は、岩田に背を向けた。


「岩田、貴様の命は、この軍律に捧げられる。貴様は、その身で、この軍律を完成させるのだ」


信長の静かな声が、岩田の耳に届く。その言葉は、まるで氷のように冷たかった。


岩田は、信長の言葉にただ震えることしかできなかった。彼の命は、すでに終わっていた。


信長は、無言で犬千代に頷いた。犬千代は、懐から小刀を取り出す。その刃が、朝の光を鈍く反射した。


「若殿!」


勝家の声が、広場に響き渡った。


「お待ちください! 岩田は、私の家臣にございまする!」


勝家は、信長と犬千代の間に割って入ろうとした。だが、信長は、勝家を一瞥しただけで、その動きを止めた。


「勝家殿、貴殿は、現実を論じられる。だが、この場に、貴殿の正しさはない」


その言葉に、勝家は息を呑んだ。


信長は、静かに言った。


「犬千代、斬れ」


犬千代は、信長の言葉に無言で頷くと、小刀を振り下ろした。


スパッ、と乾いた音が響く。


岩田の首が、地面に転がる。彼の顔は、絶望と恐怖に歪んでいた。


信長は、岩田の首を拾い上げ、高々と掲げた。


「皆の者! この男の死は、貴様らの不満が、どこから来るのかを示している! 規律を乱す者は、誰であろうと、この軍律に裁かれる! それが、この軍の、そして俺の、魂だ!」


信長の声が、広場全体に響き渡った。


その声は、兵たちの間に、恐怖と、そして、絶対的な畏怖を植え付けた。


---


その日の午後、信長は清洲城の庭で、勝家と向き合っていた。


「若殿、なぜ…」


勝家の声は、震えていた。


「堀田は、生かした。岩田は、斬った。この差は、一体…」


勝家は、信長の顔を見つめる。信長は、静かに勝家の顔を見つめると、口を開いた。


「勝家殿、貴殿は、裁きには、二つの顔があることを、理解していない」


信長は、そう告げると、言葉を続けた。


「堀田の罪は、金子で兵たちの不満を煽り、規律を乱そうとしたことだ。その罪は、精神的なものだ。だから、精神的な苦痛を以て、裁いた」


信長の言葉に、勝家は静かに耳を傾けた。


「だが、岩田は違う。彼は、直接的な裏切り者だ。その罪は、この軍の規律を、根底から覆すものだ。だから、即座に、裁いた」


信長の言葉は、まるで氷のように冷たかった。


「勝家殿、貴殿の正しさは、この時代においては、揺るぎないものだ。だが、その正しさは、俺の道とは違う。いつか、貴殿の正しさは、俺の「理想」に呑み込まれるだろう」


信長は、静かに勝家に背を向けた。


夕暮れの空が、黒漆の鞘に、鈍色の光を映していた。風が、砂利の上を静かに通り過ぎる。


すべては、ここから始まるのだ。

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