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戦国新選組 最狂×最狂 ー土方歳三が織田信長に逆行転生した混ぜたら危険な世界線ー  作者: 五平


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第26話 修羅の決着

末森城と清洲城の間に広がる、名もなき平野。夜が明けきらぬ薄闇の中、二つの軍勢が静かに、しかし確固たる殺気を放って対峙していた。東の空がわずかに白み始め、地面を這う霧が、兵たちの足元を白くぼんやりと覆う。草葉についた夜露が、松明の炎を反射して淡く光り、馬の吐息が白い煙となって空に溶けていった。


信行の軍勢は、旗印こそ織田の紋だが、その隊列はどこか乱れており、兵士たちの顔には怒りと恐怖が入り混じった焦燥の色が浮かんでいた。農村から連れてこられたばかりの足軽が、慣れない槍の柄を震える手で握りしめている。「なぁ、本当にやるのかよ…腹減った…」と、誰かが小さな声で漏らした。「俺は家に帰って、また畑を耕したい…」別の声が続く。


「…信行様こそ、尾張の正義だ!」


「兄貴のせいで、俺たちはこんな目に…」


ある若侍は、隣の足軽と小声で囁き合っていた。彼らは、信長の非情なやり方に反発し、自分たちこそが正しいと信じていた。その一方で、信長の軍勢は、静寂に満ち、一糸乱れぬ隊列を保っていた。夜風に揺れる旗だけが、カサカサと不吉な音を立てている。


信行は、馬上で刀の柄を強く握りしめていた。彼の心臓は、激しく鼓動し、その鼓動が、恐怖と、勝利への高揚感の狭間で揺れ動く。


(違う…俺は正しい。これは、兄上を討ち、尾張の秩序を取り戻すための戦だ。父上や母上が、俺に託した『武士の誉れ』を守るための…)


幼い頃、兄と三人で食卓を囲んだ記憶が蘇る。あの頃の兄は、ただの「うつけ者」だった。だが、その「うつけ」が、今、彼の前に冷たい目で立ちはだかっている。


信長は、本陣で静かに馬に跨っていた。彼の瞳は、氷のように冷たく、そこに映るのは、信行の軍勢ではなく、ただの「障害物」だった。


(愚か者めが…)


信長の脳裏には、信行の幼い頃の顔が蘇る。的当てで信行に大敗し、父から「信長には才がある。お前は、この家を支える『武士の誉れ』を守りなさい」と諭された日。信行は、信長の「うつけ」ぶりを、常に心の支えにしていた。だが、その「うつけ」は、遥か彼方の理想を、ただの一つの点として見据えている。


「犬千代、藤吉郎、兵たちを整えろ」


信長が静かに命じると、犬千代は冷徹な眼差しで、兵たちに細かく指示を飛ばし始めた。主君のあまりの冷徹さに、一瞬たじろぐが、それが天下布武を成す者の必然性であると理解し、忠義を再確認する。その一方で、藤吉郎は興奮した面持ちで頷きながら、心の中で固く拳を握りしめた。


(今度こそ、若殿に認められる功を立ててみせる!この一戦、天下統一の始まりじゃ!)


信長の軍勢は、静かに、しかし確固たる殺気を放って、信行の軍勢へと迫っていく。その異様な威圧感に、信行の軍勢は徐々にその隊列を乱し始めていた。


「皆の者!怯むな!若殿は、ただのうつけ者だ! 我らが信じる武士の道こそが、正しいのだ!我らの戦は、祖先への誓い、そして尾張の未来を救うための戦だ!」


信行の声が、震えながらも、夜空に響き渡った。


その声が、信長の心に突き刺さる。


(愚かな…武士の道など、腹は膨れぬ。裁きだけが魂を縛るのだ)


信長は、信行をただ冷たい目で見つめていた。彼の表情に、一切の感情はなかった。


「信行よ…何をしに来た」


信長の声は、夜風に乗り、信行の心に突き刺さった。


「兄上…!あなたは、尾張の、そしてこの国の秩序を乱している!この信行が、あなたを討ち取り、尾張に平和をもたらす!」


信行の声が、震えながらも、夜空に響き渡った。


信長は、静かに、しかし確固たる意志を宿して、呟いた。


「愚か者めが…」


信長は、静かに、しかし確固たる意志を宿して、呟いた。


「天下布武…俺の『理』は、貴様の『誉れ』を、遥かに凌駕する」


その言葉が、信行の心臓を鷲掴みにした。信長の冷たい瞳に映るは、もはや弟ではなく、ただの「障害物」だった。


信長は、静かに、しかし確固たる意志を宿して、呟いた。


「俺は…俺の理想を貫くためならば、たとえ血を流すことも厭わぬ。それが…この国の、新たな夜明けを創るための、必然性なのだ」


カラスが、不吉な鳴き声を上げて、一斉に飛び立つ。遠くで、小さく遠雷が鳴り、戦の火蓋が切って落とされた。両軍がにらみ合い、数瞬だけ鳥の羽音さえ聞こえるような静けさが訪れる。だが、その静寂は、次の瞬間、太鼓のドンドンという響きと、槍がガチャリとぶつかり合う音に破られた。信行の軍の兵が、手が震えて槍を落とし、隣の者に「しっかり持て!」と叱責される。


清洲城に残された女房や母たちが、遠くの空に広がる不穏な気配に、ただ手を合わせ、「無事で帰ってきて」と祈る。その祈りは、戦場の轟音にかき消され、虚しく夜空に吸い込まれていった。

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