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戦国新選組 最狂×最狂 ー土方歳三が織田信長に逆行転生した混ぜたら危険な世界線ー  作者: 五平


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第39話 天下布武の夜明け

稲葉山城の天守からは、美濃の地が一望できた。信長は、その最上階に一人立ち、城下から立ち上る煙を眺めていた。それは、戦火の煙ではなかった。家々から立ち上る、静かで、穏やかな生活の煙だった。煙は、それぞれの家からゆっくりと立ち上り、朝日に照らされ、ゆらゆらと、まるで生き物のように空へと昇っていく。


信長は、この稲葉山城を「岐阜」と改名することを決めた。彼は、この城が、天下統一の拠点となることを確信していた。


(この城こそが、俺の『理』を天下に示す場所……。そう、この「岐阜」という名は、まさに俺の目指すものの道標となる)


信長は、そう心の中で呟くと、静かに天守を降りていった。


---


城の広間は、静寂に包まれていた。家臣たちは、信長の帰りを、息をひそめて待っていた。彼らの顔には、稲葉山城を無血で陥落させた驚きと、信長の底知れぬ「理」に対する畏怖が入り混じっていた。


「信長様……!」


勝家は、信長の姿を見ると、静かに頭を下げた。彼の心臓は、重く、鈍い音を立てていた。


(信長様は、戦もせず、美濃を手にされた…。この恐ろしき「理」は、いったいどこまで続くというのだ…)


信長の非情な策を目の当たりにし、その恐ろしさを改めて実感していた。


「勝家殿、この城を、岐阜と改名する。今後は、ここが、天下布武の拠点となる」


信長の言葉に、家臣たちは、息をのんだ。彼らは、信長が、天下統一という壮大な目標を、本気で目指していることを知った。


信長は、懐から一つの朱印を取り出した。それは、信長が、天下布武の理想を天下に示すために、作らせたものだった。


「これこそが、俺の『理』だ」


信長は、朱印を高く掲げ、家臣たちに見せた。朱印からは、新しい墨の匂いがかすかに漂ってくる。朱の鮮烈な赤が、広間の燭光に反射し、まるで血のように妖しく輝いていた。


「天下布武」


その四文字が、家臣たちの目に、焼き付いた。


家臣たちは、その朱印を前に、恐怖と、そして、新たな時代の始まりを予感していた。彼らは、信長という、常人ならざる存在の、巨大な理想に、ただただ圧倒されていた。


森可成は、その朱印を見て、静かに拳を握りしめた。


(信長様は、この国を変えようとしている…! この恐ろしき「理」についていかねば、儂は…!)


林通具は、信長の冷徹なまなざしから逃れるように、そっと冷や汗を拭った。


(尾張の城を、岐阜…だと…? いったいどこまで…)


「天下布武……この理想を成すには、尾張はただの一点に過ぎぬ。されど、この一点を疎かにすれば、全てが崩れ去る」


信長は、静かに、しかし確固たる意志を宿して、呟いた。その言葉は、まるで雷鳴のように、家臣たちの心に響き渡る。


「誉れでは、国は治まらぬ。戦では、国は豊かにならぬ」


信長は、そう言い放つと、静かに、しかし確固たる意志を宿して、呟いた。


「犬千代、藤吉郎、兵たちを整えよ」


信長の言葉に、犬千代と藤吉郎は、無言で頷いた。


(俺は…信長様の手足。言われるままに動く、ただの犬だ…)


犬千代の心臓は、トク、トク、と不吉な音を立てる。だが、その音は、信長が目指す「天下布武」という、冷徹な「理」への共感と、彼にしか見出せない「未来」への期待が、彼自身の内部で葛藤している証拠だった。


(若殿の理は、恐ろしい。だが、それが正しいと、俺が証明せねば…)


藤吉郎もまた、信長の言葉に、心の奥底で震えていた。信長の非情な裁きを目の当たりにし、次は自分が裁かれるかもしれないという恐怖と、それでも「若殿の理」が正しいと証明したいという、成り上がり者としての自負が、彼の心臓を激しく揺さぶっていた。


その鼓動は、犬千代も、藤吉郎も、信長も、そして広間の全ての者たちも、同じように感じている、不吉な、しかし確固たる決意の音だった。


夕暮れの空が、黒漆の鞘に、鈍色の光を映していた。風が、砂利をさらい、まるで戦場を先に掃除しているかのようだった。鴉の群れが、不吉な鳴き声を上げながら、古き武士の「誉れ」を食い散らかすように飛び去る。夕陽が赤々と雲を染め、それが桶狭間の血の残照に見えた。


その遠くから、太鼓の音が、ドォン、ドォン、と響いてくる。城下町の寺の鐘が、ゴォン、と重い音を立てる。そして、遠い空から、雷が、ゴロゴロと鳴り響く。すべての音が重なり合い、まるで美濃の地に住む全ての者の心臓が、一斉に高鳴っているかのようだった。


信長の横顔に、夕陽の鈍色の光が反射し、まるで鬼火のように揺らめいていた。彼は、人なのか、鬼なのか、それとも、ただただ、新しい世界を創造する「理」の化身なのか。誰も、その答えを知らなかった。


その頃、城下の通りには、商人が集まっていた。


「聞いたか? あの城、今日から『岐阜』だってよ」

「へぇ、また変わった名をつけたもんだ。天下布武の拠点になるんだとか…」

「天下布武…? よく分からんが、また戦が始まるんかねぇ…」


彼らの声は、恐怖と、そして、かすかな期待が入り混じっていた。

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